うららかな春と愛の神

Der Liebesgott Kama und seine Frau Rati an einem Tepel in Khajuraho Indien

春の到来として祝福されるヴァサント・パンチャミーは、サラスヴァティー女神の生誕日として崇められる吉日です。そんなヴァサント・パンチャミーは、大きな愛に包まれると伝えられることもあり、多くの結婚式が執り行われる時でもあります。古い時代、この春の季節は、愛神カーマデーヴァが讃えられる時でもありました。

先日のタイプーサムで祝福されたカールッティケーヤ神は、シヴァ神の子どもとして知られていますが、その誕生神話の中に、神々が悪魔から世界を救うためにシヴァ神の子どもを必要としていたという言い伝えがあります。そこにカーマデーヴァの繋がりがあります。

最初の妻であるサティーを亡くしひどく悲しみ、その後深く長い瞑想を続けていたシヴァ神は、サティーがパールヴァティーとして姿を現し再び結ばれる時を迎えるも、目を閉じ瞑想に耽っていました。そんなシヴァ神を目覚めさせようと、カーマデーヴァが愛の矢を放ちます。そして怒ったシヴァ神の第三の目が開き、そこから出た閃光によってカーマデーヴァは焼き尽くされてしまいました。

カーマデーヴァは欲望に基づいた愛の神として伝えられ、ヴァサンタ(春の神)を親友とし、この季節に活発になると言われます。そして一説には、ヴァサント・パンチャミーにおいてカーマデーヴァがシヴァ神に矢を放ち、その第三の目を開かせたと伝えられます。

焼き尽くされてしまったカーマデーヴァの死をひどく悲しみ、妃であるラティ(快楽の女神)は夫を蘇らせようと苦行を始めます。そして、このヴァサント・パンチャミーからホーリー祭までの約40日間、ラティは厳しい苦行を行い、心のイメージとしてカーマデーヴァを蘇らせます。カーマデーヴァは肉体のない者=アナンガと呼ばれることもあり、ラティはそこで、肉体的ではない精神的な深い愛と喜びを見つけたともいわれます。

カラフルな色に包まれるホーリー祭は、インドの三大祭りに数えられる大祭でもあります。ヴァサント・パンチャミーからホーリー祭にかけては芽吹きの季節となり、心が躍るような春の心地よい気候の中で、人々はホーリー祭に向けさまざまな準備を始めます。

※カーマデーヴァの神話はプラーナ文献においてさまざまに伝えられ、この他にも、クリシュナ神の子どもとして再び肉体を持って生まれ変わったとも伝えられています。また、カーマデーヴァがシヴァ神に矢を放ったのはホーリー祭であるとも伝えられることがあります。

(文章:ひるま)