202、アーユルヴェーダ音楽療法入門64(用語辞典:ス)

お詫びと言い訳
しばらく間が開いてしまいました。申し訳御座いません。実は、年末年始、酷い「気管支炎」に苦しんでいました。感染症ではなく、二年近く楽器製作を頑張りすぎて、ベビーパウダーほどに細かい大鋸屑(木の粉)やシンナー、剥離材の気化を吸い込んだ無理がたたったようです。内視鏡検査もしましたがお医者さんも「良く分からない(極端な重篤な所見は無い)」とのこと。ところが、仮眠中に「息が止まって飛び起きて、指を喉に突っ込んで解除」というトンデモないことが八回以上もあったので、流石に「気分感情思考」は、かなり落ち込んでいました。それだけならば、むしろ、論理思考を活性化させる原稿書きで元気になれそうですが、咳が止まらないだけでなく。人生初の強烈な咳で、肋骨にヒビが入ってしまい、デスクに座っても咳と肋骨の痛みで集中出来ないという有様でした。
この体験と共に、やむなくお世話になった町のお医者さんの化学製剤、効かなかったり効き過ぎたり、効いたけれどタイミングと方向性が違ってむしろ苦しかった漢方や生薬。改めて我が身で更に学びました。
何時もご高読下さる方、ご愛読しているとおっしゃって下さった方々、そして、何時も(保護猫の看病などに忙殺されることがしばしばなので)温かく見守って下さるシーター・ラーマさんに、心よりお詫びと感謝をお伝えいたします。申し訳御座いません。ありがとう御座います。
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用語辞典:ス

スークシュマ:
10(20)の構成物質(力、性質、存在原理も意味する)「10(20)グナ」のひとつ。「微性」。

スークシュマ・シャリーラ:
ある程度解剖学的である「人間の体を三層に分別する:トゥリ・シャリーラ」のひとつ。中間層にある「精神層」最も外側の「ストゥーラ・シャリーア:目に見える身体構造(皮・肉・臓器・血管など・骨)」の内側にあるとされる。字義的には「微細層(部分、体)」。

スークタム:
ヒンドゥーの賛歌のひとつ。神々(一曲は一柱を選んで歌う)の賛辞を歌う。現行の讃歌では、最も伝統的なもののひとつで、現在でも「二音唱法」で歌われ、「二音唱法」の中でも、より古いスタイルで歌われることが多い。※

スネーハ(フ、ホ):
「油性」。「10(20)グナ」とは別な属性を意味するという解釈もあれば、「10(20)グナ」のひとつ「スニッダ」と同一視する解釈もある。スニッダ(後述)がより「あぶら性」的なのに対し、スネーハは、必ずしも化学的に「脂肪・油分」を意味していない場合も少なくない。

スマラナ(ム)
ヒンドゥーの賛歌のひとつ。神々(一曲は一柱を選んで歌う)の御名を唱える。字義は「記憶・回想・想起」で、「神を忘れては居ない」と伝える。儀礼の冒頭に歌われ、伝統的には、より古い「二音唱法」であったが、近現代では七音で歌われたり、キールターンのように主唱者と群集が掛け合いで歌うようなことが増えた。※

スムリテ:
「記憶力」

スニッダ:
10(20)の構成物質(力、性質、存在原理も意味する)「10(20)グナ」のひとつ。「油性」

スパンダ(ナ):
1)振動。
どちらかと言うと「反復運動」に近い。
2)アーユルヴェーダ病態・病理学に於いては「痙攣」「心拍数の上昇(高血圧)」についても言う。

スパルシャ:
1)インド古代古典音楽に於ける装飾音(装飾法)のひとつ。「前打音=主要な音の直前に軽く触れるように鳴らされる」
2)アーユルヴェーダ医学に於ける「感覚器官(機能)」「触覚」「皮膚感覚(転じて皮膚を言うことも)」。

