マハーバリ王の願い

美しい自然が織りなす、豊かな生活が生きる南インドのケーララ州。
今年は激しいモンスーンの豪雨に見舞われ、その美しさは壊滅的な被害を受けました。
これから、人々が心待ちにするケーララ州のもっとも大きな祝祭、オーナム祭を迎えようとしていた時でした。

収穫祭でもあるオーナム祭は、かつて王国を追われたマハーバリ王が、年に一度だけ愛する国民たちのもとへ戻る日として知られます。
マハーバリ王は、神々と敵対するアスラの生まれでしたが、非常に信心深く献身的で、国民から愛される偉大な王であったといわれます。

しかし、アスラであったマハーバリ王は、後にヴィシュヌ神の5番目の化身であるヴァーマナに倒されます。
年に一度、愛してやまない国民のもとへ戻ることを条件に、自らを犠牲とし、マハーバリ王は国民の繁栄と幸福を守ったのです。

オーナム祭は、そんなマハーバリ王が年に一度だけ愛する国民たちのもとへ戻る日です。
それは、マハーバリ王があらゆる苦難を乗り越え、解脱を得た日として祝福される時でもあります。

このオーナム祭の神話には、多くの学びが伝えられます。
マハーバリ王は、愛する国民のために、自らを犠牲とし、王としての地位も失いました。
それは、この世のすべての現象が、絶えず変化をしているということを伝えているようです。
私たちの身体、所有物、地位や名誉など、決して永遠であるものはありません。

しかし、自分という小さな個人を捨て、愛する国民と一つになることを望んだマハーバリ王。
他を想い、自我を捨て、全体と一つになることは、神に至る永遠の至福に他ありません。
その真実の理解のみが、私たちを永遠のものとします。
事実、マハーバリ王は今でも国民たちから温かく迎え入れられ、その魂は時を超えて崇められています。

およそ10日間に渡って続くオーナム祭のもっとも盛大なお祝いは、今年は8月25日にあたります。
酷暑期から雨季、その季節の移り変わりが生み出す収穫に感謝をするオーナム祭は、変化の恵みに感謝をする時でもあります。
暗闇から光輝へと向かうよう、この時を通じて、被災地の一日も早い復興と、被災された方々の平安を祈りたいと感じます。
マハーバリ王がいつの時も人々とともにあり、苦難を乗り越える力と、安寧が授けられますように。

(文章:ひるま)