ヴァラーハ・ガーヤトリー・マントラ


・ॐ धनुर्धराय विद्महे वक्रदंष्ट्राय धीमहि ।
तन्नो वराह प्रचोदयात्‌ ॥
・om dhanurdharāya vidmahe vakradaṃṣṭrāya dhīmahi |
tanno viṣṇuḥ pracodayāt ||

・オーム ダヌルダラーヤ ヴィッドゥマヘー ヴァクラダンシュトラーヤ ディーマヒ
タンノー ヴァラーハ プラチョーダヤートゥ
・意味:我らが弓の使い手である方を知り、曲がった牙を持つ方を瞑想できるように
ヴァラーハよ、我らを導き給え

ヴァラーハ神は、ヴィシュヌ神の10の化身の第3番目の化身である猪の頭を持つ神格です。
ヴィシュヌ神は、悪魔によって沈められた大地を救うために、猪となって大地を持ちあげたと伝えられます。
真理を追究する者は、凄まじい勢いで真っ直ぐに突き進む猪のように、あらゆる犠牲を恐れることなく進むべきであることを象徴しているといわれます。

マツシャ・ガーヤトリー・マントラ


・ॐ तत्पुरुषाय विद्महे महामीनाय धीमहि ।
तन्नो विष्णुः प्रचोदयात्‌ ॥
・om tatpuruṣāya vidmahe mahāmīnāya dhīmahi |
tanno viṣṇuḥ pracodayāt ||

・オーム タットプルシャーヤ ヴィッドゥマヘー マハーミーナーヤ ディーマヒ
タンノー ヴィシュヌフ プラチョーダヤートゥ
・意味:我らがそのプルシャ(個我)を知り、偉大な魚の神を瞑想できるように
ヴィシュヌよ、我らを導き給え

マツシャはヴィシュヌ神の1番目の化身として知られ、魚の姿をしています。
マツシャは、起ころうとしていた大洪水から世界を救ったと伝えられます。
魚が流れに反しながらも源流に向かって泳げるのは、流れに身を任せる術を知っているからであり、私たちが常に神々に身を任せながら、その源へ向かって歩み続けることを象徴しているともいわれます。
このマツシャへの礼拝により、魚が池をきれいにするように、さまざまな悪影響が浄化されると信じられています。
一説には、ヴァーストゥの引き起こす影響を浄化すると伝えられます。

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ヤマ・ガーヤトリー・マントラ


・ॐ सूर्यपुत्राय विद्महे महाकालाय धीमहि ।
तन्नो यमः प्रचोदयात्‌ ॥
・om sūryaputrāya vidmahe mahākālāya dhīmahi |
tanno yamaḥ pracodayāt ||

・オーム スーリヤプットラーヤ ヴィッドゥマヘー マハーカーラーヤ ディーマヒ
タンノー ヤマハ プラチョーダヤートゥ
・意味:我らが太陽の息子である方を知り、偉大な時の神を瞑想できるように
ヤマよ、我らを導き給え

死の神であるヤマ神(閻魔)を讃えるガーヤトリー・マントラです。
死の神として崇められるヤマ神は、太陽神であるスーリヤ神と妃のサンジュニャーとの間に生まれました。
土星の神であるシャニ神とは、兄弟にあたります。
シャニ神は、私たちの人生において多くの試練を与えながら、その歩みに指針を授ける神格です。
一方で、ヤマ神は、私たちの肉体の死後、その行為の善悪の記録から罪の判定を行う神格であり、重要な神格として崇められています。

ピトリ・ガーヤトリー・マントラ


・ॐ पितृगणाय विद्महे जगतधारिणे धीमहि ।
तन्नो पित्रो प्रचोदयात् ॥
・om pitṛgaṇāya vidmahe jagatadhāriṇe dhīmahi |
tanno pitro pracodayāt ||

・オーム ピトリガナーヤ ヴィッドゥマヘー ジャガタダーリネー ディーマヒ
タンノー ピトロー プラチョーダヤートゥ
・意味:我らがすべての先祖を知り、母なる大地を瞑想できるように
先人よ、我らを導き給え

