宇宙階層構造の幾何学

Digital Illustration of Spiral Galaxy

私たちの住む世界は、3次元空間です。しかし、原子よりも小さなミクロの世界、あるいは銀河系や銀河団よりも大きなマクロの世界に目を向ければ、そこに3次元空間が続いているとは限りません。統一理論として期待されている超弦理論では、9次元や10次元空間という、高次元の理論に基づいています。

また、自己相似やフラクタルと呼ばれる数学では、非整数の次元が登場します。非整数の次元は、どのような世界なのか想像しづらいですが、自然界で頻繁に観察される次元であり、海岸線、川、銀河の空間分布などは、1.2次元前後と報告されています[1]。1次元は直線、2次元は面であることから、1.2次元は、直線よりも複雑であり、面よりは単純な図形と捉えることができます。

筆者の提唱する自己相似対称(SSS)モデル[2]は、プランクから宇宙スケールまで、宇宙における階層構造は、1.2次元の相似次元で支配されていることを示しています。大統一、電弱統一、原子、中性子星、太陽系、銀河系の6つの階層は、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の相似形として表現することができます。CMBは、刻一刻と変化しているため、それに応じて、宇宙の階層構造も変化すると考えられます。

これは、物理の未解決問題のひとつである階層性問題に対して、解決の糸口を与えることになるかもしれません。階層性問題とは、たとえば重力と弱い力の間には、なぜ1032倍もの差があるのかという、階層間の大きな差を問題としています。これを解決するためには、数学的に不自然な補正を行わなければならないため、ファインチューニング問題(微調整問題)としても知られています。

SSSモデルにもとづけば、各階層間の差は、プランク温度とCMB温度の差に起因しています。すなわち、重力と弱い力の間に1032倍もの差があるのは、プランク温度とCMB温度に1032倍の差があるためといえます。今後、宇宙膨張とともにプランク温度とCMB温度の差が大きくなるにしたがって、重力と弱い力の差も大きくなると予想されます。

算数や数学の図形問題で、補助線を1本引くだけで、問題がとても簡単になることを経験したことがあるでしょう。宇宙の階層構造を幾何学的に捉えると、多くの未解決問題が、シンプルに解決できる可能性があります。

参考文献
[1] 高安秀樹 (1986) 「フラクタル」 朝倉書店
[2] T.Sonoda, Front. Appl. Math. Stat. 2:5 (2016)

暗黒物質の正体とは

Space background with blue nebula and stars

日常生活において、私たちがもっとも重視しているものは、物質でしょう。水、土、空気、食物、人間、星—形あるものすべては、物質から構成されています。しかし、これらの物質を構成している原子は、宇宙の構成要素のわずか5%程度であり、残りは暗黒物質(ダークマター)と暗黒エネルギー(ダークエネルギー)であると考えられています。

今回のテーマである暗黒物質は、日常生活からかけ離れた、より大きな宇宙規模のスケールに目を向けなければ、知り得ることができません。

太陽系においては、水星、金星、地球、火星、木星、土星などの惑星が太陽の周りを公転しており、その公転速度は、太陽に近い惑星ほど速くなります。これは、ケプラーの法則として知られています。

銀河系についても、太陽系と同じように、銀河中心に近い星々の回転速度が速く、外側の星々ほど、回転速度は遅くなるものと考えられていました。ところが、銀河系の回転速度を詳細に観測したところ、内側の星々と、外側の星々の回転速度が、ほぼ同じであることが明らかになりました。

これを説明するためには、宇宙には、正体不明の暗黒物質が存在すると仮定するか、一般相対性理論(重力理論)の修正が必要になります。一般相対性理論は、現在まで観測結果と矛盾がないことから、多くの科学者は、暗黒物質の存在を前提として、研究を進めています。

しかし、高性能の観測装置によっても、いまだに暗黒物質の手がかりを掴むことができていません。

筆者の提唱する自己相似対称(SSS)モデル[1]は、幾何学的なアプローチによって、銀河の回転速度を導くことができます。SSSモデルでは、宇宙の階層構造は、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の波長を初項とする等比数列で表現できます。このことから、銀河の回転速度は、CMB、すなわち重力以外の要素によって決まると考えられます。

SSSモデルでは、CMB温度の高い領域は、重力や電子の質量が大きくなるため、物質の密度が高くなります。つまり、宇宙初期のCMBの温度ゆらぎが、宇宙の大規模構造の形成に大きく寄与することになります。

