バガヴァッド・ギーター第2章第72節

एषा ब्राह्मी स्थितिः पार्थ
eṣā brāhmī sthitiḥ pārtha
エーシャー ブラーフミー スティティヒ パールタ
アルジュナよ、これがブラフマンの境地(寂静の境地、解脱)である

eṣā【女性・単数・主格、指示代名詞 etad】これは、これが
brāhmī【女性・単数・主格、brāhmī】ブラフマンに関する;霊的な;神聖な、神的の;梵の
sthitis【女性・単数・主格、sthiti】立つこと;滞在すること;休息の地、住所;地位、階級、高位、威厳;状態、条件;慣例、習慣、制度
pārtha【男性・単数・呼格】プリターの息子よ。アルジュナのこと。

नैनां प्राप्य विमुह्यति ।
naināṁ prāpya vimuhyati |
ナイナーン プラーピヤ ヴィムッヒヤティ
それに到達すれば、迷うことはない

na【否定辞】〜でない
enām【女性・単数・対格、指示代名詞 enad】[〜に、〜を]彼女、それ
prāpya【絶対分詞 pra√āp】到達して、会して、邂逅して、見出して;獲得して、娶って;蒙って
vimuhyati【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 vī√muh】[彼は、それは]困惑する、知覚を失う、失神する

स्थित्वा ऽस्याम् अन्तकाले ऽपि
sthitvā ‘syām antakāle ‘pi
スティトヴァー スヤーム アンタカーレー ピ
さらに臨終のときも、この(境地)にあり続ければ

sthitvā【絶対分詞 √sthā】立って;静止して、留まって;滞在して、住して、存在し続けて
asyām【女性・単数・処格、指示代名詞 idam】[〜において、〜のなかで]これ、この
antakāle【男性・単数・処格、antakāla】[〜において、〜のなかで]死、死亡の時刻;世界の終末
api【不変化辞】さらに、また、同様に;されど、なお

ब्रह्मनिर्वाणम् ऋच्छति ॥
brahmanirvāṇam ṛcchati ||
ブラフマニルヴァーナム リッチャティ
ブラフマンにおける涅槃(究極の解脱)に達する

brahmanirvāṇam【中性・単数・対格、brahmanirvāṇa】[〜に、〜を]ブラフマン(梵)の中に帰入すること、ブラフマンにおける涅槃、梵涅槃
※バラモン教におけるbrahmanと仏教におけるnirvāṇaとの合成語、梵への没入。(辻直四郎注)
※生前に解脱してもなお身体が残っている。死後に完全に解脱し、輪廻から脱すると考えられたようである。(上村勝彦注)
ṛcchati【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 √ṛ】[彼は、それは]動かす;起きる;出会う;達する、得る、取る、獲得する

एषा ब्राह्मी स्थितिः पार्थ नैनां प्राप्य विमुह्यति ।
स्थित्वाऽस्यामन्तकालेऽपि ब्रह्मनिर्वाणमृच्छति ॥ ७२ ॥

eṣā brāhmī sthitiḥ pārtha naināṁ prāpya vimuhyati |
sthitvā’syāmantakāle’pi brahmanirvāṇamṛcchati || 72 ||
アルジュナよ、これがブラフマンの境地である。そこに到達すれば、迷うことはない。
臨終のときも、この境地にあり続ければ、ブラフマンにおける涅槃(究極の解脱)に達する。

バガヴァッド・ギーター第2章第71節

विहाय कामान् यः सर्वान्
vihāya kāmān yaḥ sarvān
ヴィハーヤ カーマーン ヤハ サルヴァーン
すべての欲望を捨てて、

vihāya【絶対分詞 vi√hā】捨てて、投げ捨てて、処分して
kāmān【男性・複数・対格】[〜を、〜に]願望、欲望;愛、快楽;利益;性愛;愛の神
yas【男性・単数・主格、関係代名詞 yad】〜であるもの、〜である人
sarvān【男性・複数・対格】すべての、一切の