先祖を讃えるガーヤトリー・マントラです。
インド古代のヴェーダ聖典では、すべての家庭において、彼らの先祖の影響は避けられないと述べています。
これらの聖典では、先祖は、私たちと血縁関係で結ばれているというだけでなく、今生そして前世で、私たちの幸福な生活に関わった教師、指導者、模範的な人、友人であると明かしています。
したがって、恩恵、英知、守護、愛で私たちの生活を見守る先駆者であった無数の魂を、私たちは感謝の念をもって認識しなければなりません。
ヒンドゥー教では、私たちの先祖を供養する方法を定めており、瞑想、マントラの詠唱、祈りのような霊的実践を捧げることによって、先祖の繁栄祈願と供養を行います。

ゴーパーラ・ガーヤトリー・マントラ


・ॐ गोपालाय विद्महे गोपीजनवल्लभाय धीमहि ।
तन्नो गोपालः प्रचोदयात्‌ ॥
・om gopālāya vidmahe gopījanavallabhāya dhīmahi |
tanno gopālaḥ pracodayāt ||

・オーム ゴーパーラーヤ ヴィッドゥマヘー ゴーピージャナヴァッラバーヤ ディーマヒ
タンノー ゴーパーラハ プラチョーダヤートゥ
・意味:我らがゴーパーラを知り、ゴーピー(牛飼い女)の愛し子を瞑想できるように
ゴーパーラよ、我らを導き給え

子宝祈願のために唱えらえるガーヤトリー・マントラです。
ゴーパーラは、牛飼い、王子、王などの意味があるクリシュナ神の別名になります。
インドでは子宝祈願のために、幼子としてのクリシュナ神への祈りが捧げられることが多くあります。
生まれてすぐに悪の手によって命を奪われそうになったクリシュナ神は、奇跡的に生き延び、その後もさまざまな悪を倒していきます。
それは、喜び、幸せ、創造、命の象徴でもあります。
ヴェーダ聖典によると、人生の基本的な目的には、子孫を残し、新しい命を与える喜びを経験することがあると言われます。
そのようにして、人類全体の永遠のダルマが滞りなく展開されることになると伝えられます。

ハヤグリーヴァ・ガーヤトリー・マントラ


・ॐ वागीश्वराय विद्महे हयग्रीवाय धीमहि ।
तन्नो हंसः प्रचोदयात्‌ ॥
・om vāgīśvarāya vidmahe hayagrīvāya dhīmahi |
tanno haṁsaḥ pracodayāt ||

・オーム ヴァーギーシュヴァラーヤ ヴィッドゥマヘー ハヤグリーヴァーヤ ディーマヒ
タンノー ハンサハ プラチョーダヤートゥ
・意味:我らが言語の神を知り、馬の首を持つ方を瞑想できるように
ハンサよ、我らを導き給え

ハヤグリーヴァ神は、ヴィシュヌ神の化身であり、馬の頭をした知能と知識の具現である神格です。
かつて、2人の悪魔マドゥとカイタバはブラフマーからヴェーダを盗みました。
ヴェーダがないために、全世界が闇に包まれ、ブラフマーは創造を続けることができません。
ブラフマーは、ヴィシュヌ神のもとへ駆けつけ、ヴェーダを取り戻すための助けを求めました。
ヴィシュヌ神は光沢のある白い馬の顔の馬頭観音となり、パーターラ(悪魔の棲む地界)へと行って悪魔を倒し、ブラフマーにヴェーダを取り戻させました。
そして、暗闇に飲み込まれていた世界が光に包まれたと伝えられます。
また、ハンサには馬という意味がある一方で、識別力の高さの象徴として崇められる白鳥の意味もあります。
ハヤグリーヴァ神への祈りや瞑想は、聡明な知識をもたらし、あらゆる分野で頭角を現すようになるという伝統的な信仰があります。

インドラ・ガーヤトリー・マントラ


・ॐ सहस्रनेत्राय विद्महे वज्रहस्ताय धीमहि ।
तन्नो इन्द्रः प्रचोदयात्‌ ॥
・om sahasranetrāya vidmahe vajrahastāya dhīmahi |
tanno indraḥ pracodayāt ||

・オーム サハスラネートラーヤ ヴィッドゥマヘー ヴァジュラハスターヤ ディーマヒ
タンノー インドラハ プラチョーダヤートゥ
・意味:我らが千の眼を持つ方を知り、雷を手にする方を瞑想できるように
インドラよ、我らを導き給え

