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インド音楽

110、ドゥルガー女神のラーガ(1) Raga:Durga

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ドゥルガーのイメージにみるインド人の母親像?
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商売人に人気なのはラクシュミ女神。音楽・舞踊家の信仰が厚いサラスワティー女神。では、その他の一般の人々にはどの神が人気なのでしょうか? これは多民族国家のインドのこと。地域が異なれば人気の神々も異なって来ます。

主婦であり母である一般のヒンドゥーMrsには、人間の子どもとして生まれたクリシュナに母性本能が掻き立てられると言う人が少なくありませんが、男女を問わず私たちにとっての「母」の存在の女神は、何と言ってもドゥルガー女神ではないでしょうか。

クリシュナの養母:ヤショダを神格化する人々も居ますが、基本的に彼女は人間であるからこその要素が大と思われます。彼女も紛れも無く母性に富んだ存在ですが、もしかしたら、養父:ナンダの父性の方を特筆する人の方が多いかも知れません。(寡聞ながらヤショダのラーガを私は知りませんが、ナンダのラーガは幾つか学びました)

その点では、「マ・ドゥルガー(母なるドゥルガー)」と呼ばれるだけあって、ドゥルガーの母性は、とりわけ信仰が厚いベンガル地方のみならず、インド全土でかなり確立された感じがあります。

しかし、私たち日本人の感覚で言うと、ドゥルガーより、元の姿のパールヴァティー女神の方が優し気に思えます。世界のあらゆる宗教と神話に共通する「天(宇宙)と地(地球)の融和」の創成神話に於いてもパールヴァティーが象徴する「地」は、正に「母なる大地」といった包容力があります。
それに対しドゥルガーは、「たくましい」を通り越して「勇ましい」。否、それをも通り越して「恐ろしい」というイメージさえ抱きかねません。

しかし、「母性の象徴である女神」に「優しさ」を求めるのは、私たちの「甘ったれ根性」の所為であり、「真実の母性」には、「力」と「威厳」そして、しばしば「恐怖」がつきもので、私たちは、甘えるどころか畏怖の念を禁じ得ないのが本来なのでしょう。その意味でDurga女神は、ブラフマン教~ヒンドゥー教の神々の中でも、より古く、より本質的な性質を継承し続けているとも言えます。

神話的に言えば、シヴァ神の妃:パールヴァティーが、悪神の侵攻に対し情けない敗北をくり返す男神を見かねて「私によこしなさい!」と男神達の武器を八本の手に取り、ライオンに乗って闘うとされます。信仰が盛んなベンガルでは虎に乗って描かれることの方が多いようです。そのドゥルガー苦戦した際、怒りに狂った彼女からカーリー女神が現れたとされますが、黒い肌に鉞を持ち、喰いちぎった悪神の血を滴らせる姿には、最早母性は望めません。

また、多くの信者が、パールヴァティー~アンバーマーター~バイラヴィ~カーリ.........と繋がる一連の様相(Nava-Druga:九のドゥルガーとしても知られます)の根本に流れる「力」を全ての「力」の源である「Shakti」と考え、地方によっては、「Shakti」も様相のひとつとして具象化されます。

社会学的見地から見れば、各地のアニミズムに自然発生した「母なる大地」の神格化である女神たちを、プラーナ時代の隆盛期にシヴァの妃として統一の流れを構築したのである、となるのでしょう。

しかし、この連載で何度か述べていますように、意外に近い将来、科学的にも解明されるかも知れない「宇宙の波動=気=意志=粒子のような何か」として考えるのであるならば。それは正に「Shakti」と名付けられた或る種の波動であり、それが様々な様相に具象化されるということは、決して矛盾もなければ、おかしなことでもなく。またお伽噺でもないのでしょう。

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絶対音程の無い真言とドレミのド(Sadaj)
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「神とは、波動として宇宙を飛び交う何らかの意志である」という話しとは、一見異なるようで、実は深いところで関わっているのが、「真言(Om)と科学音楽と古典音楽の基本中の基本である「音列の第一音=Sadaj」には、「絶対音程/実音的な高さ」が存在しない、ということです。

インド古典音楽に於ける「始まりと終わり」であり、「全ての根源」とまで言いながら、その「ド=Sa」に絶対音程が無いということは、どういうことなのか?

