暗黒物質の正体とは

Space background with blue nebula and stars

日常生活において、私たちがもっとも重視しているものは、物質でしょう。水、土、空気、食物、人間、星—形あるものすべては、物質から構成されています。しかし、これらの物質を構成している原子は、宇宙の構成要素のわずか5%程度であり、残りは暗黒物質(ダークマター)と暗黒エネルギー(ダークエネルギー)であると考えられています。

今回のテーマである暗黒物質は、日常生活からかけ離れた、より大きな宇宙規模のスケールに目を向けなければ、知り得ることができません。

太陽系においては、水星、金星、地球、火星、木星、土星などの惑星が太陽の周りを公転しており、その公転速度は、太陽に近い惑星ほど速くなります。これは、ケプラーの法則として知られています。

銀河系についても、太陽系と同じように、銀河中心に近い星々の回転速度が速く、外側の星々ほど、回転速度は遅くなるものと考えられていました。ところが、銀河系の回転速度を詳細に観測したところ、内側の星々と、外側の星々の回転速度が、ほぼ同じであることが明らかになりました。

これを説明するためには、宇宙には、正体不明の暗黒物質が存在すると仮定するか、一般相対性理論(重力理論)の修正が必要になります。一般相対性理論は、現在まで観測結果と矛盾がないことから、多くの科学者は、暗黒物質の存在を前提として、研究を進めています。

しかし、高性能の観測装置によっても、いまだに暗黒物質の手がかりを掴むことができていません。

筆者の提唱する自己相似対称(SSS)モデル[1]は、幾何学的なアプローチによって、銀河の回転速度を導くことができます。SSSモデルでは、宇宙の階層構造は、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の波長を初項とする等比数列で表現できます。このことから、銀河の回転速度は、CMB、すなわち重力以外の要素によって決まると考えられます。

SSSモデルでは、CMB温度の高い領域は、重力や電子の質量が大きくなるため、物質の密度が高くなります。つまり、宇宙初期のCMBの温度ゆらぎが、宇宙の大規模構造の形成に大きく寄与することになります。

CMBは、重力を支配する光であり、CMBが変化することにより、宇宙の構造や物理定数も変化します。これは、従来の宇宙論の考え方とは大きく異なりますが、実験や観測で検証してみる価値は十分にあるでしょう。

CMBは、宇宙に充満するもっとも興味深い光ですが、宗教的な観点における類似点も見逃せません。ウパニシャッドをはじめとする、太古の聖典には、神と光は同一であることが示唆されています。

『天上を照らすその光明は、何よりも高く、何よりも勝り、この世界でそれより優れるものは他にない。それは、人間の内に輝く光明と同じものである。』
(チャーンドーギャ・ウパニシャッド 3:13.7)

CMBは、万物の構造や運動を司る光であると考えられ、太古の聖者たちが捉えた神の光に近いものがあります。

[1] T.Sonoda, Front. Appl. Math. Stat. 2:5 (2016)