スピリチュアル:
通常、とても楽に簡単に用いられている語ですが、極めて、翻訳が難しい語のひとつ。日本でこれを「精神世界をテーマにしたもの」としたのは、1970年代に出版社が画策したブック・フェアーでのこと。同様に世界的にも商売やご利益宗教のご都合で語られることが多い。本来文字通りにより正しく理解すれば、「Kosha(鞘)論」に於ける、「心の領域(とその関連の文物、出来事)」であり、古代ヴェーダ科学では、その内側の「魂の領域」と合わせて説かれることが多いのは、紀元前の人間が悟性豊かで信心(アニミズム的な)深かったからの他ならず、近現代の人間のように「最も外側の鞘:気分・感情」で、「心が動いた」としたがる風潮に於いて、「果たしてスピリット(心)は存在(健康的に活性化している)しているのか?」と問われれば、極めて懸念され、必然的に巷の「スピリチュアル」の主流の感覚も、その実は、「気分感情世界」というべきかも知れない。

スラクシュナ:
10(20)の構成物質(力、性質、存在原理も意味する)「10(20)グナ」、及び「3オージャス(生命力)のひとつ。「滑性」。

スーリヤ:
「太陽神」。ブラフマン教~仏教~ヒンドゥー教には、少なくとも六柱の「太陽神」が在るが、スーリヤは、最も新しい太陽神。言い換えれば、亜大陸の宗教の変遷を生き抜いた太陽神とも言える。(詳しくは当連載・当用語辞典後半の「タ行:太陽神」を参照されたい)。そのような、神々の混乱と変遷の中で、スーリヤの起源については諸説が乱立する。ブラフマン教時代は、一時期インドラに並ぶ力を持った。ヒンドゥー時代には、シヴァ、ビシュヌに圧倒された。しかし、ブラフマン教初期に太陰教を駆逐した太陽教の中心としての権威は密かに継承されているとも考えられる。

スール:
「音」のこと。→「スワル」参照。

スール・バハール
ベース・シタールのこと。楽聖ターンセン(16c.)の一族:ウムラオ・カーン(19c.)が、「甲乙付けがたい二人の一番弟子」の一方に「小型シタール」を特注して与え、他方に「大型シタール」として、この楽器を創案して与えたのが始まりと言われる。前者は、その頃既に宮廷器楽の地位を得ていた、マスィート・カーンのスタイルやレザ・カーンのスタイルの(新様式の)器楽を弾いたが、後者は、ターンセン一族の真骨頂である「ドゥルパド様式」の器楽を弾いた。現代では、この楽器を「単なる低音シタールのように弾き」「ドゥルパッド」の香りすらない演奏者が幅を利かせている。

スール・ダース:
16世紀の聖人で、バクティー(献身)運動期のヒンドゥー讃歌「バジャン」の四大詩人のひとり、四大詩人の中では、唯一の盲人。所謂ペンネームに近いこの名前は「スール(音)・ダース(僕)」の意味。著書のタイトルもまた「スール(音の)・サーガル(海)」と、音楽的な呼称にこだわった。

スール・マルハール:
北インド古典音楽の旋法(Raga)のひとつ。上記の聖人スール・ダースが創作したとして継承され「スールダースィ・マルハール」が正式名称。中世後期から混同されがちな、いずれも極めて古い「マルハール(マッラール)・ラーガ」と「カナラ(カンハラ)・ラーガ」であるが、このスール・マルハールは、本来のマルハールの性質にかなり正確に準じている。

スール・マンダール:
箱型のハープ。→スワル・マンダール

スール・シュリンガール
中世後期(18c.)に創作された宮廷音楽の弦楽器。18世紀に、北インドのデリー北東地域ローヒルカンドに展開するアフガン傭兵軍閥の楽師が、デリー宮廷楽師の主流派ターン・セン一族に師事が許され、アフガン弦楽器ルバーブをインド音楽の多彩多様な装飾音が出る様に工夫した新楽器サロードを創作した。(奇しくも筆者:若林の師匠の家系だった)そのセニ家の師匠は、ターン・センが中央アジア弦楽器ルバーブを改造したセニ・ラバーブで、サロードの弟子に教えたが、程なく「羨ましい」と思い、弟子の知恵も借りてセニ・ラバーブのガット(羊腸)弦を金属弦に替え、板張の指板を金属板に替えた。この二点は弟子の「サロード考案(アフガン・ルバーブの改造点)」に習ったが、セニ・ラバーブの皮張り表面を、木製に替え、駒の沈み込みを防ぎアフガン・ルバーブ、サロードには無いインド原産の「サワリ駒」をセニ・ラバーブのまま起用した。アフガン・ルバーブ、サロードが床に平行に横に構えるのに対し、この楽器は、セニ・ラバーブ同様、縦に構える(棹上部は左肩で支える)。「シュリンガール」は、サンスクリット系の語彙で、「華麗・装飾」の意味だが、創作者やイスラム教徒は「スリンガール」「スィンガール」と発音する。

