サラスワティー女神とガンダルヴァ

やわらかな陽が差し込み、草花の香りが満ち始める春の季節。
心が浮き立つそんな春の訪れは、ヴァサント・パンチャミーとして、サラスワティー女神への祈りが捧げられます。
ヴァサント・パンチャミーは、学問と芸術の女神として崇められるサラスワティー女神が降誕した時と伝えられます。

光が満ちていく春の訪れに広く祈りが捧げられるサラスワティー女神には、ある神話が伝わります。
それは、天上の音楽師といわれるガンダルヴァにまつわる神話です。
ガンダルヴァはもともと、花の香りから生まれた半神であったと伝えられる存在です。

かつて、ガンダルヴァは神々から世話を任されていたソーマの植物を盗んだことがありました。
ソーマの植物は生命の秘薬ともいわれ、ソーマから作られたソーマ酒を飲むと、不死を得られると伝えられるほど重要視されるものでした。
そんな大切なソーマが盗まれたことに、神々は激怒します。
そして、ソーマを取り戻すことを約束したのがサラスワティー女神でした。

サラスワティー女神はガンダルヴァの庭に行き、手にする弦楽器のヴィーナーで魅惑的な音楽を奏で始めます。
魅了されたガンダルヴァは、その音楽を与えて欲しいとサラスワティー女神に懇願しました。
サラスワティー女神は、ソーマを神々に返せば音楽を与えると約束をします。

ガンダルヴァはソーマを神々に返すと、サラスワティー女神に音楽を学び始めます。
ガンダルヴァが奏でる音楽は、人を酔わせるどんな物よりも心を奮い立たせる力を持つようになり、やがて天上の音楽師になったと伝えられます。

一説に、ヴィーナーの弦を操り音楽を奏でることは、知識によって感情を操り、人生を美しく彩ることを意味するといわれることがあります。
さまざまに揺れ動く感情を操ることは、決して簡単なことではありません。
しかし、学びを深め識別力が高まる時、真実を見抜く力が育まれ、感情を操ることも容易くなるはずです。
その時、私たちは感情の喜びを超えた、真の喜びで人生を彩ることができるに違いありません。

光が満ち始める春の訪れは、サラスワティー女神を礼拝し、その力に繋がる吉祥な時です。
そうして無知の暗闇を払拭し、真の喜びという光の中で生きることをどんな時も心がけたいと感じます。
春の訪れとともに、皆様にもサラスワティー女神の恩寵がありますように、心よりお祈り申し上げます。

(文章:ひるま)

参照:Goddess Saraswati And The Gandharvas