カラナ・ムドラー

先が見えず混迷する社会において、心身ともに不安を感じる日々が続いています。
溢れる情報に頭がいっぱいになり、心が落ち着かなくなることも少なくありません。
そんな中で迎える仏陀の降誕祭に、心の平安と向き合う機会を与えられています。

深い苦悩を経験し悟りを開いた仏陀の穏やかな表情には、泥沼の環境で美しい花を咲かせる蓮のような崇高さを垣間見る瞬間があります。
その静謐な姿から滲み出る平安に、何よりも深い安らぎを与えられるようです。
そんな仏陀が見せるさまざまな姿のひとつに、カラナ・ムドラーを示す姿があります。

カラナ・ムドラーは、心に平和や静寂をもたらし、前向きなエネルギーを高めると信じられるムドラーです。
悪を追い払うムドラーとも呼ばれるように、不安や恐怖といった、心が生み出すさまざまな障壁を取り除くことが、このムドラーの最大の恩恵といわれます。

カラナ・ムドラーでは、右手の平を外側に向け、胸のあたりに掲げます。
人差し指と小指は伸ばしたまま、中指と薬指をゆったりと曲げます。
薬指は曲げたまま、中指と親指の先端を合わせます。
この手の形がカラナ・ムドラーです。

親指は火、人差し指は風、中指は空、薬指は地、小指は水というように、5本の指にはそれぞれ5元素の象徴があります。
このムドラーにおいて、親指(火)と中指(空)を合わせる時、火のエネルギーによって雑念が焼き払われ、心には広い空間が生まれるように感じます。

さまざまな思考や感情が目まぐるしく湧き立つ心を落ち着かせることは、容易いことではありません。
ムドラーは、自分自身の内なる世界からその周囲まで、取り巻くエネルギーを改善し向上させる力があると伝えられます。
意識的にその力を用いることで、落ち着かない心は清浄になり、どのような状況においても前向きに過ごすエネルギーを得ることができるはずです。

社会に不安が広がる今、一人ひとりが心に余裕を持ち、穏やかに過ごすことが何よりも欠かせません。
その心が生み出す平和は、地球全体を癒すことができるはずです。
古代から受け継がれてきた教えを実践しながら、仏陀が示す美しい平和が世界に広まることを願い続けたいと感じます。

(文章:ひるま)