पुमांश्चरति निःस्पृहः ।
pumāṁścarati niḥspṛhaḥ |
プマーンシュチャラティ ニヒスプリハハ
愛執なく行動する人は

pumān【男性・単数・主格、puṁs】[〜は、〜が]男、男性;人間;召使い;(最高位の)霊
carati【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 √car】[彼は、それは]動く、行く、歩む、さまよう、徘徊する、広がる、延びる;食べる;行動する、行為する
niḥspṛhas【男性・単数・主格、niḥspṛha】欲望のない、欲しない;(処格)に対して無関心な;(従格)から離脱する

निर्ममो निरहंकारः
nirmamo nirahaṁkāraḥ
ニルマモー ニラハンカーラハ
利己心なく、我意なく

nirmamas【男性・単数・主格、nirmama】自己に留意しない、自我のない、利己心を離れた;(処格)を意に介しない;(世俗を)超脱した
nirahaṁkāras【男性・単数・主格、nirahaṁkāra】自我がない、利己心の束縛を離れた;自負がない、傲慢がない、謙遜な

स शान्तिम् अधिगच्छति ॥
sa śāntim adhigacchati ||
サ シャーンティム アディガッチャティ
彼は寂静に達する

sas【男性・単数・主格、指示代名詞 tad】[〜は、〜が]これ、あれ、彼
śāntim【女性・単数・対格】[〜を、〜に]心の静穏、心の平和;(火が)消えること;平和、好運、繁栄;寂静、寂滅;涅槃
adhigacchati【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 adhi√gam】[彼は、それは]〜に行く、近づく、達する;入手する、獲得する;娶る、結婚する;見出す、発見する;完成する

विहाय कामान् यः सर्वान् पुमांश्चरति निःस्पृहः ।
निर्ममो निरहंकारः स शान्तिमधिगच्छति ॥ ७१ ॥

vihāya kāmān yaḥ sarvān pumāṁścarati niḥspṛhaḥ |
nirmamo nirahaṁkāraḥ sa śāntimadhigacchati || 71 ||
すべての欲望を捨てて、愛執なく、利己心なく、
我意なく行動する人は、心の平安を手にする。

バガヴァッド・ギーター第2章第70節

आपूर्यमाणम् अचलप्रतिष्ठं
āpūryamāṇam acalapratiṣṭhaṁ
アープーリヤマーナム アチャラプラティシュタン
満たされながらも、不動で安定している

āpūryamāṇam【男性・単数・対格・受動態、現在分詞 ā√pṛ】満たされている、増加する、充満している
acala【男性】不動の、動じない、動かない
pratiṣṭham【男性・単数・対格、pratistha】不動の、固定した、しっかりした、立っている、止まっている、安定している
→acalapratiṣṭham【男性・単数・対格、所有複合語】不動で安定している

समुद्रम् आपः प्रविशन्ति यद्वत् ।
samudram āpaḥ praviśanti yadvat |
サムドラム アーパハ プラヴィシャンティ ヤドヴァット
海に、水が流れ込むのと同じように

samudram【男性・単数・対格、samudra】[〜を、〜に]水の集まり、天界の水;海、大洋
āpas【女性・複数・主格、ap】[〜は、〜が]水
praviśanti【三人称・複数・パラスマイパダ・現在、pra√viś】[彼らは、それらは](対格、処格)に入る;〜に登る;(心など)を占有する;(舞台に)登場する;(対格)に達する;(供物を)受け取る、享受する
yadvat【副詞】そのように[tadvatの相関詞]

