秋のナヴァラートリー2020

ナヴァラートリーとは、ドゥルガー、ラクシュミー、サラスワティー女神をお奉りするヒンドゥー教の三大祭典のひとつです。「ナヴァ」はサンスクリット語で9をあらわし、「ラートリー」は夜を意味します。したがって、ナヴァラートリーとは、9日間の夜となります。この祭典は、春と秋の年2回、9日間にわたって行われます。ヒンドゥー教のカレンダーでは、月齢にしたがっているために毎年開催時期が多少前後しますが、2020年は10月17日から25日まで行われます。

ナヴァラートリーの9日間は、礼拝する神さまに応じて、3日間ずつに分けられます。はじめの3日間は、わたしたちの心の中に潜む不純物や悪徳、欠点を破壊するため、強力な戦士でもあるドゥルガー女神を礼拝します。次の3日間は、すべての帰依者に尽きることのない富と幸福を授けるといわれるラクシュミー女神を礼拝します。そして、最後の3日間は、創造主ブラフマーの妻であり、学問と芸術、そして叡智を授ける女神であるサラスワティー女神を礼拝します。わたしたちは人生のさまざまな局面で、神々からの祝福を求めて、3つの側面をもつそれぞれの女神さまにお祈りを捧げます。そのために、この祭典には9日間が費やされます。

ナヴァラートリーの期間中、真摯な帰依者の中には、断食をしながら、健康や繁栄を願って祈りを捧げる人々もいます。じぶん自身の日々の生活を見つめ直して、人生の向上につながる新しい習慣をはじめるには、昔からナヴァラートリーはこの上ない吉祥の日であるといわれています。

また、ナヴァラートリーはドゥルガー・プージャーともいわれ、ドゥルガー女神がとりわけ熱心に崇められる時です。マヒシャースラという悪魔によって世界が征服され大変な混乱に陥っていた時、ブラフマー神、ヴィシュヌ神、シヴァ神の3神が力を合わせると、神々の力をすべて兼ね備えた悪を倒す最強の戦士として、ドゥルガー女神はこの世界にあらわれました。

ドゥルガー女神は9日間の戦いの後にマヒシャースラを倒します。この9日間はナヴァラートリーとして祝福され、ドゥルガー女神がマヒシャースラを倒した日として最後に迎えるのが、2020年は10月25日のダシャラー祭です。

私たちは悪質な感情や思考の数々にまみれることがあります。季節の変わり目は、そういった悪質がとりわけ強くなる時ともいわれ、まるでマヒシャースラに支配されたかのように、私たちの内は混乱に陥ります。ナヴァラートリーは、そんな季節の変わり目に訪れます。9日間にわたる断食や瞑想を通じてドゥルガー女神を呼び覚まし、その力を礼拝することで、自分自身の内は浄化され悪質は倒されます。そうして私たちは清らかな心身を取り戻し、ダシャラー祭を祝福します。

ナヴァラートリーは、自身の内面に潜む不浄な傾向を克服するために、非常に重要な期間とされています。この神聖な期間を活かして、わたしたちの内面に潜む悪魔を討ち滅ぼすことができるよう日々を過ごされてみるとよいでしょう。

参照
[1] “Navaratri” from Wikipedia, Free encyclopedia, http://en.wikipedia.org/wiki/Navratri

ヴィシュヴァカルマン・プージャー2020

vishwakarma

2020年9月16日はヴィシュヴァカルマン・プージャーの吉日です。

ヴィシュヴァカルマン・プージャーは、北インドや東インドにて行われる祝祭です。

ヴィシュヴァカルマンは、インド神話においてあらゆるものを設計した神として知られています。現在でも、物造りや技術の神様として、工場などにおいて広く祀られ崇められています。

ヴィシュヴァカルマン・プージャーはヴィシュヴァカルマンの生誕日だとする説もありますが、あらゆるものを設計し、創造したとされるヴィシュヴァカルマンは全ての起源であるとされることから、生誕日が存在することはつじつまが合わないとする信仰もあります。

