宇宙創造時に発生した原初音とされる「オーム」。このもっとも神聖な音は、現代においてヨーガのはじめに唱えられることも多く、その響きに触れたことがある方も多くいるでしょう。オームを唱えることで、ヨーガは単に身体を動かすだけのエクササイズを超え、精神を統一するための神聖な実践となります。
「A(ア)」、「U(ウ)」、「M(ム)」の3音から構成されるオームは、私たちの身体に深く共鳴すると古代から信じられてきました。「ア」は腹部の内側で、「ウ」は胸の内側で、「ム」は頭の中で感じられると伝えられます。オームを唱え、実際に身体をかけめぐるその振動に集中すると、精神はオームの聖音に統一されていきます。こうしたシンプルな瞑想を通じ、身体の微細な感覚を観察してみましょう。身体に共鳴するオームは、やがて精神に響き、私たちは魂の深い本質へと導かれます。
古代から実践されてきたヨーガにおいて、この聖音オームはとりわけ重要な意味を持つものでした。実際に、ヨーガの指導者たちの多くが、その重要性を説いています。
ヨーガの根本経典である「ヨーガ・スートラ」を編纂したパタンジャリは、オームについて、その意味を理解し唱えることで、精神が統一され、集中した状態が生じると述べています。この集中は、瞑想の準備となる必須の状態です。
現代の著名なヨーガの指導者であるジュディスは、オームの響きは無意識のレベルで身体に浸透すると述べ、オームを唱えるだけで、その波動はヨーガの実践の質を変えると伝えています。
リチャード・ローゼンは、オームを唱えることは内なる神性に触れる最もシンプルな方法であると述べ、ヨーガの実践の前にオームを唱えると、ヨーガを動く瞑想としてとらえる導きとなると伝えています。
スワーミー・ニシュチャラーナンダ・サラスワティーは、身体をかけめぐる振動に集中しながら、オームを唱える方法を勧めています。
「ア」「ウ」「ム」の3音には、私たちを目には見えない本質へと導く力が含まれています。ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァの三大神としてあらわされるその力は、創造、維持、破壊の力であり、現在、過去、未来をあらわします。時間を超越した響きであるオームは、すべてのマントラの根源であり、始めを示すだけでなく、終わりを示す音でもあるのです。
そんな究極の聖音であるオームは、私たちの意識の状態のあらわれでもあります。「ア」は目覚めた状態、「ウ」は夢見の状態、「ム」は夢を見ない状態です。オームを唱えることは、身体と精神を結び、魂として目覚めるための偉大な修練となるでしょう。
(SitaRama)
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