シヴァ神と象の悪魔

世界の安寧を願い瞑想に耽るシヴァ神は、破壊神として、大地を揺さぶるような荒々しい姿を見せることがあります。
その姿の中には、自らが倒した象の悪魔の上で舞踏する、ガジャーンタカという姿があります。
倒した象の皮を引き裂いて身にまとうシヴァ神は、カリー・チャルマームバラ(象の皮を身にまとう者)という名前で崇められることもあります。

象の悪魔を倒すシヴァ神には、さまざまな神話が伝わります。
その多くは、傲慢で横柄な態度によって世界に混乱をもたらす悪魔を、超然と倒すシヴァ神の姿を伝えています。
たとえば、ヴィシュヌ神の化身であるモーヒニーとの神話があります。

深い森に住む賢者たちは、非常に尊大になり、いつしか神のように振る舞うようになりました。
そんな賢者たちに教訓を与えようと、シヴァ神はビクシャータナ(裸の若い托鉢士)に、ヴィシュヌ神はモーヒニー(美女)になりすまし森に入ります。

賢者たちがモーヒニーに夢中になっている間、賢者の妻たちはビクシャータナに夢中になりました。
賢者たちは魔術を使い、ビクシャータナを倒そうと力強い象を生み出します。
しかし、ビクシャータナとしてのシヴァ神がこの象を倒し、賢者たちに神の力を見せつけると、賢者たちは自分たちの無知に気づいたと伝えられます。

どっしりと大きな身体を持つ象は、神々の王であるインドラ神の乗り物であり、富や力の象徴と見なされてきました。
ラクシュミー女神の両脇では、2頭の象がその鼻で、肥沃や豊穣の象徴である水をラクシュミー女神に降り注ぎます。

富や力を手にする中で、私たちはいつしか我執にとらわれ、自分自身の内に輝くシヴァ神という純粋な意識を忘れていきます。
時間に限られた富や力を追いかける私たちの心は、常に揺れ動き、休まることがありません。
偉大な時として崇められるシヴァ神は、私たちの内なる世界に混乱をもたらす、そんな象の悪魔を倒します。

象は非常に賢い動物といわれます。
シヴァ神の息子であるガネーシャ神は、英知の神として、その象の頭を持ちます。
私たちは常にその英知を用いて、富や力に溺れることなく、時を超越した永遠の幸福に気づいていなければなりません。
破壊神として、私たちの内外に潜む悪の性質を破壊するシヴァ神を礼拝することにより、その永遠の幸福の中で、世界の安寧を築く者になれるはずです。

(文章:ひるま)