ハヤグリーヴァ・ガーヤトリー・マントラ


・ॐ वागीश्वराय विद्महे हयग्रीवाय धीमहि ।
तन्नो हंसः प्रचोदयात्‌ ॥
・om vāgīśvarāya vidmahe hayagrīvāya dhīmahi |
tanno haṁsaḥ pracodayāt ||

・オーム ヴァーギーシュヴァラーヤ ヴィッドゥマヘー ハヤグリーヴァーヤ ディーマヒ
タンノー ハンサハ プラチョーダヤートゥ
・意味:我らが言語の神を知り、馬の首を持つ方を瞑想できるように
ハンサよ、我らを導き給え

ハヤグリーヴァ神は、ヴィシュヌ神の化身であり、馬の頭をした知能と知識の具現である神格です。
かつて、2人の悪魔マドゥとカイタバはブラフマーからヴェーダを盗みました。
ヴェーダがないために、全世界が闇に包まれ、ブラフマーは創造を続けることができません。
ブラフマーは、ヴィシュヌ神のもとへ駆けつけ、ヴェーダを取り戻すための助けを求めました。
ヴィシュヌ神は光沢のある白い馬の顔の馬頭観音となり、パーターラ(悪魔の棲む地界)へと行って悪魔を倒し、ブラフマーにヴェーダを取り戻させました。
そして、暗闇に飲み込まれていた世界が光に包まれたと伝えられます。
また、ハンサには馬という意味がある一方で、識別力の高さの象徴として崇められる白鳥の意味もあります。
ハヤグリーヴァ神への祈りや瞑想は、聡明な知識をもたらし、あらゆる分野で頭角を現すようになるという伝統的な信仰があります。

快眠を得るためのマントラ・サーダナ

ラーマーヤナに登場するクンバカルナを讃えるマントラを通じた、快眠を得るためのマントラ・サーダナをご紹介いたします。

なかなか寝つけなかったり、夜中に目が覚めてしまったりと、眠りに関するストレスは誰もが経験することです。
眠れない時は、「羊が一匹、羊が二匹・・・」と数える方法なども伝えられますが、インドにはあるマントラが伝わります。
それは、クンバカルナを讃えるマントラです。


ॐ कुम्भकर्णाय नमः
om kumbhakarṇaya namaḥ

オーム クンバカルナーヤ ナマハ

眠りにつくとき、身体をリラックスさせ、このマントラを唱えます。
眠りに落ちるまで、繰り返し唱えることで、快眠を得ることができると伝えられます。

クンバカルナは魔王のラーヴァナの弟にあたり、6ヶ月間も眠り続けると伝えられる存在です。
クンバカルナの身体は巨体で、生物を貪り尽くす食欲を持つも、性格は穏やかで知的であり、偉大な戦士とされていました。
その力を恐れたインドラ神に呪いをかけられ、一生の眠りを与えられるも、ラーヴァナがその緩和を求めます。
ラーマ神とラーヴァナとの間に生じた戦いおいては、無理矢理目覚めさせられ、大活躍をしました。
兄のラーヴァナにシーター女神を誘拐したことを謝るように頼むなど、高潔な面が伝えられます。

参照:Mantra for Insomnia

インドラ・ガーヤトリー・マントラ


・ॐ सहस्रनेत्राय विद्महे वज्रहस्ताय धीमहि ।
तन्नो इन्द्रः प्रचोदयात्‌ ॥
・om sahasranetrāya vidmahe vajrahastāya dhīmahi |
tanno indraḥ pracodayāt ||

・オーム サハスラネートラーヤ ヴィッドゥマヘー ヴァジュラハスターヤ ディーマヒ
タンノー インドラハ プラチョーダヤートゥ
・意味:我らが千の眼を持つ方を知り、雷を手にする方を瞑想できるように
インドラよ、我らを導き給え

雷雨の神として崇められるインドラ神は、後代ではその立場が下がるも、リグ・ヴェーダにおいては火の神であるアグニ神と同様に、数多くの賛歌が捧げられ、神々の王としても崇められる神格です。
特に、酷暑期からモンスーンへ移り変わる季節は、インドラ神と巨大な蛇であるヴリトラとの戦いにあらわされます。
地上から水を奪ったヴリトラは、大干ばつをもたらし、人々を苦しめていました。
これを見たインドラ神は雷によってヴリトラを倒し、地上に雨をもたらしたと伝えられます。
厳しい自然と共に生きるインドでは、自然のさまざまな動きに神々の表情を重ね、その偉大な力に、現代でも多くの人々が祈りを捧げ続けています。

グル・ガーヤトリー・マントラ


・ॐ गुरुदेवाय विद्महे परब्रह्मणे धीमहि ।
तन्नो गुरुः प्रचोदयात्‌ ॥
・om gurudevāya vidmahe parabrahmaṇe dhīmahi |
tanno guruḥ pracodayāt ||

・オーム グルデーヴァーヤ ヴィッドゥマヘー パラブラフマネー ディーマヒ
タンノー グルフ プラチョーダヤートゥ
・意味:我らがグルデーヴァを知り、至高の存在を瞑想できるように
グルよ、我らを導き給え

