クベーラ神の苦行

数日間に渡りたくさんの光が灯されるディーワーリーの祝祭の中で、とりわけ盛大な祝福が行われるダンテーラス。
富の祝祭として祝福されるダンテーラスでは、財宝の神であるクベーラ神への祈りが捧げられることが多くあります。

クベーラ神は、10の方角を守るダシャ・ディクパーラの1柱に数えられ、北方を守る役割を担います。
インドでは、多くの富が流入するように、住居の北側から障害物を取り除き、広い空間を設けることがあります。
また、北向きに開く金庫を置いておくと、クベーラ神が富をいっぱいに満たしてくれるともいわれることがあります。

そんなクベーラ神は、鬼神であるヤクシャの主とされ、魔王のラーヴァナとは異母兄弟にあたります。
鬼神であったクベーラ神が、財宝の神として人々から広く崇められるようになった理由には、さまざまな神話が伝わります。

一説に、かつてクベーラ神は、ランカー島を支配していたことがありました。
しかし、ラーヴァナと対立した際にランカー島を奪われると、世界を放浪し始めます。
やがて、シヴァ神が住まう北のカイラーサ山に辿り着きました。

シヴァ神は、泥棒や邪鬼といった社会が悪と見なすような存在にも祝福を与える慈悲深い神です。
そんなシヴァ神が住まう北のカイラーサ山に落ち着いたクベーラ神は、シヴァ神への苦行を熱心に行うようになりました。
その苦行にシヴァ神は喜び、財宝の神としての地位と、自分自身が住まう北方を守る重要な役割を与えます。
それはすべて、クベーラ神の苦行による賜物でした。

善の質と悪の質は、光と闇に例えられ、誰しもの内に存在しています。
鬼神であったクベーラ神は、苦行により、財宝の神として広く崇められるようになりました。
どんな存在も、神々へ心を定めることにより、悪の質である闇が払われ、善の質である光に満たされていくということを伝えているようです。

ダンテーラスが祝福されるのは、日没が早まり、暗い夜が長くなる時です。
この時、悪の質である闇に支配されることがないように、光を灯して、内なる善の質を照らしたいと感じます。
その行為は、私たちを明るい道に導き、より豊かな富を注いでくれるに違いありません。

(文章:ひるま)