バイラヴァ・ムドラー

静かな夜が長くなり、瞑想の深まりを感じる季節となりました。
古代より、悟りを得る手段として大切に受け継がれてきた瞑想は、現代では、心身の健康のために実践されることも多くあります。
さまざまな方法で取り組まれるその瞑想において、広く勧められるムドラーがあります。

左右の手を重ねるこのムドラーは、バイラヴァ・ムドラーと呼ばれます。
瞑想において、調和の取れたエネルギーを生み出すムドラーとして実践されてきました。
このムドラーは、右手を上にして重ねる時、バイラヴァ・ムドラーと呼ばれ、左手を上にして重ねる時、バイラヴィー・ムドラーと呼ばれます。

バイラヴァは、シヴァ神が化身した恐ろしい姿として知られます。
そして、バイラヴィーはバイラヴァ神の妃にあたります。
シヴァ神がバイラヴァ神として姿をあらわしたのは、一説に、欲望にまみれ驕り高ぶった態度を見せたブラフマー神を罰するためであったと伝えられます。
ヴィシュヌ神とブラフマー神の間で、誰が一番崇高な存在であるかと対立が生じた時のことでした。

バイラヴァ・ムドラーで重ねる右手と左手は、相反するものの象徴です。
それは、清浄と不浄、陰と陽、男性と女性、または自分と他者、さらには梵と我とも考えられます。
その相反するものが対立する時、私たちはさまざまな困難に直面します。
とりわけ、そこに生じる欲望は強敵で、私たちを大きく混乱させることも少なくありません。
バイラヴァ神の礼拝は、こうした対立や欲望を鎮め、人生に生じる問題や苦難を取り除くと信じられてきました。

実際、瞑想の中で相反するものの象徴である左右の手を重ねる時、ぶつかり合うものがない、穏やかな心地良さに包まれることがあります。
このムドラーを通じて全身で感じるその調和は、至福のエネルギーとなって心身を巡るものでした。

意識に強く働きかけるムドラーの実践は、自分自身の内なる世界だけでなく、その周囲に至るまで、より良いエネルギーを生み出すと伝えられます。
こうしたムドラーの実践を通じて、自分自身の持つエネルギーを上手に活用することを学びたいと感じます。
その学びの中では、より穏やかで豊かな道を歩み続けることができるはずです。

(文章:ひるま)