それでもこの日は特に、物造りに関わる人々にとってはとりわけ吉兆な時であり、ヴィシュヴァカルマンへのプージャーが熱心に執り行われます。

※ヴィシュヴァカルマン・プージャーは、ガネーシャ降誕祭の最終日であったり、カニャー・サンクラーンティ(太陽が乙女座に変遷する時)であったり、地域や慣習によって異なります。

参照:2020 Vishwakarma Puja

ガネーシャ・ヴィサルジャン2020

すべての災いを取り除き、全世界に幸福をもたらすガネーシャ神の降誕祭が、2020年は8月22日に祝福されました。
ガネーシャ降誕祭は10日間に渡る祝祭であり、ガネーシャ信仰の厚い地域では、現在もガネーシャ神への熱心な礼拝が続いています。

この10日間、伝統に従う人々は、土でできたガネーシャ神像をそれぞれの家庭に祀り礼拝を行います。
そして、10日間の礼拝を終えると、そのガネーシャ神像を海や川へと流します。
この日は、アナンタ・チャトゥルダシーと呼ばれ、今年は9月1日に祝福されます。
このガネーシャ神像を海や川へと流す行為は、ガネーシャ・ヴィサルジャンと呼ばれ、霊性を育む大切な教えが秘められています。

必滅で有形である肉体を持つ私たちにとって、不滅で無形である神に心をよせることは、非常に困難なことであると、かのクリシュナ神は説いています。
そして、無形の神を念想するよりも、有形の神を念想するほうが、より容易に成就に達することができると説きました。
(バガヴァッド・ギーター12章)

土に水を加えて捏ねながらガネーシャ神の姿を形作る時、私たちはより明確に、障害除去の神としてのガネーシャ神の姿を意識することができます。
ガネーシャ神の姿には、すべての災いを取り除き、幸福をもたらすための叡智が諸所に秘められています。
そうして目に見えるようになったエネルギーを、私たちは10日間にわたって礼拝します。

さまざまな思いを込めて礼拝を行ったガネーシャ神像を最後に手放すことは、決して容易なことではありません。
しかし、この10日間に育まれたガネーシャ神との繋がりは、姿や形に限定されるものではないはずです。
その姿や形がなくなったとしても、私たちはその本質に繋がった心を見失わずにいなければなりません。

姿や形といった目に見える物は、ある時間が来れば消えて無くなるということ。
この祝祭を通じ、身をもってその事実を示すガネーシャ神は、より明確に、私たちを非顕現の真理に導いてくれるはずです。

(文章:ひるま)

オーナム祭2020

聖なる4か月といわれ、大きな祝祭で溢れるチャトゥル・マースが続いているインド。このチャトゥル・マースの間、ヴィシュヌ神は眠りにつくと信じられています。そんなヴィシュヌ神が寝返りを打つ日として知られるのが、パリヴァルティニー(パールシュヴァ)・エーカーダシー(2020年は8月29日)です。寝返りを打ったヴィシュヌ神は、5番目の化身である矮人ヴァーマナへと化身したといわれます。

この5番目の化身ヴァーマナは、ケーララ州でこれから迎えようとしている年に一度の盛大な祝祭、オーナム祭に深い繋がりがあります。オーナム祭は、王国を追われたマハーバリ王が年に一度だけ愛する国民たちの下へ戻る日、またそのマハーバリ王が解脱を得た日として祝福されるものです。このマハーバリ王を倒したのが、ヴァーマナでした。

マハーバリ王は神々と敵対するアスラの生まれでしたが、非常に信心深く献身的で、国民から愛される偉大な王として知られます。地と空と天の3界は、そんなマハーバリ王に統治され、神々は力を失っていました。ヴィシュヌ神は世界を神々の手に戻そうと、ヴァーマナに化身しマハーバリ王に歩み寄ります。そして、3歩分の土地が欲しいと述べると、マハーバリ王は快く、その土地を与える約束をしました。すると、矮人であったヴァーマナが巨人となり、2歩で世界を跨いでしまいます。

