66、循環器・愛情のRaga

old sitar on red background - ancient indian instrument

循環器と愛情、情感の「恒常性」に働きかけるRagaは、そのほぼ半数が「第4のChakra:Anahata」と深い関わりを持っています。そのほかにも、流石に「情感」がテーマですから、Anahata-Chakraに限らず、「情感に働きかけるRaga」は豊富にあります。

しかし、「循環器に関わるRaga」ともなると、これも流石に何でもかんでもというわけにはいきませんし、血圧に直接的に影響を与えるRagaなどは、安直に奏でたり聴いたりは怖いと考えるのが妥当にも思います。

ただ、何回か申し上げましたように、音楽は、複数の生薬の混合方剤のようなものですし、化学製剤のような「ある特定の成分を抽出したもの」ではないので、「効き目は穏やか」である代わりに、一気に血圧に影響を与えることはないはずです。

しかし、私自身の経験談で恐縮ですが、インド音楽を聴き始めた中学二年生の頃、新しく手に入れた貴重なレコードに針を落とし、程なく心臓がドキドキし、苦しくなったことがあります。心拍数が上がり、過呼吸気味になったのでしょう。思春期ということもありましょう。その後、怖くてその曲は聴かなかったのですが、十年程して聴いてみれば、何のこともない、何の変調も来しませんでした。

その頃やっとRagaの理論が頭に入って理解出来たことによれば、そのRagaが元々持っている性質に加え、その演奏者が非常に巧みに「ド」を迂回して「じらして」演奏していたのでした。しかも竹の横笛ですから、弦楽器よりも強烈に胸に響いたのでしょう。

なので、「危なくない」とは実体験からしてもお約束は出来ないわけです。

ただ、どんな薬でもそうですが、変調を感じたら早めにストップすれば良いはずです。当時の私は「恐いもの見たさ」感覚で、むしろのめり込んで聴いてしまったのでしょう。ある種の「プラセボ」「自己暗示」も加わったかも知れません。

実際のAnahata-Chakraに関わるRagaは、このChakraと関わる音が「Madhyam(マディヤム/ファ)」であることから、極めて柔らかな印象を与えるRagaが多いのです。また、血圧降下作用が説かれている他のRagaも、ほとんどが同様に柔らかく、穏やかな印象を与えるものです。

逆に、低血圧に効果があるとされるRagaも少ないですが存在します。不思議なことに、この低血圧向けのRagaは、あるMudraを行って聴くと、逆に降圧効果に転じます。もちろん、これも「健康で正常な状態」に正すと言う意味ですから、低血圧の人が間違って行って、更に酷くなるということは、(絶対無い、とは言わずとも) 通常ないと思われます。

しかし、いずれにしても「血圧」を心配すること自体で血圧が変化してしまうという本末転倒な問題もあります。

また、血圧を外因で調整するばかりでは、「対処療法」と変わりません。もちろん、Raga音楽療法の場合は、交感神経の高ぶりを抑えるという全身的なものではありますが、やはり、Anahata-Chakraを活性化させるとともに、「血管を丈夫に」「血管の汚れをDeTox」「心臓を丈夫に」「血流を改善」「血液をサラサラに」などの努力も怠らないことも大切なのは言うまでもありません。

7音のうち、Anahata-Chakraと関わる音「Madhyam/ファ」にもやはり「高いファ」と「低いファ」があります。ひとつ上の「Pancham/ソ」には#♭を付けてはならないので、ソ♭があり得ず、ファが#となりますので、Madhyamの場合、♮と#の二種ということになります。

そして、これは「陰陽説」に順等に、低い方「ファ♮」が、左と中央のAnahata-Chakraに関わり、高い方「ファ#」が、右のAnahata-Chakraに関わります。

なので、単純に考えると、「ファ#」のRagaは、交感神経を高め、低血圧に良い、「ファ♮」のRagaは、交感神経の高ぶりを抑え高血圧に良い、と思いたいところですが、実際のRagaはもっと複雑です。

「ファ#」を用いるRagaで高血圧や頭痛にさえ効くと言われるRagaもあれば、「ファ♮」なのに、低血圧に効くと言われるRagaもあります。

やはり、5音〜7音全体と、Ragaが定める音の動きによって、その効果が決まってくるという、深い世界なのです。

(文章:若林 忠宏

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