グル(導師)は、インドでは神と同じ存在として敬意が払われています。
「闇を取り除く者」を意味するグルは、精神性を育む道を歩む中で、大きな障壁となる「無知」という暗闇を取り払い、「知識」という光をもたらす存在です。
真っ暗な道を進む時、道を照らす灯りが必要であるように、グルはまさに、心に生じる疑いや迷いといった暗闇を追い払う、明るい光そのものです。
インドでは、現代でも多くの人々がグルに寄り添い、人生の探求を続けています。

アイヤッパ・ガーヤトリー・マントラ


・ॐ बोधनाथाय विद्महे भवपुत्राय धीमहि ।
तन्नो शास्त प्रचोदयात्‌ ॥
・om bodhanāthāya vidmahe bhavaputrāya dhīmahi |
tanno śāsta pracodayāt ||

・オーム ボーダナーターヤ ヴィッドゥマヘー バヴァプットラーヤ ディーマヒ
タンノー シャースタ プラチョーダヤートゥ
・意味:我らが覚醒の主を知り、シヴァ神の息子である方を瞑想できるように
シャースタよ、我らを導き給え

アイヤッパ神のガーヤトリー・マントラのひとつです。
アイヤッパ神は、ヨーガの補助具であるヨーガパッタを膝に巻いた姿で描かれ、南インドのケーララ州でとくに人気の高い神です。
シヴァ神とヴィシュヌ神の子孫であるダルマ・シャースタの化身と言い伝えられることから、シャースタとも呼ばれます。
アイヤッパ神は超人的、神的な知識と勇気を持ち合わせ、人々に恩恵を授け、病を治癒する神として古くから崇められています。

無敵の守りをもたらすプラティヤンギラー女神の千の御名

神の言語であるサンスクリット語による祈りは、精神的・肉体的な問題を癒すヒーリング・サウンドとして作用し、人々の願望や、魂の欲求を満たすことができると信じられています。その一つに、プラティヤンギラー女神を讃える千の御名があります。

プラティヤンギラー女神は、シヴァ神の第3の目から生じた女神です。女性の人間の身体に、雄のライオンの顔を持ちます。それは、シヴァとシャクティの結合した破壊力の象徴として崇められます。また、人間とライオンの結合は、善と悪の均衡を象徴します。そこにはある言い伝えがあります。

悪魔ヒラニヤカシプを倒したヴィシュヌ神の化身であるナラシンハ(人獅子)は、怒りのあまり非常に獰猛で、どんな神も彼を止めることは不可能でした。するとシヴァ神は、そんなナラシンハを鎮めようと、ライオンと鳥の2つの姿を持つシャラベーシュワラというもっとも強力な姿であらわれます。この二人の戦いは世界を恐怖に陥れました。この二人の戦いを鎮めたのが、プラティヤンギラー女神であると伝えられます。

それ故、プラティヤンギラー女神はヴィシュヌ神とシヴァ神の力を合わせ持ち、何よりも強力であると信じられます。また、プラティヤンギラー女神は、シャクティ・セーナーと呼ばれるラリター・トリプラ・スンダリー女神の軍隊の戦士の一人であり、無敵の守りをもたらすと伝えられます。

プラティヤンギラー女神は、強力で凶暴ながら、聖なる母として奥深い側面を持っています。強い保護をもたらすため、さまざまな病や苦しみ、黒魔術といったネガティブな影響を防ぐとして広く礼拝されています。真摯に心を込めてプラティヤンギラー女神への祈りに耳を傾けることで、強い保護と繁栄が授けられることでしょう。

カーリー・ガーヤトリー・マントラ


・ॐ कालिकायै च विद्महे श्मशानवासिन्यै धीमहि ।
तन्नो अघोरा प्रचोदयात्‌ ॥
・om kālikāyai ca vidmahe śmaśānavāsinyai dhīmahi |
tanno aghorā pracodayāt ||

・オーム カーリカーヤイ チャ ヴィッドゥマヘー シュマシャーナヴァーシンニャイ ディーマヒ
タンノー アゴーラー プラチョーダヤートゥ
・意味:我らが暗黒の女神を知り、火葬場に住むお方を瞑想できるように
シヴァ神にとってかけがえのないお方よ、我らを導き給え

カーリー女神のガーヤトリー・マントラのひとつです。
カーリーは、「時間」や「黒色」を意味するカーラの女性形です。
物質である肉体を持って生じた私たちは、始まりがあり終わりがある時間の中で、常に不安と恐怖に苛まれています。
暗黒の女神と称されるように、カーリー女神が見せる姿はおぞましくも、その様相とは反対に、肉体の中でもがき苦しむ魂を解放する偉大な愛を秘めています。

ダクシナームールティ・ガーヤトリー・マントラ


・ॐ दक्षिणामूर्तये विद्महे ध्यानस्थाय धीमहि ।
तन्नो धीशः प्रचोदयात्‌ ॥
・om dakṣiṇāmūrtaye vidmahe dhyānasthāya dhīmahi |
tanno dhīśaḥ pracodayāt ||