信心深いマハーバリ王は、約束通りヴァーマナに3歩分の土地を与えようと、最後に唯一残った領地である自らの頭を差し出します。そうしてヴァーマナはマハーバリ王の頭を踏みしめ、世界を神々に取り戻させました。マハーバリ王がアスラでありながらも国民に深く愛されたのは、潔く自らの頭を差し出したように、信心深く献身的な姿勢があったからだといわれます。それでも王国を追われたのは、マハーバリ王がアスラであったということと、王としてのエゴがあったからでした。

ヴァーマナが要求し、マハーバリ王が差し出した3歩分の土地は、地と空と天にあたります。それはまた、物質と精神と魂、現在と過去と未来などともいわれます。これらは、私たちが潔く神々へと差し出すべくものに他ありません。そうする時、私たちは神々に統治され、エゴは静まり、真の豊かさや平和をその内に築くことができるのだと感じます。

マハーバリ王が国民の下へ戻る日は、2020年は8月31日のオーナム祭です。マハーバリ王が解脱をした日でもあるこの日、皆様にとっても実りある時となりますよう心よりお祈りしております。

(文章:ひるま)

参照:https://en.wikipedia.org/wiki/Vamana

ラーダー・アシュタミー2020

2020年8月26日はラーダー・アシュタミーです。

ラーダー・アシュタミーは、クリシュナ神の最愛であるラーダーの降誕を祝福する祝祭です。

ラーダー・アシュタミーはクリシュナ神を信仰する人々の間で広く祝福される吉日です。
バードラパダ月(8月~9月)のシュクラ・パクシャ(月が満ちる約2週間)の8日目がその時にあたります。

ラーダーは神の愛に目覚めた存在であり、その愛の中に溶け込む個の魂を象徴しています。
この日は、神と人間(世界)の神聖な結合をクリシュナの帰依者が祝福します。

~クリシュナとラーダーのお話~

妃ではないにも関わらず、クリシュナ神の最愛として崇められるラーダーには、真実の愛に関するさまざまな神話が伝わり、私たちを不変の喜びに導きます。

かつて、クリシュナ神が病に倒れた時のこと、クリシュナ神を愛する牛飼いの乙女たちはひどく心を悩ませました。
クリシュナ神は、病を治す唯一の薬があるといいます。
それは、真の帰依者のチャラナームリタでした。
チャラナームリタは御足の甘露を意味し、主に神やグルの御足を洗った聖水として崇められます。

クリシュナ神の帰依者である牛飼いの乙女たちは、自分こそが真の帰依者だと常に自慢をし合っていました。
しかし、いざチャラナームリタを捧げるとなった時、牛飼いの乙女たちは迷い始めます。
自分の足を洗った水をクリシュナ神に捧げ、病が治らなかったら、真の帰依者ではないと笑われてしまうかもしれません。
牛飼いの乙女たちは、自分自身に疑いを持ち、失敗を恐れ、将来を憂いました。

しかし、ラーダーはすぐさま自分の足を洗い、クリシュナ神にその水を捧げます。
すると、クリシュナ神は瞬く間に病から回復したと伝えられます。
ラーダーは、評価や失敗や将来を恐れることはありませんでした。
クリシュナ神への純粋な愛が、クリシュナ神の回復という喜びをラーダーに祝福します。
ラーダーのその姿は、真の帰依者としての姿を明らかにしました。

私たち自身も、自分に対する評価を気にかけたり、失敗を恐れたり、将来を悲観したりすることが少なくありません。
そうした見かけの事象に惑わされ、クリシュナ神という自分自身の本質である不変の喜びを見失うことが多くあります。
クリシュナ神へ向かう比類のないラーダーの愛は、真の帰依者としての姿だけでなく、大きな喜びの中で生きる術を常に示してくれます。

参照:2020 Radha Ashtami Vrat Date

マハーラクシュミー・ヴラタ2020

マハーラクシュミー・ヴラタは、主に北インドで行われる、ラクシュミー女神に捧げられる16日間の祈りや断食です。2020年は8月26日に始まり、9月10日まで続きます。

