マドゥとカイタバ

2021年は8月22日に、神聖なシュラヴァナ月の満月を迎えます。
この満月は、ヴェーダの母であるガーヤトリー女神の降誕祭が祝福される時でもあり、ヴェーダの学習に取り掛かる重要な日として崇められてきました。
それは、悪魔に盗まれた知識の象徴であるヴェーダが取り戻され、暗闇に飲み込まれていた世界が光に包まれた時とされるためです。

ヴェーダを取り戻したのは、馬の頭をしたヴィシュヌ神の化身であるハヤグリーヴァ神でした。
そして、ヴェーダを盗んだとされるのが、マドゥとカイタバと呼ばれる悪魔です。
このマドゥとカイタバは、ヴィシュヌ神の両耳から流れ出た耳垢と伝えられます。

静寂の大海の中で、ヴィシュヌ神が大蛇のアナンタの上に横たわっていた時のことでした。
ヴィシュヌ神の両耳から耳垢が流れ出ると、それはマドゥとカイタバとして、大海を糧に成長していきます。
その過程で、マドゥとカイタバは世界を育む女神を熱心に礼拝すると、自ら死期を選ぶことができるという恩恵を手に入れました。
死という恐怖から解放されたマドゥとカイタバは、その力に酔いしれ、ヴェーダを盗むなど世界を恐怖に陥れたと伝えられます。

ヴィシュヌ神の両耳から流れ出た後、大海を糧に成長していく悪魔のマドゥとカイタバは、人生という大海の中でもがき苦しむ私たちを象徴するといわれることがあります。
それは、ヴィシュヌ神という真実から遠く離れ、進むべき道を誤り、さまざまな困難に直面する私たちの姿です。

魅惑的な甘い言葉に魅了される私たちは、ふとした瞬間に真実を見失うことがとても多くあります。
そうして次第に真実から遠く離れていくと、自我や欲望、疑念や不安が大きく膨れ上がり、正しい道が見えなくなります。
光を失ったその暗闇の中では、大変な苦難に直面することが少なくありません。

そんな私たちは、真実から離れることがないように、常に真実を聞き続ける必要があります。
特に、ガーヤトリー・マントラは私たちを真実に導くとされる偉大なマントラです。
こうした叡智を繰り返し耳にする時、私たちは常に真実とともにあることができるに違いありません。
ガーヤトリー女神の降誕祭が祝福されるこの時に、改めてこの偉大な叡智に耳を傾けたいと感じます。

(文章:ひるま)