バガヴァッド・ギーター第4章第31節

インド古典中もっとも有名なバガヴァッド・ギーターの原典講読です。
インドの霊的文化の支柱となる本書を、サンスクリット語の学習をしながらお楽しみください。

यज्ञशिष्टामृतभुजो
yajñaśiṣṭāmṛtabhujo
ヤジュニャシシュタームリタブジョー
祭祀の残饌という甘露を味わう者たちは

yajñaśiṣṭa【中性】祭式の供物の残余、祭祀の残饌
amṛta【中性】不死;不滅者の世界;諸神の飲料、神酒、甘露;療治(の一種);薬;供儀の残物;水;乳;光線
bhujas【女性・複数・主格 bhuj】効用、利益、有利;享受;所有 【形容詞】享受する、食う;耐え忍ぶ、経験する;肉欲的に享楽する;支配する、治める;〜の報いを受ける
→yajñaśiṣṭāmṛtabhujas【女性・複数・主格、所有複合語】[〜らは、〜らが]祭祀の残饌という甘露を享受する、甘露なる祭祀の残饌を味わう

यान्ति ब्रह्म सनातनम् ।
yānti brahma sanātanam |
ヤーンティ ブラフマ サナータナム
永遠のブラフマンに赴く

yānti【三人称・複数・パラスマイパダ・現在 √yā】[彼らは〜、それらは〜]動く、いく、歩く、赴く;前進する、行進する;従う
brahma【中性・単数・対格 brahman】[〜に、〜を]聖智に満ちた者、婆羅門;祭官とくにヴェーダ祭式を総監する祭官;ブラフマンを神格化した最高神、梵天、宇宙の創造者として保持者ヴィシュヌおよび破壊神シヴァとともにトリムルティを形成する神格;理性
sanātanam【中性・単数・対格 sanātana】永続する、永遠の、永久の、恒常の

नायं लोको ऽस्त्य् अयज्ञस्य
nāyaṁ loko ‘sty ayajñasya
ナーヤン ローコー スティ アヤジュニャッスヤ
祭祀を行わない者にとって、この世界は存在しない

na【否定辞】〜でない
ayam【男性・単数・主格、指示代名詞 idam】[〜は、〜が]これ
lokas【男性・単数・主格 loka】[〜は、〜が]空間、余地、場所;地方、地帯、国;世界、宇宙の区分;天;地;人類、一般の人民、国民;男子(複数);(複)団体、仲間;日常生活、慣例、世事、俗事;視ること
asti【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 √as】[彼は〜、それは〜]ある、存在する、実在する
ayajñasya【男性・単数・属格 ayajña】[〜の、〜にとって]供犠なきこと;供犠を行わないこと 【形容詞】祭祀を行わない

कुतो ऽन्यः कुरुसत्तम ॥
kuto ‘nyaḥ kurusattama ||
クトー ニヤハ クルサッタマ
ましてや他の世界があるだろうか、アルジュナよ

kutas【疑問副詞】誰から、どこから、何故に、どんなふうに、いわんや〜をや
anyas【男性・単数・主格 anya】他の、別の
※他の世界:「この世界」は「人間界」であり、天界をも含む。「他の世界」は、ブラフマンの世界、すなわち解脱を指す。(上村勝彦注)
kurusattama【男性・単数・呼格 kurusattama】[〜よ]クル族の最上者(アルジュナの別名)

यज्ञशिष्टामृतभुजो यान्ति ब्रह्म सनातनम् ।
नायं लोकोऽस्त्ययज्ञस्य कुतोऽन्यः कुरुसत्तम ॥३१॥

yajñaśiṣṭāmṛtabhujo yānti brahma sanātanam |
nāyaṁ loko’styayajñasya kuto’nyaḥ kurusattama ||31||
祭祀の残饌という甘露を味わう者たちは、永遠のブラフマンに赴く。
祭祀を行わない者に、この世界は存在しない。ましてや他の世界があるだろうか、アルジュナよ。

祭祀の残饌(プラサード)は、敬意の念を持って扱われています。祭祀の残り物である水や食物を口にすることにより、神の恩恵に与り、人々の心や意識が清められると考えられているからです。
この詩節で言われる祭祀の残饌とは、今まで述べられてきた12種類の祭祀(ヤジュニャ)の結果を意味しています。行為にはさまざまな方法がありますが、その行為に真摯に取り組み、自己の行為をブラフマンに捧げる人々は、やがて永遠なるブラフマンに到達できることが説かれています。
一方で、行為しない人は、あらゆる可能性が閉ざされてしまうことが、後半の詩節で述べられています。