तद्वत् कामा यं प्रविशन्ति सर्वे
tadvat kāmā yaṁ praviśanti sarve
タドヴァット カーマ− ヤン プラヴィシャンティ サルヴェー
そのように、あらゆる欲望が(彼に)入っても

tadvat【副詞】この方法にて、そのように[yadvatの相関詞]
kāmās【男性・複数・主格、kāma】[〜は、〜が]〜に対する願望、欲望;愛、快楽;利益;性愛;愛の神
yam【男性・単数・対格、関係代名詞 yad】以下のsasを受ける関係代名詞
praviśanti【三人称・複数・パラスマイパダ・現在、pra√viś】[彼らは、それらは](対格、処格)に入る;〜に登る;(心など)を占有する;(舞台に)登場する;(対格)に達する;(供物を)受け取る、享受する
sarve【男性・複数・主格】すべての、一切の、あらゆる

स शान्तिम् आप्नोति न कामकामी ॥
sa śāntim āpnoti na kāmakāmī ||
サ シャーンティム アープノーティ ナ カーマカーミー
彼は寂静に達する。欲望を貪り求める人はそうではない。

sas【男性・単数・主格、指示代名詞 tad】[〜は、〜が]これ、あれ、彼
śāntim【女性・単数・対格】[〜を、〜に]心の静穏、心の平和;(火が)消えること;平和、好運、繁栄;寂静、寂滅;涅槃
āpnoti【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 √āp】[彼は、それは]到達する、獲得する、成し遂げる;遭遇する、蒙る、関係する、耐え忍ぶ;起こる
na【否定辞】〜でない
kāmakāmī【男性・単数・主格、kāmakāmin】[〜は、〜が]すべての種類の欲望を有する(人)、欲望を欲しいままにする(人)

आपूर्यमाणमचलप्रतिष्ठं समुद्रमापः प्रविशन्ति यद्वत् ।
तद्वत्कामा यं प्रविशन्ति सर्वे स शान्तिमाप्नोति न कामकामी ॥ ७० ॥

āpūryamāṇamacalapratiṣṭhaṁ samudramāpaḥ praviśanti yadvat |
tadvatkāmā yaṁ praviśanti sarve sa śāntimāpnoti na kāmakāmī || 70 ||
海に水が流れ込むとき、海は満たされながらも、動じることはない。
それと同じように、あらゆる欲望が彼の中に入っても、彼の心は平安に達する。
欲望を貪り求める人はそうではない。

※この詩節は、トリシュトゥブ(11音節×4行)の韻律になります。

バガヴァッド・ギーター第2章第69節

या निशा सर्वभूतानां
yā niśā sarvabhūtānāṁ
ヤー ニシャー サルヴァブーターナーン
一切万物の夜

yā【女性・単数・主格、関係代名詞 yad】〜であるもの、〜であるとき
niśā【女性・単数・主格】[〜は、〜が]夜;夢
sarvabhūtānām【中性・複数・属格、sarvabhūta】[〜の、〜にとって]一切の存在物、万物、一切衆生

तस्यां जागर्ति संयमी ।
tasyāṁ jāgarti saṁyamī |
タッスヤーン ジャーガルティ サンミャミー
(その夜)において、自己を制する人は目覚める

tasyām【女性・単数・処格、指示代名詞 tad】[〜において、〜のなかで]それ、その、あれ、あの、彼女
jāgarti【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 √jāgṛ】[彼は、それは]覚める、覚醒する、用心する
saṁyamī【男性・単数・主格、saṁyamin】[〜は、〜が]激情を抑制している(人)、自己を制御した(人)

यस्यां जागरति भूतानि
yasyāṁ jāgarati bhūtāni
ヤッスヤーン ジャーガラティ ブーターニ
万物が目覚めるとき

yasyām【女性・単数・処格、関係代名詞 yad】〜であるもの、〜であるとき
jāgarati【三人称・複数・パラスマイパダ・現在 √jāgṛ】[彼らは、それらは]覚める、覚醒する、用心する
bhūtāni【中性・複数・主格、bhūta】[〜は、〜が]存在物[神・人・動物および植物を含む];被創造物;万物;世界