なにやら「嘘臭い?」「まやかし?」めいた気分になる人が居たとしても当然でしょう。しかも、「ドレミのド」に絶対的な音程が無い以上、例えば「Raga:Durga」を説いたとしても、その実態には「絶対的な姿」というものが「無い」ということになってしまいます。

しかし、以前もどこかで述べましたが、「ドレミのド」に関して言えば、「他の音との関係性で、自ずとその絶対性が見出されて来る」ということなのです。

いみじくも人間が最初に見つけ出した「遠距離通信手段」は、「モールス信号」でした。奇しくもそれは「長い(ー)」と「短い(・)」の二つの信号を組み合わせるものであり、有名な「SOS」は、「・・・ーーー・・・」だそうです。これも絶対的な長さではなく、「長い」は、「短い」の存在によって確立され、アルファベットの各音は、その生み合わせによって確立します。

この連載の第一回目でお話しました「宇宙の波動=音楽の音」もまた、「光の波動」同様に、実は無限のグラデーションなのが、大きく捕らえると「虹の七色」「ドレミの七音」のようになり、楽音は、その関係性で「基音=Sa=Om」が導かれる訳です。

今回の図の「彩られた音の帯」で、「Raga:Durga」「Raga:Mohanam(クリシュナ神)」「Raga:Shankara(シヴァ神)」を羅列し比較したものの、最上段に書きましたのが、「西洋音楽のドレミ(CDEFで表した)とインド古典音楽のサルガム(SRGMで表し、大文字が高い方=ナチュラルもしくはシャープ音、小文字が低い方=フラット音)」です。色は、西洋楽音の場合、「自然倍音」の関係性を示しており、インド楽音の場合、「男性音」と「女性音」の分別をタントラ化して示しています。

しかし「Sa音をSaと感じる理由」は、私たちに「絶対音感」があるからではありません。(「私はある!」と思い込んでいる人以外でも、誰もがある程度は「ある」とは思いますが。「移動ド音楽」であるインド音楽には無用であるばかりか、或る意味不向き・弊害があります)
そもそも「Sa自体に絶対音程が無い」のですし。

では、「何故SaをSaと感じるのか?」

それは、「基音持続法」によって、定義付けされるからです。

例えば、きっと一回は聴いたことがあると思われる「津軽三味線の曲(曲芸的な)弾き」が冒頭に「ドドド、ドソソソソソ、ソドドドドドー」と弾いてから「ドミ♭ファ、シ♭ソ、ファファファファ」と始まりますが、実音は何であれ、その冒頭の「基音のド」と「属音(自然倍音の第五度)のソ」が示され、「じょんがらの音階=ド、ミ♭、ファ、ソ、シ♭、ド」が確立することと同じように、インド音楽も、伴奏弦楽器や、シタールなどが自身で持つ伴奏弦などで、「SaとPa」が鳴らされることで、「用いる音階」が確定する訳です。

しかし、ここに大きな「落とし穴」もしくは「トリック」があります。

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絶対音程の無いことのトリック
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受けとる側の「絶対音感」も、発する側の「絶対音程」も無いのですから、「基音と完全(自然倍音)五度の属音」と、「基音と完全四度の準属音(下属音)」の区別は着かない筈なのです。

何故ならば、「完全五度の音程(厳密な意味での音の隔たり)」は、「ドからソ迄を数えて5つ(半音7つ)」だから「五度」な訳で、「ドからファ迄を数えて4つ(半音5つ)」だから「四度」な訳ですが、「ファから上のド迄を数えて」も、「5つ(半音7つ)」なのです。つまり「ファ~ド」も「五度音程」なのです。

すると、鳴らされた「ドとソ」が「ファとド」では無い保証は、誰にも立証出来ない筈であり、前述の津軽三味線も、「ドドド、ドソソソソソ、ソドドドドドー」ではなく、「ファファファ、ファドドドド........」かも知れないのです。

ここで、改めて「三種の神々のラーガの音列比較図」を見て下さい。
Raga:Durgaの「m」、即ち、「サレガマ」の第四音「Madhyam」を「基音」と見立てた、「(便宜上の用語としての)四度上転調」は、色分けした「本来の配分」とは大きく異なることが分かります。

