107-1、誤った「自我」の解釈と実践 (その1)

この連載の中程から幾度となく私は「現代人の日常的意識(及び気分・感情)」のままでは、アーユルヴェーダ音楽療法の音を本当には理解出来ない」と説いて来ました。それは、東洋医学の薬効に対しても、東洋占星術から、瞑想、ヨガに於いても同じことであるとも申し上げました。

今回は、そのことをもう少し身近に理解して頂く為に。先に図の説明から入りたいと思います。

今回の私の作図の上の円は、ヴェダーンタ学派、ヨーガ学派、サーンキヤ学派などに広く説かれている「宇宙の真理と個々の人間の関係性」を示しています。
今日のサーンキヤ学派などでは、私の図の中にあるものが外側に描かれていますので、一見逆説のように思えるかもしれませんが、説いていることは同じです。

恐らく、内外を反転させた方が、宇宙の真理「Purusha」と近くなるという便宜上のことと、中側(より形而上)の方が、外側(最も外側は形而下)よりも上位であることから、自然に上部に書く習慣なのだろうと考えられます。それと逆さまの私の図の場合、「人間の奥底」に存在するオレンジ色で示した「魂」と「Purusha」が繋がる(転写、同化、観照)時、外側にある緑色、ピンク、アサギ色の輪を突き抜けたように描かざるを得ません。

しかし、実際個々の人間の精神構造・意識構造・心理構造は、私の図のようになっていることは明らかで、古今東西で「心の奥底」「心の内側」「腑に落ちた」「内面心理」「腹の内」「心の琴線に響いた」「深層心理」「無意識」「魂の叫び」などという表現があることでも、太古から人間は、この「多重構造」をその叡智で感じ取っていたことは明白です。

従って、「PurushaとPrakritiの関係性」は、私の図のように、外輪の要素を突き抜けて関係すると表現するしかないのです。

しかし、多くの学派が普遍的に述べている「梵我一如」は、「現世のしがらみから心を宇宙に逃避させる」というような都合の良いものではなく。「宇宙の真理」が、そのままの縮小型で、私たちの心の奥に存在する(小宇宙)、と説いていることに他なりません。

つまり、ここの人間及びその他の生命体は、「内的小宇宙の摂理」に反したり矛盾することなく、図のような「外側の要素」を、順に取り巻かせて、理想を言えば、私たちの自覚意識は、「内外を自在に行き来出来る」ことが賢明であり、健康であるということです。

この考え方は、ヴェーダおよびヒンドゥーの叡智が説く「感覚論(Indriya)」とも「構造論(Kosha)」とも、矛盾しません。また、この図に大きな影響を与えたのが、彼のヴィベカナンダ氏の教えであることも付け加えなくてはなりません。

氏の説いた、極めて重要な話しは、いずれ詳しくお話しするとして。今まで、様々な機会で、今回の図に書かれたような用語に触れた方でも、「中々分からなかった」とおっしゃる人が少なくないので、図を元に、より現実生活で実感出来る説明を試みたいと思います。

実際、今日のヨガやヴェーダ関連の情報では、異なる「論」の用語が交錯しながら同一平面上に産卵していると感じることが多いので、分かりにくいことはやむを得ないことと思います。
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「構造論」
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まず「構造論」から言えば、外側のアサギ色の輪は、私たちの体の(実体的な)構造でもあります。これは常に世の中の危険や外敵と接するとともに、誤った思考が求める「依存」や「癒されたい」などの衝動を外部に向けもします。その内側にある思考・精神回路が壊れていれば、その言動・行動は、更に奥にある「臓器・細胞・優良細菌」、そして「魂」の求めを正しく受け止め正しく変換されたものではないことは、言うまでもありません。
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「感覚論」
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次に「感覚論」から言えば、外側の「アサギ色」の部分が、私たちが日常自覚出来ている「感覚(Ahamkara)」ですが、その内側にある「ピンク色で示した思考回路・分析・整理整頓力・論理性」が鍛えられている人とそうでない人とでは、「感覚(Ahamkara)」は雲泥の差が在るほど異なります。

例えば「お腹が空いた」という自覚は、「空腹=食べるべき」の場合から、「グルコースだけが欲しい」「水分も同時に欲しい」「何らかのヴィタミン、ミネラルが欲しい」「ただ胃の空腹感を満たしたい」「空腹ではないのに、胃壁が荒れて胃酸がキツいから何かを入れて欲しい」「胃壁のびらんが落ち着かないから」などなど、様々なことを意味しています。最悪「ストレス性」もあり、悪循環の過剰摂取で止めども無くなります。私自身、ヴェーダを学んで二ヶ月で20kgシェイプアップする直前は、80kgを越えていましたから良く分かります。