このヴラタでは、バードラパダ月(8~9月)シュクラ・パクシャ(月が満ちる約2週間)のアシュタミー(8日目)から、クリシュナ・パクシャ(月が欠ける約2週間)のアシュタミー(8日目)までの16日間、毎日のラクシュミー女神へのプージャーや、断食、もしくは菜食になるなどの食の節制を行います。

一説には、ユディシュティラ(パーンドゥの五王子の長兄で、パーンダヴァ軍の総帥)がクリシュナ神に、失った全てのものを取り戻すにはどうしたらいいか尋ねると、クリシュナ神はこのマハーラクシュミー・ヴラタを行うように説いたと言われています。このマハーラクシュミー・ヴラタを努め上げた者には、必要なものが全て授けられるとも信じられます。

敬虔な人々はこの16日間、食の制限を行い、真摯に祈りを捧げます。この間の祈りはとりわけ強くラクシュミー女神の下へ届き、多くの恵みが授けられると信じられています。

参照:2020 Mahalakshmi Vrat

ピトリ・パクシャ2020

日本において先祖供養が行われるお彼岸の中日は、秋分の日(昼と夜の長さがほぼ同じになる日)として知られています。悟り(仏)の世界を彼岸、煩悩に満ちた世界を此岸と呼ぶ仏教では、彼岸は西に、此岸は東にあるとされてきました。太陽が真東から昇り真西に沈むこの秋分(また春分)は、彼岸と此岸がもっとも通じやすくなるとされ、この時に先祖を供養する行いがされるようになったと言われます。

インドではこの先祖供養の時にあたるのが、2020年は9月3日から17日までの約2週間(インド現地時間)、ピトリ・パクシャと呼ばれる期間です。この間は、先祖が地上にもっとも近づくと言われ、熱心な先祖供養の行いが執り行われます。それにはこんな言い伝えがあります。

マハーバーラタに登場する不死身の英雄カルナ王は、多くの人々に金や銀を与えてきましたが、天界にいった時、食事と水を与えられず空腹に苦しみました。それは、カルナ王が人々に金と銀しか与えず、食事と水を施さなかったことに理由がありました。神々はカルナ王に、地上に戻り人々に食事と水を施す機会を与えます。再び地上に戻り、人々へ食事と水を施したカルナ王は、その後、天界で幸せに暮らしたと言われています。

カルナ王が地上に戻ったのが、このピトリ・パクシャの約2週間であるとされ、人々は先祖だけでなく、貧しい人々への食事の施しを熱心に行います。インドでは、私たちは先祖と血縁関係で結ばれているだけでなく、先祖の行いや思いの影響を非常に強く受けていると信じられています。先祖を飢えさせないよう、先祖だけでなく、貧しい人々にも食事や水を恵むことで、先祖の魂は満たされ、私たちもまた祝福されると伝えられてきました。何より、そうして行われる善行は私たち自身の行いを清めるものでもあり、これから先をより良い方向へ導くものに他ありません。

さまざまな聖典の記述に従って複雑な儀式が執り行われるインドの先祖供養では、シュラーッダと呼ばれる儀式が重要視されます。「信頼」や「信念」を意味するシュラーッダは、信愛から生じる不変的な気づきに他なく、家族という身近な存在を敬う気持ちが、私たちをより良い道へと導きます。起こる物事にはすべて大切な意味があり、それらが私たちのこれからを最善に導いていることに気づき、こうして与えられた今という機会を大切に生きていきたいと感じています。

(文章:ひるま)

参照:”Significance of Pitru Paksha”, http://www.speakingtree.in/blog/significance-of-pitru-paksha