スロータ(ス):
体の中を縦横無尽に流れる様々な「管」。「ナーディー」がより形而上的であるのに対し、スロータスは、「血管・リンパ管・神経」など、解剖学でも確認出来るものが多いが、それでも尚、現代医学ではまだ認識されていないものもある。

スシュルタ・サンヒター:
アーユルヴェーダの三大経典のひとつ。ダンヴァンタリ神から直接教えを受けたとされる聖人スシュルタの弟子との禅問答を綴った散文詩集。チャラカ・サンヒターが内科に強いのに対し、こちらは外科に重きがあるとされる。

スターナ(スターン):
「場所・在り処・座」
1)古代科学音楽(Shastriya-Sangit)の旋法構成音の中で、終止性が強い音を中心とした短い旋律句。
2)インド方位学に於ける「座とその本質」

スタンバ:
筋肉の緊張・痙攣

スティラ:
10(20)の構成物質(力、性質、存在原理も意味する)「10(20)グナ」のひとつ。「安定性・不動性」。

ストゥーラ・シャリーラ:
ある程度解剖学的である「人間の体を三層に分別する:トゥリ・シャリーラ」のひとつ。最も外側の「目に見える身体構造(皮・肉・臓器・血管など・骨)」を言う。字義的には「粗雑層(部分、体)」。

スタヴァナム:
ヒンドゥーの賛歌のひとつ。神々(一柱を選んで)への賛辞を歌う。主に南インドで盛ん。本来伝統的な讃歌である筈だが、現代では「七音唱法(普通の歌)」で占められ、伝統的なスタイルを聴くことが難しい。※

ストータ(トゥ)ラ(ム):
ヒンドゥーの賛歌のひとつ。神々(一柱を選んで)への賛辞を歌う。南北インドに伝統的に存在するが、特に南インドで盛んで、名称は末尾に「ム」で締められ「ストータラム」と呼ぶ。通常32音節で、比較的長い。伝統的には「三音唱法」であったが、中世以降は、「五音音階」で歌われる。※

ストゥーティー:
ヒンドゥーの賛歌のひとつ。神々(一柱を選んで)への賛辞を歌う。主に北インド。比較的短い。比較的伝統的な「五音唱法」が多い。聖音Omは最後のみ。※

ストロータ:
ヒンドゥーの賛歌のひとつ。神々(一柱を選んで)への賛辞を歌う。伝統的な「三音唱法」のようだが、その音律が異なり長調的に明るく聴こえる。※

スワーパ(プ):
「痺れ」。感覚(触覚)機能「スパルシャ(前述)」が麻痺した状態。

スワプナ:
「夢」「睡眠」「熟睡」。
古代から、人間の悩みのひとつに「睡眠障害」があった。アーユルヴェーダ内科療法でも、音楽療法でも、この語は頻繁に現われる。「睡眠」は、別に「ニドゥラ」という語もある。

スワル:
「音」のこと。より正確には「楽音」。
ヴェーダ科学では、音は「宇宙の波動(ナーダ)」であり、可聴を「アーハタ・ナーダ」非可聴を「アナーハタ・ナーダ」と分別する。ヴェーダの音楽起源論では、「教育された正しい音楽家が、正しく声楽、器楽を奏でるとアナーハタがアーハタに転化される」とも言う。スワルは、それらから得た「サレガマパダニ」の七つの楽音のこと。音楽理論上では、紀元前~7世紀頃の「オクターヴを22の微分音に分割したものから得た七音(当初三通りの配分があった)」を言った。古代音楽が中世イスラム宮廷芸術古典音楽に転じた以降、口語的に「スール」と発音されることが多い。「スワルはサンスクリット系ヒンディー語」「スールはサンスクリット系ウルドゥー語」と解釈しても良いだろう。

スワル・マンダール
台形の箱に調律された弦を多数張り、もっぱらグリサンドで奏でる「ツィター属の撥弦楽器」「箱型ハープ」。字義的には「音のマンダラ(群れ)」。中世宮廷音楽の新声楽「カヤール」の歌手がしばしば自らで奏でる。希に単音奏法で旋律を奏でる器楽奏者も居た。

