ウシャス・ムドラー

日の出が少しずつ遅くなり、だんだんと寒さが厳しくなる季節を迎えました。
寒い朝は、すっきりと目覚められず、動き出すことが難しく感じることが少なくありません。
インドの教えには、そんな時に勧められる、ウシャス・ムドラーというムドラーが伝わります。

ウシャスは、リグ・ヴェーダにおいてとりわけ多く崇められる暁紅の女神です。
毎朝、闇を切り開き、万物を目覚めさせるその存在は、私たちに活動を促します。
そんな女神の名前を持つこのムドラーは、自分自身の内に気力や意欲を呼び覚ますと信じられます。

ウシャス・ムドラーでは、左右の人差し指、中指、薬指、小指を交差させ、左右の親指の先端を合わせます。
この時、男性は右手が上に来るように、女性は左手が上に来るように指を交差させます。
この手の形を、下腹部のあたりで組むのがウシャス・ムドラーです。
(※左右の親指の先端を合わせずに、交差させるだけの場合もあります。)

親指は火、人差し指は風、中指は空、薬指は地、小指は水というように、5本の指にはそれぞれ5元素の象徴があります。
この5つの元素は、世界を形作るとされるものです。
それらを象徴する5本の指を組み合わせる時、創造的で生産的なエネルギーが生み出されると信じられます。

また、このウシャス・ムドラーは、下腹部のあたりにあるとされるスヴァーディシュターナ・チャクラを活性化させると伝えられるムドラーです。
生殖を司るスヴァーディシュターナ・チャクラは、創造や生産を促す力に深く関わりがあるとされます。
このチャクラの目覚めによって、自分自身の内で生命力の活性化を感じることができると伝えられます。

冬の朝だけでなく、日々を過ごす中では、気持ちが沈んだり、無気力に陥ったり、倦怠感に襲われたりすることが往々にあります。
そんな時、このムドラーの助けを借りることで、夜が明けるように、心身を目覚めさせることができるに違いありません。

毎朝、太陽が昇り、光が満ちていく朝の空には、生きるという強く美しいエネルギーを垣間見る瞬間があります。
古代の人々は、そのエネルギーを内なる世界に見出し、ムドラーを通じて崇めてきました。
こうした叡智を取り入れながら、1日1日を懸命に生きることを忘れずにいたいと感じます。

(文章:ひるま)