CMBは、重力を支配する光であり、CMBが変化することにより、宇宙の構造や物理定数も変化します。これは、従来の宇宙論の考え方とは大きく異なりますが、実験や観測で検証してみる価値は十分にあるでしょう。

CMBは、宇宙に充満するもっとも興味深い光ですが、宗教的な観点における類似点も見逃せません。ウパニシャッドをはじめとする、太古の聖典には、神と光は同一であることが示唆されています。

『天上を照らすその光明は、何よりも高く、何よりも勝り、この世界でそれより優れるものは他にない。それは、人間の内に輝く光明と同じものである。』
(チャーンドーギャ・ウパニシャッド 3:13.7)

CMBは、万物の構造や運動を司る光であると考えられ、太古の聖者たちが捉えた神の光に近いものがあります。

[1] T.Sonoda, Front. Appl. Math. Stat. 2:5 (2016)

宇宙における普遍の力

Sunrise over planets horizon with stellar wonders.

宇宙空間は、観測によって加速膨張していることが明らかになっていますが、空間が加速膨張するためには、重力(引力)に逆らう斥力が必要になります。
しかし、そのエネルギーは何なのか、まったく分かっていません。
そのことから、宇宙空間を押し広げる未知のエネルギーは、暗黒エネルギー(ダークエネルギー)と呼ばれています。

現在の定説では、暗黒エネルギーには、次の3つの可能性が考えられています。
1. アインシュタイン方程式の宇宙項に見られる、真空エネルギー。
2. クインテッセンスと呼ばれる場のエネルギー。重力、電磁気力、強い力、弱い力以外の第5の力。
3. ダークエネルギーは存在しない。一般相対性理論(重力理論)の修正が必要となる。

ところが、最有力とされる真空エネルギーのモデルでさえ、シンプルな計算による理論値と観測値の誤差がおよそ120桁(10120倍)もあります。
何らかの微調整が働いて、理論値と観測値の整合性を保とうとする試みが行われていますが、現在のところ成功していません。
そのため、これは『物理学における最悪の予言』と呼ばれることもあります。

筆者の提唱する自己相似対称(SSS)モデル[1]では、宇宙の大きさは、プランク単位系における宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の波長(温度の逆数)の二乗に比例して拡大します。そして、CMB温度が下がるにつれて、重力定数と電子の質量も減少していきます。
つまり、重力は定数とする一般相対性理論(重力理論)の修正が必要となる可能性を示しています。

現在の宇宙論では、宇宙が膨張しても、銀河系、太陽系、原子などは、重力や電気的な引力で強く引き合っているため、膨張しないと考えられています。
しかし、SSSモデルにおいては、重力定数や電子の質量は、CMB温度の低下にともなって減少します。
そして、銀河系、太陽系、原子なども、宇宙膨張とともに、膨張することになります。
これは、宇宙膨張について、人々が抱く、直感的な理解にも合致するでしょう。

宇宙が膨張するにつれて、私たちの体も膨張していると考えられます。
私たち自身と、宇宙には、同じ力が働き、同じ力に導かれています。
太古の聖者たちは、万物に浸透するその普遍の力のことを、神と呼んだのかもしれません。

[1] T.Sonoda, Front. Appl. Math. Stat. 2:5 (2016)

宇宙に果てはあるのか

Particle in the outer space

宇宙には、無数の星々が輝いているのに、どうして夜は暗闇に包まれるのでしょう。
夜空を見上げながら、思いを馳せることがあるかも知れません。

私たちの宇宙は、遠く離れるほど、加速膨張していることが、観測結果から明らかになっています。
すなわち、私たちから遠く離れた星々ほど、地球から速く遠ざかっているため、その光がまだ地球まで届いていません。
そのため、太陽よりも明るい、あまたの星々があるにも関わらず、夜空は暗闇に包まれていると考えられています。

それでは、宇宙の膨張速度よりも高速で移動した場合、宇宙の果てにたどり着くことは可能でしょうか。
現代物理学では、宇宙の大きさの目安として、宇宙の年齢や光速度による観測的な限界から、観測可能な宇宙は、直径8.8×1026m(約28ギガパーセク)の球体と推定されています。
しかし、物理的な宇宙は有限なのか、それとも無限の大きさをもつのか、まだ明らかになっていません。

宇宙は過去に遡ると、素粒子よりも小さい点からはじまったといわれます。
そのため、現在の宇宙論の研究には、素粒子論の成果が欠かせなくなっています。
素粒子論においては、物理学で扱える最小の長さの単位は、プランク長≈1.6×10-35mと考えられています。

