バガヴァッド・ギーター第6章第44節

インド古典中もっとも有名なバガヴァッド・ギーターの原典講読です。
インドの霊的文化の支柱となる本書を、サンスクリット語の学習をしながらお楽しみください。

पूर्वाभ्यासेन तेनैव
pūrvābhyāsena tenaiva
プールヴァービヤーセーナ テーナイヴァ
実に、その前世の常修によって

pūrvābhyāsena【男性・単数・具格 pūrvābhyāsa】[〜によって、〜をもって]前のものの反復;前世の常修
tena【中性・単数・具格、指示代名詞 tad】[〜によって、〜をもって]それ、あれ
eva【副詞】実に、真に(強意を表す。しばしば虚辞として使用)

ह्रियते ह्य् अवशो ऽपि सः ।
hriyate hy avaśo ‘pi saḥ |
フリヤテー ヒ アヴァショー ピ サハ
意志にかかわらず、彼は惹きつけられるから

hriyate【三人称・単数・現在・受動活用 √hṛ】[彼は〜される、それは〜される]圧倒する、支配する、連れ去る、取り去る、運び去る、奪い去る;魅惑する;破壊する
hi【不変化辞】なぜならば、〜のために;真に、確かに、実に
avaśas【男性・単数・主格 avaśa】(他人)の意志に従わない;独立の、自由な;欲しない;自分の自由意志を有しない、(他人)の嫌がることをする
api【不変化辞】さらに、また、同様に;されど、なお
sas【男性・単数・主格、指示代名詞 tad】[〜は、〜が]これ、あれ、彼

जिज्ञासुर् अपि योगस्य
jijñāsur api yogasya
ジジュニャースル アピ ヨーガッスヤ
さらに、知ろうと欲する、ヨーガの

jijñāsus【男性・単数・主格 jijñāsu】会得・吟味しようと欲する、探求する
api【不変化辞】さらに、また、同様に;されど、なお
yogasya【男性・単数・属格 yoga】[〜の、〜にとって]ヨーガ、精神の集中、組織的な超脱法、瞑想、静慮、心統一

शब्दब्रह्मातिवर्तते ॥
śabdabrahmātivartate ||
シャブダブラフマーティヴァルタテー
彼は語のブラフマンを凌駕する

śabdabrahma【中性・単数・対格 śabdabrahman】[〜に、〜を]語におけるブラフマン、聖典、ヴェーダ;語ブラフマン;梵音
※śabdabrahmanは、特に聖音オームを指すとされる。(中略)シャンカラは「ヴェーダに述べられた祭式実行の果報」とする。(上村勝彦注)
※śabdabrahmanとは、神から啓示された聖語としてのヴェーダを意味する。(服部正明注)
ativartate【三人称・単数・アートマネーパダ・現在 ati√vṛt】[彼は〜、それは〜]〜を過ぎ去る;(河を)渡る;超える、踏み越える;(一定の時間)生存する;勝る、凌駕する;打ち勝つ、圧倒する、抵抗する、〜から逃れる、(捕縛を)免れる;通過させる、怠る、被る、犯す、(約束を)破る;無視する、無関心に扱う、害する、〜に対する義務を被る

पूर्वाभ्यासेन तेनैव ह्रियते ह्यवशोऽपि सः ।
जिज्ञासुरपि योगस्य शब्दब्रह्मातिवर्तते ॥४४॥

pūrvābhyāsena tenaiva hriyate hyavaśo’pi saḥ |
jijñāsurapi yogasya śabdabrahmātivartate ||44||
なぜなら、前世での繰り返しの修練によって、彼は無意識のうちに惹かれるから。
さらに、ヨーガを知ろうと思うだけでも、彼はシャブダ・ブラフマンを凌駕する。