スワーサ:
「呼吸」

スウェーダ:
汗。アーユルヴェーダでは、汗も老廃物(マーラ)に数えられる。デトックス至上主義であるかのような日本のアーユルヴェーダでは、マーラは、忌み嫌われる、まるで穢れた、汚いものという観念が主だが、本来の「マーラ(マール)」は、単に「物質」の意味で、「物・商品・富」も「マール」。ちなみにLに母音が付くと全く異なる意味の「花輪・首輪」となる。そもそも老廃物・排出物に対し「穢れた・汚い」という観念が日本人と古代インド人ではかなり異なることも考慮すべきである。
一方、「分泌物・分泌液:スラーヴ(スルタ)」の総称には「スウェーダ」を含まない代わり(含める解釈もある)に、膿などを含めることが多い。

※「ス」ではじまるヒンドゥー讃歌の総論
膨大な種類がある「ヒンドゥー讃歌」には、「マントラ起源」のものが基本にあり、ヴェーダ・マントラの伝統的歌唱法「単音、二音、三音、四音」を基本に、より古く伝統的な「五音唱法」があった。この歌唱法に則って、「韻律の数、形」「韻文、散文の異なり」「賛辞の文言のスタイル」「祈祷のどの場面で歌われるか」などが厳格に決められていたことで、その形式名が意味を持った。しかし、現代では、いずれも伝統的な歌詞だけが継承され、その歌唱法は極めて自由(好き勝手)に歌われることが多い。現地の敬謙な信者でさえも、変貌した多様な讃歌を正しく分別出来る人が激減している。明らかな伝統の崩壊と言わざるを得ない。しかも、「音楽的に聴いて心地良い」などと言う人間本位な感覚の台頭も問題視すべきであろう。(人間本位で神々への賛辞というのは本末転倒)

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本連載は、インドスピリチュアル・グッズweb-Shopのシーターラーマさんのご好意で長年連載を続けさせていただいております。皆様の応援も大きな支えです。少しでもお役に立てる内容がございましたら、ぜひ「いいね」の応援を下さいますよう。よろしくお願い致します。

昨年夏、一年ぶりの若林の新著「日本の伝統楽器(ミネルヴァ書房:19年8月20日発売)」が出ました。
「インドに関係ないじゃないか!?」と思われるかも知れませんが、無論、当書では書き切れませんでしたが、「日本の楽器→ルーツ(ペルシアとインド)」の物語の背景には、「Naga-Sadhu(裸形上人)」や「Saraswati(妙音天)派修行僧」などの活躍が大であるという解釈が存在します。機会を得る度に、その核心に迫って行きますので、どうぞ応援下さいませ。
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若林は現在、福岡及び近郊の方の「通いレッスン」の他に、全国の民族音楽・民族楽器ファンの方々にSkypeでのレッスンを実施しています。体験の為に、インド楽器とVedic-Chant、アーユルヴェーダ音楽療法の「無料体験講座」も行っています。詳しくは「若林忠宏・民族音楽教室」のFacebook-Page「Zindagi-e-Mosiqui(毎月の実施日時も掲載しています)」か、若林のTime-Lineにメッセージでお尋ね下さい。 九州に音楽仲間さんが居らっしゃる方は是非、ご周知下さると幸いです。

また、本連載コラムのテーマでも重要な、「現代人に大きく欠落している論理性」につきましては、論理力育成Mail-Lessonをご教授しています。
心と体の健康(本来のバランス力を取り戻す)の為に欠かせない。脳機能を本来の姿・力に戻すための講座です。ヨガ、瞑想、アーユルヴェーダ音楽療法の全てにとっても、極めて重要な基本です。論理力を高めると、世界観さえ変わって(むしろ神秘・スピリチュアルなことが、新鮮に敏感に深く理解出来るようになります)来ます。
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お気軽にメールか、Facebookメッセージでお尋ね下さい。
chametabla@yahoo.co.jp 若林

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また、Hindu Chant講座Vol.1 https://youtu.be/_UPLRjMFFpo 「インド音楽旋法ラーガ・アンケート」https://youtu.be/wWmYiPbgCzg をはじめとした多くの「紹介動画」をYou-Tubeにアップしております。是非ご参考にして下さいませ。

(文章:若林 忠宏

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若林忠宏氏によるオリジナル・ヨーガミュージック製作(デモ音源申込み)
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