सा निशा पश्यतो मुनेः ॥
sā niśā paśyato muneḥ ||
サー ニシャー パッシャトー ムネーヘ
それは(真理を)知る聖者の夜である

sā【女性・単数・主格、指示代名詞 tad】[〜は、〜が]それ、その、あれ、あの、彼女
niśā【女性・単数・主格】[〜は、〜が]夜;夢
paśyatas【男性・単数・属格、現在分詞 √paś】見ている、眺めている、知っている、理解している、識別している、予見している、認めている、観察している
munes【男性・単数・属格、muni】[〜の、〜にとって]霊感を得た人;賢人、予言者、苦行者、隠者、沈黙の誓約をした者

या निशा सर्वभूतानां तस्यां जागर्ति संयमी ।
यस्यां जागरति भूतानि सा निशा पश्यतो मुनेः ॥ ६९ ॥

yā niśā sarvabhūtānāṁ tasyāṁ jāgarti saṁyamī |
yasyāṁ jāgarati bhūtāni sā niśā paśyato muneḥ || 69 ||
一切万物の夜において、自己を制する人は目覚める。
万物が目覚めるとき、それは真理を知る聖者の夜である。

※愚者は感官により感官の対象を追求するが、聖者は感官を対象から収めて真理を追究する。このように、愚者の活動と聖者の活動は正反対であるということを暗示している。(上村勝彦注)

バガヴァッド・ギーター第2章第68節

तस्माद् यस्य महाबाहो
tasmād yasya mahābāho
タスマード ヤッスヤ マハーバーホー
それゆえ、アルジュナよ

tasmāt【男性・中性・単数・従格、指示代名詞 tad】それ故に、そのために、したがって、だから、その結果
yasya【男性・単数・属格、関係代名詞 yad】[〜の、〜にとって]〜であるもの、〜である人、〜であるとき
mahābāho【男性・単数・呼格】強大な腕力を持つ者よ、長い腕を持つ者よ、強い臂を持つ者よ。ここではアルジュナのこと。

निगृहीतानि सर्वशः ।
nigṛhītāni sarvaśaḥ |
ニグリヒーターニ サルヴァシャハ
完全に抑制された(時、あるいは人)

nigṛhītāni【中性・複数・主格、過去受動分詞 ni√grah】抑制された、保留された、捉えられた、捕らわれた、阻止された
sarvaśas【副詞】全体に、集団で、完全に、一斉に

इन्द्रियाणीन्द्रियार्थेभ्यस्
indriyāṇīndriyārthebhyas
インドリヤーニーンドリヤールテービヤス
感官が感官の対象から

indriyāṇi【中性・複数・主格、indriya】[〜は、〜が]神の力;支配;偉大な行為;活力;体力;精力;感官;感覚
indriya【中性】神の力;支配;偉大な行為;活力;体力;精力;感官;感覚
arthebhyas【男性・複数・従格、artha】[〜から、〜より]仕事;目的;原因、動機;意味;利得;財産、富、金銭;物、事、事物;場合
→indriyārthebhyas【男性・複数・従格、限定複合語】感官の対象から、感覚器官の対象より

तस्य प्रज्ञा प्रतिष्ठिता ॥
tasya prajñā pratiṣṭhitā ||
タッスヤ プラジュニャー プラティシュティター
その人の智慧は確立している

tasya【男性・中性・単数・属格】[〜の、〜にとって]彼、それ、その、あれ、あの
prajñā【女性・単数・主格】[〜は、〜が]識別、判断、知能、了解;智慧、知
pratiṣṭhitā【女性・単数・主格、過去受動分詞】(処格)に立っている・配置された・座った・位置した・留まる・ある・熟達した;確立した、証明された;安住した、悩まされない

