ハヌマーンの温かい手

ヒンドゥー教においてもっとも力強い神格の一人である猿神ハヌマーンは、インド全土で熱狂的に崇められる存在です。叙事詩ラーマーヤナにおいて、ラーマ神のために戦う猿軍団を率いる勇敢なハヌマーンの姿は、私たちに信仰と献身のあり方を伝えています。そんなハヌマーンは、シヴァ神の化身としても崇められる存在です。

幼い頃からラーマーヤナを読み聞かせられるインドの子どもたちは、その中で描かれるハヌマーンの強さに夢中になります。ハヌマーンは、自らの体を小さくしたり、大きくしたり、海を越え世界を飛び回ったり、幼い時には真っ赤な太陽を果物だと思い太陽に飛びついたりと、その驚くべき行動の数々は計り知れません。

ハヌマーンのそんな勇敢な姿が子どもたちから愛される一方で、ラーマ神に堅く忠誠を誓う姿は、多くの人々の心を魅了し、人生を生き抜く手本としてあり続けています。ラーマーヤナの挿絵には、胸を引き裂いてその内にいるラーマ神とシーター女神を見せる姿が描かれるなど、ハヌマーンとラーマ神の絆は他の何よりも強く、ラーマ神が祀られる寺院では、必ずハヌマーンの姿が祀られています。

ハヌマーンの帰依者にとって、ハヌマーンの姿は神と結ばれるためのあり方として映ります。そんな彼らの間で唱えられるのが、ハヌマーン・チャーリーサーです。喜びに溢れる時、苦難にある時、いつの時も彼らの側にあるハヌマーン・チャーリーサーは、ヒンドゥー教においてもっとも強力な祈りの一つであり、シュリー・ラーマチャリタマーナサ(トゥラシーラーマーヤナ)を残したトゥルシーダースよって書かれました。ハヌマーンを讃える40節の祈りからなります。

ハヌマーン・チャーリーサーの始めにおいて、ハヌマーンはグル(導師)として礼拝されます。ラーマ神の王国の守護者となり、ラーマ神とシーター女神を結びつける姿は、神と個を結合する象徴として崇められます。ハヌマーン・チャーリーサーは、人生におけるさまざまな苦難に対するお守りとして受け継がれ、それはまた、私たちがこの肉体を去りラーマ神のもとへと旅立つ時においても唱えられます。

ラーマ神は、ハヌマーンに不死の恵みを授けました。いつの時も、ラーマ神が礼拝されるところには、必ずハヌマーンが存在すると伝えられます。神のために働き、神に仕える者たちを守り導くハヌマーンは、神と人々を繋ぐ存在としてあり続けます。

ハヌマーンの見せる偉業は、ラーマーヤナの中核をなすものです。それは、ラーマ神に仕えるというただ一つの目的に集中し、羅刹王ラーヴァナに誘拐されたシーター女神を救い出そうとして傷を負ったラーマ神の弟ラクシュマナを救おうと、ハヌマーンはヒマラヤから薬草を山ごと持ち帰るほどでした。また、シーター女神を探すために、海をも飛び越える力強い姿が描かれています。

ヒンドゥー教においては、ハヌマーンはカリ・ユガ(悪が世界を支配する現代)が終わるまで、地上に存在しつづける不死の存在(チランジーヴィー)であると信じられています。私たちがハヌマーンを心に抱くとき、正義感溢れ、勇敢で力強いまさにその姿で、ハヌマーンはきっと、私たちに温かい手を差し伸べてくれることでしょう。

(SitaRama)