その代わり、「Raga:Durgaの四度上転調」の音列は、なんと「Raga:Mohanam」の音配分と同じなのです。つまり、もしRaga:DurgaのSaの実音が「C(A=440hzの場合、下のCは260hz辺り)」の場合、C=260hzをSaと聴くからRaga:Durgaなのであって、もし、F=350hzをSaと聴けば「Raga:Mohanam」となってしまうのです。(実際は音の動きが異なりますから、上級者には分かりますが、響きの全体印象はそう聴こえます)

Durgaと言えば「シヴァ派・シヴァ屋のおかみ(姉さん)」であり、、Mohanamと言えば「ヴィシュヌ派・ヴィシュヌ屋の若旦那(番頭はRama?)」ですから「同じ」となれば大問題です。

この事からも、何度もお話して来ました「音の動きが重要であり、音階=Ragaではない」ことが明らかになりますが、「オクターヴの12半音から選ばれた音素材=音列(音階)」としては、「同じ」に思えるという「トリック(落とし穴)」があるのです。

その結果、「印象論」で言えば、「Raga:Durga」は、「如何にも優し気な母性の象徴」のような響きである訳が、「優しく可愛らしいクリシュナのラーガと同じ要素」だから、ということになるのです。

「絶対音程が無い」ということは、宇宙から「これがSaだ!」の波動は来て居ないということを意味します。Raga:Durgaに関して言えば、宇宙から届く「波動」は、別の図で「五色のひと帯」で示したものに過ぎないのです。まるで、「モールス信号」や「ゲノム配列」のようなものであり、それは、もうひとつ別の図(惑星と共に描かれた)のように、「連続的に無限に」発せられ、届いていて、「色帯」の「濃いピンク(赤?)」を「基音=Sa」と取るから「Raga:Durgaの基本音列である」、ということになるのです。

勿論、実際は、この「音帯=波動」は、図のような単純なものではなく、忙しく複雑に、しかし特徴的・規則的に「うごめき」ながら、連なって届いて来ますから、「基音」を鳴らさずとも「Raga:Durga」「Raga:Mohanam」が区別出来るのです。

逆に言えば、その「定められた音の動き」を分からずに、「音階感覚」で弾いたり歌ったりしてしまえば、「DurgaとKrishnaが、無作為に混じり合う」という誠に奇妙で不謹慎な音のカオスが生じてしまうのです。実際、昨今の演奏者の多くがこのレベルですが。

ちなみに、比較図のシヴァ神のRaga(とは言っても、前々回の連載で述べたように、私自身Shankara=Shivaとは考えてはいませんが)は、奇しくも、DurgaとKrishnaの双方の要素を兼ね添えながら、独特な厳しさがあることが分かります。

もうひとつご紹介する金色のパネルの写真は、Sita-Ramaさんで通販されている「Durga-Yantra」です。

https://sitarama.jp/?pid=1207473

おなじくSita-Ramaさんが紹介されている「Parwati-Yantra」とも似つつも、歴然と異なるのが、均整の取れた安定感と毅然とした雰囲気でしょうか。

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何時も、最後までご高読を誠にありがとうございます。

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また、この度「インド音楽旋法ラーガ・アンケート」を実施致しております。
まだまだご回答が少ないので、
是非、奮ってご参加下さいますよう。宜しくお願いいたします。

https://youtu.be/wWmYiPbgCzg

11月12月も、インド楽器とVedic-Chant、アーユルヴェーダ音楽療法の「無料体験講座」を行います。詳しくは「若林忠宏・民族音楽教室」のFacebook-Page「Zindagi-e-Mosiqui」か、若林のTime-Lineにメッセージでお尋ね下さい。 九州に音楽仲間さんが居らっしゃる方は是非、ご周知下さると幸いです。

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You-Tubeに関連作品を幾つかアップしております。
是非ご参考にして下さいませ。

Hindu Chant講座Vol.1

Hindu Chant講座Vol.2

Hindu Chant講座Vol.3

Hindu Chant講座Vol.4

Vedic Chant入門講座(基本理解編)

Ayurveda音楽療法紹介(基礎理解編)

アーユルヴェーダ音楽療法 (実践編1)

アーユルヴェーダ音楽療法 (実践編2)

アーユルヴェーダ音楽療法 (実践編3)

「いいね!」「チャンネル登録」などの応援を頂けましたら誠に幸いです。

(文章:若林 忠宏

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若林忠宏氏によるオリジナル・ヨーガミュージック製作(デモ音源申込み)
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