クリシュナとキリストの共通点

クリシュナは、紀元前に実在したとされるヴィシュヌの第8番目の化身です。そして、イエス・キリストは、西欧を中心に救世主と崇められる「神の子」です。しかし、クリシュナとイエス・キリストにはさまざまな類似点があることは、以前から指摘されていました[1]。
・両者の名は、ともに「K」と「R」の音で始まっています(「クリ」と「キリ」)。
・クリシュナは牢獄で、キリストは馬屋で生まれ、ともに子を産む場所としては不適切な場所でした。
・両者ともに王族の血筋を継いでいましたが、正義を復興するために生まれた「神の子」に、当時の王が自らの地位を脅かされることを恐れ、同時期に生まれた子を皆殺しにしようとした点なども一致しています。
そして、両者とも、後世に「バガヴァッド・ギーター」、「福音書」として、彼らの教えを記した書物を残しています。
ここで「バガヴァッド・ギーター」(上村勝彦訳)と、新約聖書の中から、同様の記述を比較してみましょう[3,4]。
「アルジュナよ、私は万物の心中に宿る自己(アートマン)である。私は万物の本初であり、中間であり、終末である。」(ギーター / 10章20節)
「神である主、今おられ、かつておられ、やがて来られる方、全能者がこう言われる。「わたしはアルファであり、オメガである。」」(ヨハネの黙示録 / 1章8節)
ここでは、神にはじまりもなければ終わりもないと述べられています。
「感官には、それぞれの対象についての愛執と憎悪が定まっている。人はその二つに支配されてはならぬ。それらは彼の敵であるから。」(ギーター / 3章34節)
「わたしたちは、十字架につけられたキリストを宣べ伝えています。すなわち、ユダヤ人にはつまずかせるもの、異邦人には愚かなものですが、」(コリントの信徒への手紙一 / 1章 23節)
「しかし、あなたに対して少しばかり言うべきことがある。あなたのところには、バラムの教えを奉ずる者がいる。バラムは、イスラエルの子らの前につまずきとなるものを置くようにバラクに教えた。それは、彼らに偶像に献げた肉を食べさせ、みだらなことをさせるためだった。」(ヨハネの黙示録 / 2章 14節)
真理を実現するその過程には、さまざまな障壁があり、クリシュナもイエスもそれには十分注意するよう述べています。
また以下の例では、クリシュナとイエスの教えの要点がほぼ同じものであることが分かります。
「あなたは嘆くべきでない人々について嘆く。しかも分別くさく語る。賢者は死者についても生者についても嘆かぬものだ。」(ギーター / 2章11節)
「イエスは言われた。「わたしに従いなさい。死んでいる者たちに、自分たちの死者を葬らせなさい。」」(マタイによる福音書 / 8章 22節)
「私は万物に対して平等である。私には憎むものも好きなものもない。しかし、信愛をこめて私を愛する人々は私のうちにあり、私もまた彼らのうちにある。」(ギーター / 9章29節)
「神は人を分け隔てなさいません。」(ローマの信徒への手紙 / 2章 11節)
「敵と味方に対して平等であり、また尊敬と軽蔑に対しても平等であり、寒暑や苦楽に対しても平等であり、執着を離れた人、……彼は私にとって愛しい。」(ギーター / 12章18-19節)
「しかし、わたしは言っておく。敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい。」(マタイによる福音書 / 5章 44節)
「梵天の昼は一千世期で終わり、夜は一千世期で終る。それを知る人々は、昼夜を知る人々である。」(ギーター / 8章17節)
「愛する人たち、このことだけは忘れないでほしい。主のもとでは、一日は千年のようで、千年は一日のようです。」(ペトロの手紙二 / 3章 8節)
もちろん、両者には異なる部分もあります。イエス・キリストは独身で子がいなかったといわれるのに対して、クリシュナには1万6千人の妻があり、18万人の子をもうけたといわれています。これなどは、もっとも大きな違いのひとつでしょう。
しかし、一見つながりのないような両者に共通点があることは、どの宗教も、じつはひとつの真理に基づいているからに他ならないのでしょう。
お互いの共通点を見つけることは、お互いの良さを理解するひとつのきっかけにもなります。
クリシュナを知らないキリスト教徒でも、このような類似点を知ることでクリシュナに親しみが湧いてくるのではないでしょうか。
明日8月24日は、クリシュナが降誕された日にあたります。
みなさまにとって、祝福の多い一日となりますように。
参考文献
[1]インド神々の事典, p102, 学研, 2008
[2]上村勝彦訳, バガヴァッド・ギーター, 岩波文庫, 1992
[3]Linkages between two God-men saviors: Christ and Krishna, http://www.religioustolerance.org/chr_jckr.htm
[4]Specific similarities between the lives of Jesus and Krishna, http://www.religioustolerance.org/chr_jckr1.htm