聖者の心から生まれた蛇の女神

酷暑期を終え、恵みの雨が降り続くシュラヴァナ月(7月~8月)は、一年のうちでもっとも神聖な時といわれます。
そんなシュラヴァナ月の新月から5日目、インドの各地では、ナーガ・パンチャミーと呼ばれる蛇神を讃える祝祭が祝福されます。
2018年は8月15日です。
雨季に入り、さ迷い出る蛇の被害を受けないよう、人々が捧げた祈りに起源を持つ祝祭です。

古代より、多産や豊穣の象徴として崇められてきた蛇。
脱皮を繰り返す姿には、死と再生の象徴を見ることができます。
一方で、蛇の持つ毒と、くねくねと動き回る姿は、せわしなく動き続け苦悩を生み出す心の象徴して捉えられることがあります。

人々に畏怖の念を抱かせてきた蛇は、古代より神格化され、重要な役割を担ってきました。
蛇神は数多く、それぞれの存在は霊性を高めるための深い意味を持ち合わせています。
そんな蛇神の中に、マナサー(マンサー)と呼ばれる女神がいます。

蛇の毒を癒す力を持つ女神として崇められるマナサー女神は、サプタリシ(七聖仙)に数えられる聖者カシュヤパの心から生まれたと伝えられます。
心(マナス、意)から生まれたために、マナサーと名づけられたこの女神を祀る寺院は、インドの各地に存在します。
マナサー女神は、帰依者の願望を満たすと信じられ、寺院は願望が満たされる聖地として崇められてきました。

私たちは、心の動きを通じ、さまざまに突き動かされています。
その結果、甘露のような恩恵を味わうこともあれば、猛毒のような苦悩を味わうこともあります。
しかし、その突き動かす力なしに、願望を達成することはできません。
時に猛毒のような苦悩を生み出す心の動きも、神々の支配下にある時、それは願望を達成する大きな力となるはずです。

自然と密接に生きていた古代の人々の生活において、蛇の毒による死は身近であったといわれます。
聖者の心から生まれ、そんな猛毒を癒す力を持つマナサー女神は、私たちの心の働きを正し、願望を達成する力を与えてくれるのかもしれません。
その力の下で突き動かされる私たちは、清らかで満たされた人生を歩むことができるはずです。

(文章:ひるま)