ヴァラーハ・ジャヤンティ2020

2020年8月21日は、ヴァラーハ・ジャヤンティの吉日です。ヴァラーハ・ジャヤンティは、ヴィシュヌ神の化身であるヴァラーハ神の降誕祭にあたります。

ヴァラーハ神は猪の姿をしたヴィシュヌ神の第3の化身です。悪魔によって沈められた大地を救うために、猪となって大地を持ちあげたと伝えられ、地上を救う犠牲の精神に満ち溢れた神として崇められています。真理を追究する者は、凄まじい勢いで真っ直ぐに突き進む猪のように、あらゆる犠牲を恐れることなく進むべきであることを象徴しているといわれます。

『あらゆる犠牲を楽しむ至高の方は、大地の繁栄を願い猪の姿としての化身を受け入れました。彼はそして、冥土に沈む大地を持ち上げました。』(Srimad Bhagavatam 1.3.7)

『究極の力を持つ至高神が、気晴らしとして猪の姿をとったとき、地球の生命はまさにガルボーダカと呼ばれる宇宙の大海に沈んでいました。大地を沈めた悪魔ヒラニヤークシャが現れたとき、神はその牙で悪魔を突き刺しました。』(Srimad Bhagavatam 2.7.1)

『子が伏しているとき、母は溢れる愛のために、身を投げ出して子を救います。それと同じように、大地が暗黒に伏しているとき、神は猪の姿をとって、キラキラ輝く瞳をもって飛び込み、大地を救うのです。』(Sri Pillan’s Tiruvaymoli 7.5.5)

大地を救うため、至高神はスヴァヤムブヴァの時代では、ブラフマーの鼻の穴から現れ、チャクシュサの時代では、水中から現れました。最上の牙をもつ獣であるヴァラーハ(猪)は、悪魔ヒラニヤークシャを倒し、大地を救うために出現しました。ヴァラーハ(猪)は、時には森に棲む野生動物であり、時には家畜として養われます。そして、時には雨雲のように黒い姿であり、時には月のように白い姿です。スムルティ・シャーストラでは、ヴェーダ的犠牲の象徴であるヴァラーハ神の偉大な姿を、このような2種の姿として記述しています。マイトレーヤ・ムニは、異なる時間になされたヴァラーハの神行を、あたかも同時に行われたかのように記述しました(Srila Rupa Gosvami’s Laghu-bhagavatamrta 1.3.10-12, 17)。

(「シュリー・ヴァラーハ・シュローカ」より)

参照:2020 Varaha Jayanti

リシ・パンチャミー2020

2020年は8月22日に、ガネーシャ降誕祭が祝福されます。
このガネーシャ降誕祭の次の日には、インドの一部の地域で、リシ・パンチャミーという祝福が行われます。
2020年のリシ・パンチャミーは8月23日です。

リシ・パンチャミーは、サプタリシ(七聖仙)を礼拝する日として知られています。
この日は、ラジャスヴァラー・ドーシャを清めるために、女性たちが祈りや断食をする日としても有名です。

ラジャスヴァラー・ドーシャは、月経によって生み出される困難な影響と信じられます。
一説に、このラジャスヴァラー・ドーシャに苦しんでいた女性がリシ・パンチャミーに戒行を行ったところ、その影響が清められ、健やかで幸せな人生を迎えたといわれます。

インドでは、女性は月経中、洗髪をしたり、台所に入って食事を作ったり、寺院へお参りをしたり、プージャーに参加したり、神聖なものに触れたりすることは避けるよう伝えられています。
こうした禁忌事項には、女性が健やかで幸せな日々を過ごすための叡智が秘められています。

女性は月経中、痛みや出血によって、何より身体的に疲労し消耗します。
また、女性ホルモンの働きによって、精神的にも不安定さを経験することが少なくありません。
このため、月経中の女性の心身は、適切な休息やケアが必要となります。

例えば、洗髪によって背中を伝う水は、不安定な状態にあるチャクラに影響を与え、子宮に近い最下部のムーラーダーラ・チャクラにその影響が滞るといわれます。
これにより、子宮が強く収縮したり、痛みが増したりするといわれます。
洗髪にお湯が使えなかった古代では、冷たい水を浴びることでの冷えも懸念されていたに違いありません。

