ルドラ・ムドラー

世界を破壊し新たな秩序を生み出すシヴァ神は、この地において、時に暴風雨として激しく吹き荒れることがあります。
荒ぶるその姿は、「恐ろしい」を意味するルドラという御名で崇められてきました。
一方で、万物に慈雨を降り注ぎ新たな創造を促すシヴァ神は、この上ない吉祥の徴でもあります。

ルドラはシヴァ神の怒りの性質であり、火のエネルギーと同質と考えられてきました。
ルドラとしてのシヴァ神は、この世界における物質的な生活を破壊し、再建する神格です。
ヨーガにおいては、このルドラのエネルギーを自分自身の内に呼び覚ますさまざまな実践が伝えられます。
そのひとつが、ルドラ・ムドラーです。

ルドラ・ムドラーは、火の要素を持つマニプーラ・チャクラを活性化すると伝えられるムドラーです。
臍の奥深くにあると伝えられるマニプーラ・チャクラは、「宝石の都市」を意味し、私たちの中心で黄金色に輝いていると信じられます。
それは、太陽があらゆる生命にエネルギーを注ぐように、生命活動を司るエネルギーの中枢です。

ルドラ・ムドラーは、火と風と地を象徴する、親指と人差し指と薬指の先端を合わせて形作るムドラーです。
親指は火、人差し指は風、中指は空、薬指は地、小指は水というように、5本の指にはそれぞれ5元素の象徴があります。
また、私たちの身体を司るエネルギーの性質には、火の要素(ピッタ)、風の要素(ヴァータ)、地の要素(カパ)という3つがあるとされます。
このムドラーを形作る時、火の要素によって風の要素と地の要素の均衡が維持され、マニプーラ・チャクラが活発になると伝えられてきました。

マニプーラ・チャクラの活性化は、ルドラとしてのシヴァ神のエネルギーの覚醒を意味します。
その時、物質的な快楽に対する燃えるような欲望は焼き尽くされ、純粋な意識として自由になることができると信じられてきました。

このムドラーを通じて自分自身の中心を瞑想することは、覆われた宝石を見つけ出すような喜ばしい感覚です。
その実践を通じては、内なる世界を照らす純粋な意識に気づくことができるはずです。
そうして個々が困難を超越し、束縛から解放される時、世界にはかつてない吉祥という光がもたらされるに違いありません。

(文章:ひるま)