トゥラシーの誕生

Meditation power

インドでは7月のグル・プールニマー(師を讃える満月祭)前より、11月22日のエーカーダシーまで、ヴィシュヌ神が眠りにつくとされるチャトゥル・マース(聖なる4カ月間)が続いていました。そして、このチャトゥル・マースの終わりが11月22日のエーカーダシーにあたり、ヴィシュヌ神が目覚める時と信じられています。このエーカーダシ―より次の満月(26日)にかけては、ヴィシュヌ神とトゥラシー女神の結婚を祝福するトゥラシー・ヴィヴァーハの祝福が盛大に執り行われ、インドの各地で結婚式シーズンを迎えます。

トゥラシーは芳香のある植物「ホーリーバジル」として知られ、最近ではその多くの効能が伝えられると共に、葉はハーブやお茶、木は数珠やアクセサリーなどに用いられ、日本でも広く愛されるようになりました。大自然や草木を神々のあらわれとして崇めてきたインドでは、トゥラシーもまた古くから神聖視され、その存在はラクシュミー女神の化身としても崇められています。

トゥラシーの誕生にはさまざまな説が伝えられますが、そんな中に、ヒンドゥー教の創造神話である乳海撹拌にまつわる言い伝えがあります。乳海撹拌において、アーユルヴェーダの神であるダンヴァンタリ神がアムリタの入った壺を持ってあらわれた際、その喜びにダンヴァンタリ神(ヴィシュヌ神)が涙を流し、壺にこぼれ落ちたその涙からトゥラシーが生まれたと伝えられます。

不死の甘露・アムリタに生じたとされるトゥラシーには、多岐にわたる効能が伝えられています。トゥラシーは、乱れがちな体内の環境に均衡をもたらし、一定に保つとされるハーブ「アダプトゲン」の一つでもあり、それは心身の緊張や不安を和らげるものとも言われます。

大自然と共に生き霊性が豊かであった古代の人々は、心身に安定をもたらすさまざまな作用を自然の中に見出し、それらを神々としても崇めてきました。私たちを取り巻く大きな世界を知ることは、神々と自分自身を知ることにも他なく、その繋がりは、何よりもの平安をもたらします。受け継がれてきた叡智と共に、私自身もより健やかな日々を過ごせるように、大きな世界を知ることを努めたいと感じています。

(文章:ひるま)

参照:”Ocimum tenuiflorum”, https://en.wikipedia.org/wiki/Ocimum_tenuiflorum
“Tulsi in Hinduism”, https://en.wikipedia.org/wiki/Tulsi_in_Hinduism