雷雨の神として崇められるインドラ神は、後代ではその立場が下がるも、リグ・ヴェーダにおいては火の神であるアグニ神と同様に、数多くの賛歌が捧げられ、神々の王としても崇められる神格です。
特に、酷暑期からモンスーンへ移り変わる季節は、インドラ神と巨大な蛇であるヴリトラとの戦いにあらわされます。
地上から水を奪ったヴリトラは、大干ばつをもたらし、人々を苦しめていました。
これを見たインドラ神は雷によってヴリトラを倒し、地上に雨をもたらしたと伝えられます。
厳しい自然と共に生きるインドでは、自然のさまざまな動きに神々の表情を重ね、その偉大な力に、現代でも多くの人々が祈りを捧げ続けています。

グル・ガーヤトリー・マントラ


・ॐ गुरुदेवाय विद्महे परब्रह्मणे धीमहि ।
तन्नो गुरुः प्रचोदयात्‌ ॥
・om gurudevāya vidmahe parabrahmaṇe dhīmahi |
tanno guruḥ pracodayāt ||

・オーム グルデーヴァーヤ ヴィッドゥマヘー パラブラフマネー ディーマヒ
タンノー グルフ プラチョーダヤートゥ
・意味:我らがグルデーヴァを知り、至高の存在を瞑想できるように
グルよ、我らを導き給え

グル(導師)は、インドでは神と同じ存在として敬意が払われています。
「闇を取り除く者」を意味するグルは、精神性を育む道を歩む中で、大きな障壁となる「無知」という暗闇を取り払い、「知識」という光をもたらす存在です。
真っ暗な道を進む時、道を照らす灯りが必要であるように、グルはまさに、心に生じる疑いや迷いといった暗闇を追い払う、明るい光そのものです。
インドでは、現代でも多くの人々がグルに寄り添い、人生の探求を続けています。

アイヤッパ・ガーヤトリー・マントラ


・ॐ बोधनाथाय विद्महे भवपुत्राय धीमहि ।
तन्नो शास्त प्रचोदयात्‌ ॥
・om bodhanāthāya vidmahe bhavaputrāya dhīmahi |
tanno śāsta pracodayāt ||

・オーム ボーダナーターヤ ヴィッドゥマヘー バヴァプットラーヤ ディーマヒ
タンノー シャースタ プラチョーダヤートゥ
・意味:我らが覚醒の主を知り、シヴァ神の息子である方を瞑想できるように
シャースタよ、我らを導き給え

アイヤッパ神のガーヤトリー・マントラのひとつです。
アイヤッパ神は、ヨーガの補助具であるヨーガパッタを膝に巻いた姿で描かれ、南インドのケーララ州でとくに人気の高い神です。
シヴァ神とヴィシュヌ神の子孫であるダルマ・シャースタの化身と言い伝えられることから、シャースタとも呼ばれます。
アイヤッパ神は超人的、神的な知識と勇気を持ち合わせ、人々に恩恵を授け、病を治癒する神として古くから崇められています。

カーリー・ガーヤトリー・マントラ


・ॐ कालिकायै च विद्महे श्मशानवासिन्यै धीमहि ।
तन्नो अघोरा प्रचोदयात्‌ ॥
・om kālikāyai ca vidmahe śmaśānavāsinyai dhīmahi |
tanno aghorā pracodayāt ||

・オーム カーリカーヤイ チャ ヴィッドゥマヘー シュマシャーナヴァーシンニャイ ディーマヒ
タンノー アゴーラー プラチョーダヤートゥ
・意味:我らが暗黒の女神を知り、火葬場に住むお方を瞑想できるように
シヴァ神にとってかけがえのないお方よ、我らを導き給え

カーリー女神のガーヤトリー・マントラのひとつです。
カーリーは、「時間」や「黒色」を意味するカーラの女性形です。
物質である肉体を持って生じた私たちは、始まりがあり終わりがある時間の中で、常に不安と恐怖に苛まれています。
暗黒の女神と称されるように、カーリー女神が見せる姿はおぞましくも、その様相とは反対に、肉体の中でもがき苦しむ魂を解放する偉大な愛を秘めています。