तस्माद्यस्य महाबाहो निगृहीतानि सर्वशः ।
इन्द्रियाणीन्द्रियार्थेभ्यस् तस्य प्रज्ञाप्रतिष्टिता ॥ ६८ ॥

tasmādyasya mahābāho nigṛhītāni sarvaśaḥ |
indriyāṇīndriyārthebhyas tasya prajñāpratiṣṭitā || 68 ||
それゆえ、アルジュナよ、感官をその対象から
完全に切り離す人、その人の智慧は確立している。

バガヴァッド・ギーター第2章第67節

इन्द्रियाणां हि चरतां
indriyāṇāṁ hi caratāṁ
インドリヤーナーン ヒ チャラターン
実に、揺れ動く感官に

indriyāṇām【中性・複数・属格、indriya】[〜の、〜にとって]神の力;支配;偉大な行為;活力;体力;精力;感官;感覚
hi【不変化辞】なぜならば、〜のために;真に、確かに、実に
caratām【男性・複数・属格、現在分詞 √car】動いている、行っている、歩いている、さまよっている、徘徊している;近づいている、向かっている

यन् मनो ऽनुविधीयते ।
yan mano ‘nuvidhīyate |
ヤン マノー ヌヴィディーヤテー
なびく心は

yat【中性・単数・主格、関係代名詞 yad】〜であるもの、〜であるとき
manas【中性・単数・主格】[〜は、〜が]心、内的器官、知性、理性、精神、良心、思考、意向、気分
anuvidhīyate【三人称・単数・現在・受動活用、anu-vi√dhā】…に従う、(対格、属格)によって導かれる

तदस्य हरति प्रज्ञां
tadasya harati prajñāṁ
タダッスヤ ハラティ プラジュニャーン
それは、彼の智慧を奪い去る

tat【中性・単数・主格、指示代名詞 tad】[〜は、〜が]それ、あれ
asya【男性・中性・単数・属格、指示代名詞 idam】[〜の、〜にとって]これ、この、彼
harati【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 √hṛ】[彼は、それは]圧倒する、支配する、連れ去る、取り去る、運び去る、奪い去る;魅惑する;破壊する
prajñām【女性・単数・対格】[〜を、〜に]識別、判断、知能、了解;智慧、知

वायुर् नावम् इवाम्भसि ॥
vāyur nāvam ivāmbhasi ||
ヴァーユル ナーヴァム イヴァーンバシ
水上において、風が舟を(奪い去るのと)同じように

vāyus【男性・単数・主格、vāyu】[〜は、〜が]風、空気;風の神
nāvam【女性・単数・対格、nāva】[〜を、〜に]船、ボート
iva【副詞】〜のように、〜と同様に、言わば
ambhasi【中性・単数・処格、ambhas】[〜において、〜のなかで]水;天上の水

इन्द्रियाणां हि चरतां यन्मनोऽनुविधीयते ।
तदस्य हरति प्रज्ञां वायुर्नावमिवाम्भसि ॥ ६७ ॥

indriyāṇāṁ hi caratāṁ yanmano’nuvidhīyate |
tadasya harati prajñāṁ vāyurnāvamivāmbhasi || 67 ||
実に、揺れ動く感官になびく心は、彼の智慧を奪い去る。
あたかも、風が水上の舟を奪い去るように。

バガヴァッド・ギーター第2章第66節

नास्ति बुद्धिर् अयुक्तस्य
nāsti buddhir ayuktasya
ナースティ ブッディル アユクタッスヤ
専心しない人に知性はなく

na【否定辞】〜でない
asti【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 √as】[それは]ある、存在する、実在する
buddhis【女性・単数・主格】[〜は、〜が]知能、理解力、理性、知性、精神;識別、判断;沈着、機知;知覚;会得;意見、見解;信仰、確信;想定
ayuktasya【男性・単数・属格】[〜の、〜にとって]専心しない、心統一しない;不注意な;不適当な;専念しない;集中しない

