सह नाववत्विति शान्तिमन्त्रः サハナーヴァヴァトゥではじまるシャーンティ・マントラ

「サハナーヴァヴァトゥ」で始まる
シャーンティ・マントラについて解説します。

 

最近ではヨーガのクラスでも唱えられていますが、
もともとは、ウパニシャッドの聖典の一節であり、
教師から弟子へ、ウパニシャッドの奥義を
マンツーマンで教える際に唱えるものでした。

 

このマントラは、間違った位置で単語を区切っている
間違ったテキストが広まっているので注意してください。

サンスクリット語には、単語の最後の音と次の単語の最初の音が繋がる
「サンディ」というルールがあります。
別々の単語が繋がって発音され、
繋がって書かれているため、
サンディの知識や、語尾の知識がないと
どこで区切るのか正確には分かりません。

誤った情報を鵜呑みにしたり拡散したりしてしまう危険があります。

 

例:よく見られる間違い

sahanā vavatu ×

saha nāv* avatu ○ → saha nāvavatu

*(本来はnau。「私たち二人を」サンディによってnāvと変化したうえで、次のavatuが繋がっています)

 

次の例:

tejasvi nāvadhī tamastu ×

tejas vināvadhī tamastu ×

tejasvināvadhī tam astu ×

この部分は他にも様々な切り方がネット上に散見しています。

 

正しくは

tejasvi nāv* adhītam astu ○ → tejasvi nāvadhītamastu

*(先と同様、本来はnau)

*(この部分に関して、シャンカラは注釈でtejasvināv adhītam astuという分け方も挙げています)

 

次の例:

mā vid viṣāvahai×

mā vidviṣāvahai○

 

vidを分けて、「知る」という単語であるような説明をしているケースがありますが、
これは間違いです。

vidviṣāvahai は長いので
複数の単語がくっついているのかと思いきや、
これで一つの単語なのです。

語根はvi√dviṣ- 憎み合う、ケンカする

という意味で、直前の mā が強い否定辞、
しかもアートマネーパダ(反射態、自為言)という
自分のために作用する動作を表わす活用で命令法なので、

「私たち二人は決して仲違いしないぞ!」

という意思表明なのです。

 

広い海を航海するときに海図や羅針盤を持っていれば迷わないように、
サンスクリット語の知識は音の世界の中で方向を指し示す光となるものです。
マントラに親しんでいる方は機会があれば
ぜひサンスクリット語を学んでください。

 

【逐語訳】
*アンダーバーはサンディで繋がっている単語の切れ目です

ॐ सह नाववतु ।  * स ह (sa ha) と唱える学派もあるようです

oṁ saha nāvavatu (oṁ saha nāv_avatu)

「オーン、ともに我ら二人(=教師と弟子)をお守りください」

 

सह नौ भुनक्तु ।

saha nau bhunaktu

「ともに我ら二人にご満足ください」

 

सह वीर्यं करवावहै ।

saha vīryaṁ karavāvahai

「ともに我ら二人は精進いたします」

 

तेजस्वि नावधीतमस्तु

tejasvi nāvadhītamastu (tejasvi nāv_adhītam_astu)

「輝かしい学習成果が我ら二人にありますように」

 

मा विद्विषावहै ।

mā vidviṣāvahai

「我ら二人が仲違いすることのありませんように」

 

ॐ शान्तिः शान्तिः शान्तिः ।

oṁ śāntiḥ śāntiḥ śāntiḥ

「オーン、平安あれ!平安あれ!平安あれ!」

 

【単語の意味と文法の解説】

左から、デーヴァナガーリー表記、ローマ字表記、<名詞の語幹形、動詞の語根形 >、語意、(文法的説明)、「訳」、という順番で説明しています。

 

ॐ oṁ <a-u-m> 聖音 「オーン」

सह saha <saha> (不変化辞) 「~とともに」

*sa ha  と読む場合、「saḥ 彼は、ha ああ!(感嘆詞)」

ただし、シャンカラは注釈においてsahaと読んでいる。

नाव् nāv <サンディで変化する前の単語= नौ nau,> 我ら二人 (1人称、両数、対格、附帯形) 「我ら二人を」

अवतु avatu <√av-> 守る、助ける(命令法、能動態、3人称、単数)「守りたまえ」

*ヴェーダ聖典では「~を喜ぶ」の意味でも使われており、服部正明訳では「我ら二人を嘉したまえ」

(cf. 『世界の名著 バラモン教典・原始仏典』 p.151, 中央公論社, 1969)

सह saha  <saha 不変化> 「~とともに」

नौ nau 我ら二人(1人称、両数、対格、附帯形) 「我ら二人を」

भुनक्तु  bhunaktu <√bhuj-> 食べる、喜ぶ(命令法、能動態、3人称、単数)「喜びたまえ」

सह saha <saha> (不変化辞) 「~とともに」

वीर्यम् vīryam <vīrya->力、気力、努力、活力(中性名詞、対格、単数)

करवावहै karavāvahai <√kṛ-> ~する(命令法、反射態、1人称、両数)

तेजस्वि  tejasvi <tejasvin-> 威光(テージャス)を有する~(形容詞、中性形、主格、単数)「輝かしい」

नाव् nāv <サンディで変化する前の単語= नौ nau,> 我ら二人(1人称、両数、為格、附帯形)「我ら二人に」

*属格とも考えられるが、シャンカラ注に従って為格とする

अधीतम् adhītam <adhi√i-> 学ぶ (過去受動分詞、中性形、主格、単数)「学習が」

अस्तु astu <√as-> ~がある (命令法、能動態、3人称、単数)「あれ!」

मा mā (naよりも意味の強い否定辞)

विद्विषावहै vidviṣāvahai <vi√dviṣ-> 敵対する(命令法、反射態、1人称、両数)

直前のमा mā とともに「我ら二人は決して敵対することなかれ!」

ॐ शान्तिः शान्तिः शान्तिः oṁ śāntiḥ śāntiḥ śāntiḥ 「平和あれ!平和あれ!平和あれ!」

(文章:pRthivii)

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