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インド音楽

79、世界に知られた:Sitar (2)

1960年代後半、インド現地の音楽家は、大挙して訪れるヒッピーに辟易としていたと述べましたが、その反面、それが無かったらインド古典音楽と楽器の需要は、風前の灯状態にまで衰退していたことも事実です。
ラヴィ・シャンカル氏とジョージ・ハリソンによって、インド古典音楽が世界的に高く評価されたことは、音楽家たちにとっても多くのインド人にとっても大きなステイタスとなりました。それによって町の音楽教室に通うインド人も増え、宮廷音楽終焉以降下り坂のみであった古典音楽も、芸術音楽として生気を取り戻したことは紛れもない事実と評価出来ます。

また逆な話しで、もし1960年代末当時、シタールが戦前の形状のままだったら? もしくはシタールがインドで演奏され始めた16世紀の頃の華奢で小さな楽器だったり、シタールが19世紀に古典音楽の地位を得ず、代わりにヴィーナ(ルードラ・ヴィーナ)や南インドのヴィーナ、及びサロードしか海外に紹介しようがなかったならば。果たしインド音楽は世界的に有名になったであろうか? ひいては、インド知識人層がステイタスを感じ、自国文化の再評価を行い、共和国という新しい時代にも伝統を継承する意識があそこ迄育ったであろうか?と考えると、シタールの人気はそのタイミングもその魅力も含め絶好で、だからこそインド古典音楽の取り返しのつかない衰退を大きく救ったと言えるのかも知れません。

1940年代、当時の第一線にあったモダン派の気鋭ラヴィ・シャンカル氏と、シタール最古の二つの流派の後継者で在った保守派の貴重な後継者イリヤス・カーン氏は、異なる主旨で同じようなやや大振りのシタールを当時最高技術を誇ったカルカッタの職人に特注していました。同世代には他にヴィラヤト・カーン氏、ムスタク・アリ・カーン氏が居ましたが、いずれも当時のシンプルなシタールで前者は軽妙な演奏、後者は極めて古典的な演奏で評価されていました。
ラヴィ・シャンカル氏と、イリヤス・カーン氏の大型シタールは、当時のシタールと「スル・バハール」の中間ややシタールよりの楽器で、特徴は低音弦にあります。
それまでのシタールの主弦七本(共鳴弦以外の意味)は、「旋律主弦(1)、低音伴奏弦(2)、中音伴奏弦(2)、高音リズム弦(2)の構成です。二本の低音伴奏弦は、サロード同様アフガン系音楽家がアフガン弦楽器の手法を取り入れたもので「ジョラ(対)」と呼ばれる「複弦」構造でした。
ドレミで言うと(厳密にはこの半音以上上ですが)1弦(低域のファ)、2/3弦(低域のド)、4/5弦(1/2/3弦の上のソ)とリズム弦、が19世紀半ばからの調弦です。

戦後二本の低音伴奏弦(複弦)の内一本を更に低い音に替える演奏者も現れ始めていましたが、ラヴィ・シャンカル氏と、イリヤス・カーン氏は、中音伴奏弦の一本も低音弦に替え、ドゥルパド系器楽の独奏に力を入れるものでした。

戦後の調弦は、1弦(低域のファ)、2弦(低域のド)、3弦(2弦の下の低域のソ)と、4/5弦は同じでリズム弦というもので、ラヴィ・シャンカル氏と、イリヤス・カーン氏の場合は、戦後の調弦の4弦に、3弦の更に下(最低音のド)の重低音を設け、中域伴奏弦は5弦のみとリズム弦というものでした。ちなみに前述のヴィラヤト・カーン氏などは、ジョラの一本を張らず(糸巻は空のまま差してあるだけ)、4/5弦の一方をしばしばミなどにする独自な調弦でした。

イリヤス・カーン氏の場合は、あまりに太さの異なることが原因の低音三本のフレット音痴を解決するため、棹の上の「上駒」をも「サワリ式」に替え、ピッチの改善とサワリ音の一石二鳥を果たすというアイディアでしたが、他流派には広まらず、と言うか彼のドゥルパド奏法は難解なので次第に廃れてしまったので、意外に知られていないかも知れません。
同じ時期、インド有数のデザイナー、ヘーム・ラージという人が、趣味でか?糸巻にも彫刻、表面版の彫刻は超豪華、縁取りも豪華という派手なシタールを考案し、ラヴィ・シャンカル氏と、イリヤス・カーン氏のしタールもほぼそのスタイルです。それが今日高めの値段のシタールの基本となりました。

(文章:若林 忠宏

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