・オーム ダクシナームールタイェー ヴィッドゥマヘー ディヤーナスターヤ ディーマヒ
タンノー ディーシャハ プラチョーダヤートゥ
・意味:我らがダクシナームールティを知り、瞑想に耽るお方を瞑想できるように
知性の主よ、我らを導き給え

ダクシナームールティは、シヴァ神の師としての姿であり、知識や悟りの化身として崇められる存在です。
容易く見つかる存在ではないグルを求める中で、ダクシナームールティは誰もがグルとして崇められる偉大な存在です。
ダクシナームールティは、サンスクリット語で「南面を向く者」の意味があります。
一説にシヴァ神は、ヒマラヤの地で弟子に教えを説いた時、南を向いて座っていたといわれます。
このシヴァ神のダクシーナムールティとしての姿を崇める者は、死から不死へと導かれると信じられています。
インドにおいて、南は死を意味する方角のため、ダクシナームールティは死すなわち変化をもたらす神といわれます。

マンガル・ドーシャ解消のためのマントラ


ॐ क्रां क्रीं क्रौं सः भौमाय नमः
om krāṁ krīṁ krauṁ saḥ bhaumāya namaḥ

オーム・クラーン・クリーン・クラウン・サハ・バウマーヤ・ナマハ

男女の出会いにおいて、大きな問題となる原因としてマンガル・ドーシャがよく知られています。
結婚生活における問題や、その他吉兆なイベントや仕事の障壁となる原因は、マンガル・ドーシャによるものと考えられています。
特に、結婚に関する問題は、このドーシャが非常に大きな影響を与えるといわれます。

火星(マンガル)は行動を象徴する惑星であり、ホロスコープで重要な役割を持ちますが、火星のエネルギーが正しいバランスで保たれている人々は、非常に少ないといわれています。
火星の良い面では、活力、意志、自信、モチベーションなどの特性が挙げられますが、逆にこれらは、対立、競争、支配などに繋がる可能性があります。
火星が特に「クジャ・ドーシャ」の影響を受ける時は、早すぎる死、パートナーの死などの象徴となることがあります。

チャート上で火星が傷ついているホロスコープは、マンガリック・ホロスコープとして知られています。
これは、火星がナタル・チャート(出生時の天宮図)において、1, 4, 7, 8, 12室のいずれかに配置される場合に当たります。
特に、結婚において良くない影響を与える配置として知られ、不快、苦痛、緊張関係、別居、離婚の原因と考えられています。
ただし、マンガリック・ホロスコープを持つ2人が結婚した場合は、これらの影響はキャンセルされるといわれています。

このマンガル・ドーシャ解消のためのマントラは、これらのマンガル・ドーシャを解消するためのビージャ・マントラからなる祈りです。
毎週火曜日に、レッドコーラルの数珠を用いて、このマントラを少なくとも108回唱えることが勧められます。
また、ハヌマーン神の礼拝を行うこともマンガル・ドーシャ解消のために役立つとされています。

失くしたものを取り戻すためのマントラ

日々の生活においては、物を落としたり忘れたりして、紛失することが少なくありません。大切なものであれば、どうにか取り戻したいと強く思うことも多くあります。インドには、そんな失くしたものを取り戻すためのマントラが伝わります。


・कार्तवीर्यार्जुनो नाम राजा बाहुसहस्रवान् ।
तस्य स्मरणमात्रेण गतं नष्टं च लभ्यते ॥ १॥
・kārtavīryārjuno nāma rājā bāhusahasravān ।
tasya smaraṇamātreṇa gataṁ naṣṭaṁ ca labhyate ॥ 1॥

・オーム カールタヴィールヤールジュノー ナーマ ラージャー バーフサハスラヴァーヌ
タスヤ スマラナマートレーナ ガタン ナシュタン チャ ラビャテー
・意味:千の腕を持つ王であるカールタヴィールヤ・アルジュナのその御名を想うことで、失くしたしたものを手にする。

このマントラは、カールタヴィールヤ・アルジュナを讃える讃歌、カールタヴィールヤ・ドヴァーダシャナーマストートラム(कार्तवीर्य द्वादशनामस्तोत्रम् )の最初の節にあたります。カールタヴィールヤ・アルジュナは、ナルマダー川のほとりにあるマーヒシュマティーに都を持つ、古代のハイハヤ王国の伝説的な王でした。ダッタートレーヤ神を崇め、千の腕を持つとされます。

カールタヴィールヤ・アルジュナを讃える讃歌では、以下のように讃えられる聖句もあることから、失くしたものを取り戻すためのマントラとしてその讃歌が唱えられるようになったとされています。一説には、ダッタートレーヤ神が失くしたものを取り戻すための力を授けたとも伝えられます。

「クリタヴィールヤの息子である偉大なアルジュナの12の御名を想う者は繁栄に恵まれる。(中略)盗難などで富や財産を失うことはなく、失ったお金を取り戻すことも可能である」

また、単に「カールタヴィールヤ・アルジュナ」とその御名を繰り返し唱えることでも、失くしたものを取り戻すことができると信じられます。いなくなってしまったペットを見つけることに役立ったという報告もされています。

参照:kArtavIrya dvAdashanAma stotram