マヌ王と小さな魚

西日本を中心とした豪雨、また、大阪北部を震源とする地震により被害を受けられた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
雨季であるモンスーンが始まったインドでも、洪水の被害を受けている地域が多くあります。
今この時、古代から変わることなく受け継がれる神話を通じ、生きる姿勢を学びたいと思います。

この世界に危機が生じた時、世界を守るために特別な姿となってあらわれると信じられるヴィシュヌ神。
その最初のアヴァターラ(化身)として崇められるのが、魚の姿をしたマツシャです。
マツシャは、起ころうとしていた大洪水から世界を救ったと伝えられる存在です。

ある時、人間の始祖であるマヌ王が川へ入ると、小さな魚が近づいてきました。
放そうとするとも、小さな魚は「大きくなるまで守って欲しい」とマヌ王に懇願します。
マヌ王はその小さな魚をすくいあげ、壺の中で育て始めました。
しかし、小さな魚はみるみる大きくなります。

やがて巨大魚となった小さな魚は、世界に危機をもたらす大洪水が起こることをマヌ王に予言しました。
マヌ王は、その巨大魚がヴィシュヌの化身であるマツシャであることに気づきます。
その後、マヌ王は巨大魚となったマツシャの助けによって大洪水を生き延び、地上に生命を再生させると、人類の始祖となったと伝えられます。

マヌ王が最初に救ったのは、とても小さな一匹の魚でした。
それは、気にも留めないような、小さな魚だったかもしれません。
しかし、その小さな魚は人類の救世主であるヴィシュヌ神であり、マヌ王が行った小さな魚を救うというささやかな行為は、やがて世界を救うという偉大な行為となりました。

私たちはマヌ王のように、誰かのために小さな行為を実践することができるでしょうか。
気づきをもって周囲を見渡す時、そこには、他者のためにできる行為が溢れています。
どんなに小さな行為でも、一人一人がその行為を実践することで、それはやがて、世界を救う大きな意味を持つものとなるに違いありません。

大自然と調和をしながら共存してきた古代の叡智を、この日々の中で実践していきたいと感じます。
皆様の安全と、被災地域における一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

(文章:ひるま)