クリシュナ神への賛歌「ゴーヴィンデーティ・サダー・スナーナム」

クリシュナ神への賛歌「ゴーヴィンデーティ・サダー・スナーナム」

 

ゴーヴィンダ(गोविन्द govinda)は、クリシュナ神の別名です。

ゴーヴィンダとは「牛飼い」という意味で、go(牛)+ vinda(√vid:獲得する)という単語からなります。クリシュナの傍らに牛が寄り添っている宗教画をご覧になったことがある方は多いでしょう。聖典ハリヴァンシャ等における神話によると、ヤーダヴァ族のヴァスデーヴァの息子として生まれたクリシュナは伯父のカンサ王から命を狙われたため、牛飼いのナンダに預けられ牛飼い村で育てられました。少年のころから悪魔を倒すなどの驚異的な力を示した英雄であり、ヴィシュヌ神の化身です。そのため、牛飼いという意味のゴーヴィンダがクリシュナの別名とされています。

ナーラーヤナ=クリシュナを最高神とあがめ、献身的な祈りや信愛の情を込めて信仰することを「バクティ」といい、そうした熱烈な信仰心を歌う歌を「バジャン」といいますが、バジャンのテーマには、村の牛飼いの娘たちがクリシュナに恋焦がれる、という恋の物語をベースにしたものもあり、信愛の情=信仰心として歌われます。ちなみに、バジャン(bhajan;サンスクリット語ではバジャナbhajana)もバクティ(bhakti)も語源は同じで、√bhaj 分配する、献身する、という動詞の派生語です。

 

以下では、バジャンとして歌われることがあるクリシュナ神に対する帰依の歌、また、沐浴の際に唱えられるマントラ(ストートラ)を紹介します。

 

【原文】

 

गोविन्देति सदा स्नानं गोविन्देति सदा जपः*।

गोविन्देति सदा ध्यानं सदा गोविन्द कीर्तनम्॥

govindeti sadā snānaṁ govindeti sadā japaḥ* |

govindeti sadā dhyānaṁ sadā govinda kīrtanam ||

(* japam と唱える例もあります)

 

【逐語訳】

 

गोविन्देति सदा स्नानं

govinda_iti sadā snānaṁ

いつも「ゴーヴィンダよ!」と(唱えながら)沐浴し

ゴーヴィンデーティ サダー スナーナム

 

गोविन्देति सदा जपः।

govinda_iti sadā japaḥ |

いつも「ゴーヴィンダよ!」と唱え

ゴーヴィンデーティ サダー ジャパハ

 

गोविन्देति सदा ध्यानं

govinda_iti sadā dhyānaṁ

いつも「ゴーヴィンダよ!」と瞑想し

ゴーヴィンデーティ サダー ディヤーナム

 

सदा गोविन्द कीर्तनम्॥

sadā govinda kīrtanam ||

いつも「ゴーヴィンダよ!」と賞賛する

サダー ゴーヴィンダ キールタナム

 

*動詞が入っていないため命令や義務「~すべし」のような訳は避けました。

 

【単語の意味と文法の解説】

 

左から、デーヴァナガーリー表記、ローマ字表記、<名詞の語幹形、動詞の語根形 >、語意、(文法的説明)、「訳」、という順番で説明しています。

 

गो <go-> 牛(複合語、男性名詞または女性名詞)

विन्द vinde <vinda-> 獲得、守護(複合語、男性名詞、呼格、単数)

go-vinda は牛飼いのこと=クリシュナ神の別名。

इति <iti> ~と(引用、理由など、不変化詞)「~と」

सदा <sadā> いつも(不変化詞)「いつも」

स्नानं snānaṁ <snāna- √snā 沐浴する> 沐浴(中性名詞、主格、単数)「沐浴は」

गोविन्देति सदा 上記を参照

जपः japaḥ <japa- √jap 唱える> ジャパ(男性名詞、主格、単数)「ジャパは」

गोविन्देति सदा 上記を参照

ध्यानं dhyānaṁ <dhyāna- √dhyā 瞑想する> 瞑想(中性名詞、主格、単数)「瞑想は」

सदा 上記を参照

गोविन्द 上記を参照

कीर्तनम् kīrtanam <kīrtana- √kīrt 賞賛する> 賞賛(中性名詞、主格、単数)「賞賛は」「キルタン」の元の単語)

(文章:pRthivii)