それでは、プランク長に対応するような、最大の長さの単位を導くことは可能でしょうか。
筆者の提唱する自己相似対称(SSS)モデル[1]では、プランク長と宇宙マイクロ波背景放射(CMB)との対称性から、物理的な宇宙の大きさは、4.1×1028m(約1.3テラパーセク)と推定されます。
観測可能な宇宙よりも、さらに約50倍の大きさに相当します。

SSSモデルでは、プランク長と宇宙の大きさは、CMB温度によって決まります。
すなわち、CMBが温度(エネルギー)をもつ限り、私たちの宇宙の大きさには物理的な限界があることが示されます。
これから、CMB温度が時間の経過とともに下がり続け、やがて0になったとき、宇宙の大きさは無限大になることが予見されます。
そしてその時、万物は消滅し、宇宙は無に帰するでしょう。

古今東西の宗教に見られる宇宙観では、現代物理学に通じる記述が少なくありません。
逆の見方をすれば、現代物理学が、宗教で語られる宇宙観に近づいているとも考えられます。
聖典バガヴァッド・ギーターにおいて、クリシュナは次のように述べています。

「劫末において、万物は私のプラクリティ(根本原質)に赴く。
劫の始めにおいて、私は再びそれらを出現させる。
自らのプラクリティに依存して、この無力な万物の群れのすべてを、
プラクリティの力によって、私は繰り返し出現させる。」
(バガヴァッド・ギーター第9章7・8節)

私たちの宇宙が消滅したとき、それは、新しい宇宙の始まりを意味するのかもしれません。

[1] T.Sonoda, Front. Appl. Math. Stat. 2:5 (2016)

宇宙にはなぜ人間が存在しているか

Milky Way. Night sky with stars and silhouette of a happy woman with backpack and raised up arms. Space background

「宇宙にはなぜ人間が存在しているか」
誰もが一度は考えたことがある疑問かもしれません。
かつては神学者や哲学者の領域であったこの問いに対して、現在は物理学の視点からも究明が進められています。

観測技術の向上にともなって、宇宙は人間にとって、非常に都合よく構成されていることが分かりつつあります。
現在知られている数々の物理定数の値が、わずか数%でも異なる値であったとしたら、宇宙は生まれてもすぐに消滅してしまうか、長らく生き残っても、今の宇宙とは似ても似つかない姿になっているでしょう。

現代物理学では、物理定数の値は何によって決められているのか、まだ分かっていません。
そのため、物理定数が、宇宙創世時にランダムに決まると仮定した場合、現在の宇宙は、奇跡的な確率の上になりたつことになります。
よくある例えでは、「時計の部品を箱に入れて、箱を振っていたら、いつのまにか時計(宇宙)が完成していた」といわれます。
それほど、現在の宇宙は、奇跡的な確率のもとに存在していると考えられています。

さらに、生命が生まれるためには、太陽と地球との距離、大気や水の存在など、さまざまな要因が絡み合っています。
すなわち、宇宙に人間が存在できる物理定数の値は、非常に限られた範囲にあります。

宇宙が誕生すれば、必ず人間が生まれるのでしょうか。
それとも、人間のいない宇宙も考えられるのでしょうか。

多くの神学者、哲学者、そして科学者を悩ませている問題です。

筆者は、この問題に一石を投じる、「自己相似対称(SSS)モデル」の仮説を今年5月に発表しました[1]。
このモデルでは、物理定数の値は、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の温度(波長)によって決定づけられます。
CMBは、約マイナス270℃の温度(3K)をもつ光であり、過去にビッグバンが起こった証拠となっています。
初期宇宙において、CMBはプランク温度(約1032K)の高温状態からはじまり、宇宙の膨張とともに、その温度は現在の値まで下がってきました。

SSSモデルでは、宇宙の階層構造は、CMBの自己相似形であり、各階層の大きさや時間スケールは、CMBに依存します。
宇宙の初期から終末までを、一貫した方法で記述することができ、物理定数の値は、CMBに起因している可能性を示唆しています。

SSSモデルにもとづくと、物理定数はランダムに決まるのではなく、宇宙が誕生すれば、必然的に私たちの宇宙と同じ環境が構築されます。
すなわち、「宇宙が誕生すれば、必ず人間が生まれる」可能性が高いといえます。
人間として生まれ、生きている私たちからみると、当然のことのように感じられますが、それが、科学的に立証されれば、人々の意識に大きな変化が起きるに違いありません。

[1] T.Sonoda, Front. Appl. Math. Stat. 2:5 (2016)