母なるガンガーの恵み

古来より、インドの人々の心に抱かれ続けるガンジス河。
その降誕を喜ぶガンガー・ダシャラーの吉日が、2018年は5月24日に祝福されます。
天を流れていたガンジス河は、一説に、シヴァ神の豊かな髪に受け止められながら、この日、地上に降り注いだと伝えられます。
ガンジス河はガンガー女神として神格化され、シヴァ神ととりわけ深いつながりの中で崇められています。

シヴァ神を讃えるもっとも神聖なシュラヴァナ月(7月~8月)、ガンジス河沿いは、オレンジ色の装束を身にまとった巡礼者の熱気に包まれます。
村や家庭で祀られるシヴァリンガムへ注ぐための聖水を汲もうと、遠く離れた地から歩み訪れる巡礼者の姿です。

シュラヴァナ月は、ヒンドゥー教の創造神話である乳海撹拌が起こった聖なる月として崇められます。
この時、シヴァ神は世界を救うために、乳海撹拌によって生み出された猛毒ハラーハラを飲み込みました。
その熱を冷ますことができる唯一のものが、ガンジス河の聖水であると信じられます。
熱を持つシヴァリンガムを静めるために、その上からは絶えず、ガンジス河の聖水が注がれることも少なくありません。

乳海撹拌で生み出された猛毒ハラーハラは、怒りや憎しみ、憂いや悲しみといった、私たちの心の暗闇から生み出されたものとして捉えられてきました。
それを唯一飲み込むことができるのが、破壊神であるシヴァ神です。
そんなシヴァ神へ捧げるための聖水を宿すガンジス河は、まるで、世界を慈しむ母親のようです。
その存在は、ガンガー女神として神格化され、シヴァ神の豊かな髪の中に描かれると、万物の穢れを取り去る浄めとして神聖視されてきました。

黙々と流れるガンジス河のほとりを歩む時、心が洗われ、すっと軽くなる感覚を抱くことがあります。
太古の昔から、人々のさまざまな思いを静かに受け入れてきたガンジス河は、私たちの抱えるもっとも深い暗闇を理解しているかのようでした。
誰しもが抱える心の重荷をすべて受け取り、浄化するその存在は、私たちをあらゆる苦から解放された場所へと導きます。

そんな清らかな流れを支えとするとき、私たちは澄んだ美しい人生を歩むことができるに違いありません。
万物を生み出し、維持し、解放する女神の恵みが、いつの時もありますように、心より願っています。

(文章:ひるま)