体(ここでは臓器や細胞や優良細菌)の情報は、上記のように、「胃壁の健康状態」などによっても大きく変わりますが、ほぼ健康な人でも、「化学物質、漂白剤、漂白した人工糖分、刺激物」などを摂ると、「体の要望」は、正しく伝わりません。
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「意識論」
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次の、「意識論」ですが、これが最も正しく理解して頂きたいテーマです。
外側アサギ色の「感覚」は、五感が感じたものを「気分・感情」で捕らえるものです。ここで、「五感が感じたこと=事実」のように思っている人が凄く多いことが大きな問題と考えます。何故ならば、「そう思わない人」が居たとしても、多勢に影響され、「五感は事実を感じている」と思う人がどんどん増えるからです。とりわけSNSのような「印象共有・共感至上社会」が拡大するとその悪影響のスピードは止めどもなく早まります。

「心頭滅却すれば火もまた涼し」と言うように、「感覚」は、その情報を享受し整理する「より深い感覚(表層的思考性や精神状態)」によって大きく変化します。

「被害者意識・不遇感・閉塞感」が強く、少しでも暑いとイライラし、汗をかくことが気持ち悪いと感じ、少しでも寒いとこわばり思考回路が停止し「不遇感・被害意識」が亢進する為、直ぐにエアコンで解決することで、自律神経と脳機能を壊した人と、「暑くて汗をかくことが気持ち良い」「寒いとシャキっとして嬉しい」という人とでは、「受けとり方」が大きく異なります。

その内側のピンクの「思考」の部分は、「Vidya(叡智)」「Bhava(洞察と自壊)」「Pramana(様々な次元の実体験)」と、ヴィヴェカナンダ氏が強く主張する「論理的思考」などの、自然で健康で、叡智と悟性に満ちた「正しい思考回路」と「深い思慮」の部分です。

体験には、私たちが普通に理解する「表面的な直接体験(実感的体験/実体験)」の他に、「論理的推論と洞察による体験(或る種の学習)」「魂の記憶の想起やデジャヴュ、乖離的な体験」そして「梵我一如の悟りが得た体験」などがあり、三番目は極めて重要ですが、今日の主流の価値観では極めて過小評価されています。また、これが旺盛だと、今日の精神医学ではいささか異常とされるかも知れません。四番目に関して、多くの宗教家は、「神との一体感」としか説きませんが、「その状態(精神性)での様々な体験」を意味します。

また、ヴィヴェカナンダ氏の言葉は、宗教的逃避願望の強い人々や、歪んだヒンドゥー至上主義や過激思想の人々に都合良く利用される言葉も多いですが。彼が数多のインド思想家の中で突出していると驚かされた言葉は、「論理が信仰の妨げになるという主張は間違っている。むしろ正しい論理は、真実を理解する上で不可欠のものである(要約)」というものです。

彼のガンディー翁の言葉で「貴方がその闘いをするべきなのは、世界を変える為ではありません。貴方が世界に変えられない為なのです」と同様に、ヴィヴェカナンダ氏もまた、単なる祈願・祈祷(宗教的逃避)、や、思考停止した「無我の境地」、及び「社会的習慣に慣れ切ったままの精神性」では真実に近づくことなど、無理なことと説いていました。

その内側の緑色の部分は、「Chaitaniya(純粋意識)」「Hrdaya(慈愛)」などの「心」の領域です。

ヴェーダの叡智を知らない古今東西の人間でも、前述しましたように「心が奥底に在る」という実感は持っているものです。
その一方で、「心がすさむ」とか、「心を入れ替える」などという言葉もあります。これらには、今ひとつ注意が必要です。(詳しくは次回に述べます)

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「人生論、生命論、死生観」
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次に「人生論、生命論、死生観」などに於ける説明を試みます。
外側の「感覚と気分・感情」は、流れ流され、移り変わり、入れ替るものです。樹木に喩えれば、「枝葉」であり、季節(外的条件・状況・外因)によって、反応し、変化し、やがては朽ち果てて枯れ落ちます。

しかし、現代社会では、「便利さと安全(安心)」の為に、「合理主義・結果論・選択」を受け入れてしまった人々は、「末端・末梢的な枝葉」にこそ「自己を見出そう」と必死になり、SNSなどの「共感空間」で、「印象・感覚」を最も重要なものとして、自己の「反応感覚=気分・感情」に「自己、自我、個性=自分の存在(アイデンティティー)」を見出さんと必死になります。これは、原因を辿れば或る意味「便利病」の怖い症状です。

写真:Vivekananda氏/三円図
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Hindu Chant講座Vol.1

Hindu Chant講座Vol.2

Hindu Chant講座Vol.3

Hindu Chant講座Vol.4

Vedic Chant入門講座(基本理解編)

Ayurveda音楽療法紹介(基礎理解編)

アーユルヴェーダ音楽療法 (実践編1)

アーユルヴェーダ音楽療法 (実践編2)

アーユルヴェーダ音楽療法 (実践編3)

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(文章:若林 忠宏

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若林忠宏氏によるオリジナル・ヨーガミュージック製作(デモ音源申込み)
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