न चायुक्तस्य भावना ।
na cāyuktasya bhāvanā |
ナ チャーユクタッスヤ バーヴァナー
専心しない人に瞑想はない

na【否定辞】〜でない
ca【接続詞】そして、また、〜と
ayuktasya【男性・単数・属格】[〜の、〜にとって]専心しない、心統一しない;不注意な;不適当な;専念しない;集中しない
bhāvanā【女性・単数・主格】[〜は、〜が]定めること、決定すること、証明;静慮、瞑想;正しい観念、正しい概念
※bhāvanā(瞑想):シャンカラは、「アートマンの認識に専念すること」と解する。シュリーダラはbhāvanāをdhyānaと解し、「bhāvanāによってbuddhiは自己(アートマン)において確立する」と述べる。(上村勝彦注)

न चाभावयतः शान्तिर्
na cābhāvayataḥ śāntir
ナ チャーバーヴァヤタハ シャーンティル
瞑想しない人に心の平安はない

na【否定辞】〜でない
ca【接続詞】そして、また、〜と
abhāvayatas【男性・単数・属格】[〜の、〜にとって]…を考慮に入れない、…について目算を立てない、瞑想しない、静慮しない
śāntis【女性・単数・主格】[〜は、〜が]心の静穏、心の平和;(火が)消えること;平和、好運、繁栄;寂静、寂滅;涅槃

अशान्तस्य कुतः सुखम् ॥
aśāntasya kutaḥ sukham ||
アシャーンタッスヤ クタハ スカム
心が平安でない人に、どうして幸福があるだろうか

aśāntasya【男性・単数・属格】[〜の、〜にとって]心が静穏でない、心が平和でない、寂静でない
kutas【疑問副詞】誰から、どこから、何故に、どんなふうに、いわんや〜をや
sukham【中性・単数・対格】[〜を、〜に]安楽、歓喜、幸福、享楽、繁栄、成功

नास्ति बुद्धिरयुक्तस्य न चायुक्तस्य भावना ।
न चाभावयतः शान्तिरशान्तस्य कुतः सुखम् ॥ ६६ ॥

nāsti buddhirayuktasya na cāyuktasya bhāvanā |
na cābhāvayataḥ śāntiraśāntasya kutaḥ sukham || 66 ||
専心しない人には知性なく、専心しない人には瞑想もない。
瞑想しない人に心の平安はない。心が平安でない人に、どうして幸福があるだろうか。

バガヴァッド・ギーター第2章第65節

प्रसादे सर्वदुःखानां
prasāde sarvaduḥkhānāṁ
プラサーデ− サルヴァドゥフカーナーン
平安において、すべての苦しみの

prasāde【男性・単数・処格、prasāda】[〜において、〜のなかで]光輝;平静、平安;愉快、上機嫌;助力、援助;恵み深い施物;偶像に捧げられた食物;師匠の食の残余
sarva【中性】すべての、一切の、あらゆる
duḥkhānāṁ【中性・複数・属格、duḥkha】[〜の、〜にとって]不安、心配、苦痛、悲しみ、悲哀、困難、苦しみ

हानिर् अस्योपजायते ।
hānir asyopajāyate |
ハーニル アッショーパジャーヤテー
彼にとって、消滅が生じる

hānis【女性・単数・主格】[〜は、〜が]断念、放棄;取り去ること;不十分なこと;破滅;失敗;休止、消失、欠如、非存在
asya【男性・単数・属格、指示代名詞 idam】[〜の、〜にとって]これ、この、彼
upajāyate【三人称・単数・アートマネーパダ・現在 upa√jan】[彼は、それは]生じる、生まれる;起こる、現れる;存在する

प्रसन्नचेतसो ह्याशु
prasannacetaso hyāśu
プラサンナチェータソー ヒヤーシュ
なぜならば、心が安らかな人の(知性は)、速やかに

prasanna【過去受動分詞、pra√sad】明瞭な、輝く;明晰なる(理解)、明白な(知覚);正しい(想定);静穏な(感覚);優しい(言葉)
cetasas【男性・単数・属格、cetas】[〜の、〜にとって】様子;光輝;自覚;知能;感官;心、精神、意志
→prasannacetasas【男性・単数・属格、所有複合語】心の静まった人の、心の安らいだ人の、心の静穏な人の
hi【不変化辞】なぜならば、〜のために;真に、確かに、実に
āśu【副詞】速やかに、直ちに