また、寺院やプージャーなどの儀式では、真鍮や銅といった、伝導性があり、身体にエネルギーを伝えやすいものが多く用いられます。
こういった場所にいることで、女性ホルモンのバランスが乱れるなどの影響があると信じられます。
さらに、マントラなどの波動も、不安定な心身には強すぎる影響が加わるといわれます。

台所用品の多くも、かつてはこうした金属類が用いられていました。
それらに近づくことで生じる影響を抑えるためにも、台所に入ることが禁じられていたといわれます。
月経中も衛生的に過ごせる現代とは異なり、周囲を衛生的に保つためにも、古代では月経中の女性が調理することが難しかったのかもしれません。

ラジャスヴァラー・ドーシャは、こうした禁忌事項を守らないことで生じる心身の不調とも捉えられます。
リシ・パンチャミーにおいて、祈りや断食を行うことで、その影響が和らぐと信じられます。

こうした禁忌事項が伝えられるのは、月経中の女性から不浄なエネルギーが排出されるからであると、女性軽視のように捉えられてしまうこともあります。
それによって、神前に向かうことが失礼にあたるのではないかと感じる女性もいるといわれます。

しかし、その深くには、女性の心身を守り、適切に休め、健康で幸せに過ごすための叡智が秘められています。
忙しない現代社会において、こうした禁忌事項を守るのは難しいかもしれませんが、自然と調和しながら生きる術を心に留めておくと良いかもしれません。

(文章:ひるま)

ダヒー・ハーンディー2020

2020年は8月11日(もしくは12日)に、いよいよクリシュナ降誕祭を迎えます。
世界中で盛大な祝福が行われるこのクリシュナ降誕祭の中には、ダヒー・ハーンディーと呼ばれる熱狂的なお祝いがあります。
今年は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため大きな行事は中止となっていますが、ダヒー・ハーンディーは通常クリシュナ降誕祭の次の日に行われ、今年は8月12日に祝福されます。

ダヒーはヨーグルト、ハーンディーは土壺を意味します。
このお祝いでは、人々が団結をしながら人間ピラミッドを作り、高いところに吊り下げられた土壺をココナッツなどで割ります。
そして、中にはいったダヒーを浴びると、クリシュナ神の大きな祝福があると伝えられています。

いたずら好きなクリシュナ神は、幼少の頃、大好物のバターやヨーグルトを盗んでは食べていました。
高いところに隠されたバターの入った壺を、友人たちと肩車をしながら盗む絵も描かれるほどです。

ダヒー・ハーンディーは、この一場面を真似た祝祭です。
現在ではピラミッドの高さが競われ、インドの数ある祝祭の中でも、とりわけ大きな熱狂に包まれるお祝いとして有名です。
このダヒー・ハーンディーにも、霊性を育むさまざまな教えが秘められています。

例えば、土壺は、私たちの肉体と見ることができます。
そして、その中に入ったダヒーは、肉体をまとった魂のように見えます。
私たちが大いなる至福を得るには、魂の永遠性を理解することが必要であると古代より説かれてきました。
そのためには、肉体は朽ち滅び、いずれ壊れるという事実を理解しなければなりません。
このダヒー・ハーンディーは、肉体から魂を解放する喜びの意味を私たちに伝えているかのようです。

しかし、それは決して簡単ではないことが分かります。
高いところに吊り下げられた土壺を割るには、目標に対する人々の固く定まった心が必要です。
一人の心でも乱れれば、ピラミッドはいとも簡単に崩れ落ち、土壺に届きません。
まるで、神の祝福は手の届かないところにあるもののように見えます。

しかし、クリシュナ神はどんなところに隠されたバターでも見つけ出し、その喜びを手にしてきました。
目標に対し、確かに定まった心があれば、どんな困難をも乗り越え、それを手にすることができるということをクリシュナ神は伝えています。
そうして人生を歩む時、私たちは肉体を超越した永遠の魂という、何よりもの祝福を得ることができるに違いありません。

(文章:ひるま)