बुद्धिः पर्यवतिष्ठते ॥
buddhiḥ paryavatiṣṭhate ||
ブッディヒ パリヤヴァティシュタテー
知性は確立するから

buddhis【女性・単数・主格】[〜は、〜が]知能、理解力、理性、知性、精神;識別、判断;沈着、機知;知覚;会得;意見、見解;信仰、確信;想定
paryavatiṣṭhate【三人称・単数・アートマネーパダ・現在 pari-ava√sthā】[彼は、それは](心が)落ち着く、確固となる;遍満する

प्रसादे सर्वदुःखानां हानिरस्योपजायते ।
प्रसन्नचेतसो ह्याशु बुद्धिः पर्यवतिष्ठते ॥ ६५ ॥

prasāde sarvaduḥkhānāṁ hānirasyopajāyate |
prasannacetaso hyāśu buddhiḥ paryavatiṣṭhate || 65 ||
平安において、彼のすべての苦しみは消滅する。
なぜならば、心が安らかな人の知性は、速やかに確立するから。

バガヴァッド・ギーター第2章第64節

रागद्वेषवियुक्तैस् तु
rāgadveṣaviyuktais tu
ラーガドヴェーシャヴィユクタイス トゥ
一方、愛憎を離れた

rāga【男性】激しい欲望、情熱、愛、愛情、同情
dveṣa【男性】憎悪、嫌悪、〜を憎むこと;害心、悪意、敵意
viyuktais【男性・複数・具格、過去受動分詞 vi√yuj】離された;分離させられた;(具格)から離された、自由な、に欠乏した、〜を欠いた
→rāgadveṣaviyuktais【男性・複数・具格】愛憎から離れた、欲望と嫌悪のない
tu【接続詞】しかし、一方(虚辞としても使用)

विषयान् इन्द्रियैश्चरन् ।
viṣayān indriyaiścaran |
ヴィシャヤーン インドリヤイシュチャラン
感官をもって対象に向かい

viṣayān【男性・複数・対格、viṣaya】[〜を、〜に]活動領域;範囲、限界、区域、届く範囲;感覚の対象;感官の対象;目的、標的
indriyais【中性・複数・具格、indriya】[〜によって、〜をもって]神の力;支配;偉大な行為;活力;体力;精力;感官;感覚
caran【男性・単数・主格、現在分詞 √car】動いている、行っている、歩いている、さまよっている、徘徊している;近づいている、向かっている

आत्मवश्यैर् विधेयात्मा
ātmavaśyair vidheyātmā
アートマヴァッシャイル ヴィデーヤートマー
自己の支配下にある(感官によって)、自己を制した人は

ātmavaśyais【男性・複数・具格、ātmavaśya】自由となし得る、自己の意志に従う、自己の支配下に置く
vidheyātmā【男性・単数・主格、vidheyātman】[〜は、〜が]従順な(または制御された)自我を持つ、心を制御した、自己を制した

प्रसादम् अधिगच्चति ॥
prasādam adhigaccati ||
プラサーダム アディガッチャティ
平安に達する

prasādam【男性・単数・対格、prasāda】[〜を、〜に]光輝;平静、平安;愉快、上機嫌;助力、援助;恵み深い施物;偶像に捧げられた食物;師匠の食の残余
adhigaccati【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 adhi√gam】[彼は、それは]〜に行く、近づく、達する

रागद्वेषवियुक्तैस्तु विषयानिन्द्रियैश्चरन् ।
आत्मवश्यैर्विधेयात्मा प्रसादमधिगच्चति ॥ ६४ ॥

rāgadveṣaviyuktaistu viṣayānindriyaiścaran |
ātmavaśyairvidheyātmā prasādamadhigaccati || 64 ||
一方、自己を制した人は、自己の支配下にある
愛憎のない感官をもって行動し、平安に達する。

バガヴァッド・ギーター第2章第63節

क्रोधाद् भवति संमोहः
krodhād bhavati saṁmohaḥ
クローダード バヴァティ サンモーハハ
怒りから迷妄が生じ

krodhāt【男性・単数・従格、krodha】[〜から、〜より]怒り、激怒、憤怒、激情
bhavati【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 √bhū】それは〜である、それは〜となる
saṁmohas【男性・単数・主格、sam√muhからの派生名詞】[〜は、〜が]昏睡状態、失神;夢中、妄想;迷妄;無明

संमोहात् स्मृतिविभ्रमः ।
saṁmohāt smṛtivibhramaḥ |
サンモーハート スムリティヴィッブラマハ
迷妄から記憶の混乱が

saṁmohāt【男性・単数・従格、saṁmoha】[〜から、〜より]昏睡状態、失神;夢中、妄想;迷妄;無明
smṛti【女性】〜の記憶・想起;記念;(Veda聖典を除く)権威ある聖伝文学、伝統的法典、法律書の記載事項
vibhramas【男性・単数・主格、vi√bhramからの派生名詞】[〜は、〜が]あちこち動くこと、(波が)高まること、不安定;歩き回ること;乱れ、攪乱、混乱;動乱、動揺;心の混乱、迷想、錯誤
→smṛtivibhramas【男性・単数・主格、限定複合語】記憶の混乱
※シャンカラは、「教典や師の教えによりもたらされる潜在印象(saṁskāra)から生じた記憶が、混乱すること」と解する。(上村勝彦注)

स्मृतिभ्रंशाद् बुद्धिनाशो
smṛtibhraṁśād buddhināśo
スムリティブランシャード ブッディナーショー
記憶の混乱から知性の喪失が

smṛti【女性】〜の記憶・想起;記念;(Veda聖典を除く)権威ある聖伝文学、伝統的法典、法律書の記載事項
bhraṁśāt【男性・単数・従格、bhraṁśa】[〜より、〜から]失敗すること、落伍すること、滑り落ちること、逃れ去ること、落下;衰退、朽敗;破滅、没落;喪失、消失
→smṛtibhraṁśāt【男性・単数・従格、限定複合語】[〜より、〜から]記憶の喪失、記憶の混乱
buddhi【女性】知能、理解力、理性、知性、精神;識別、判断;沈着、機知;知覚;会得;意見、見解;信仰、確信;想定
nāśas【男性・単数・主格、√naśからの派生名詞】損失、消失;壊滅、絶滅;零落;死
→buddhināśas【男性・単数・主格、限定複合語】理性の喪失、知性の喪失

बुद्धिनाशात् प्रणश्यति ॥
buddhināśāt praṇaśyati ||
ブッディナーシャート プラナッシャティ
知性の喪失から人は滅びる

buddhināśāt【男性・単数・従格、buddhināśa】[〜から、〜より]理性の喪失、知性の喪失
praṇaśyati【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 pra√naś】[彼は、それは]失われる;見えなくなる、消える、逃げる

क्रोधाद्भवति संमोहः संमोहात्स्मृतिविभ्रमः ।
स्मृतिभ्रंशाद्बुद्धिनाशो बुद्धिनाशात्प्रणश्यति ॥ ६३ ॥

krodhādbhavati saṁmohaḥ saṁmohātsmṛtivibhramaḥ |
smṛtibhraṁśādbuddhināśo buddhināśātpraṇaśyati || 63 ||
怒りから迷妄が生じ、迷妄から記憶が混乱する。
記憶の混乱から知性を喪失し、知性の喪失から人は滅びる。