カラスのアーサナ

インドの一部地域では、今年は9月25日から10月9日まで、先祖供養の期間が続いています。
さまざまな儀式が執り行われるこの先祖供養の期間においては、カラスに食事を与える人々の姿を目にすることが多くあります。
インドでは、カラスに食事を与えると、先祖が喜ぶと伝えられているからです。

カラスと先祖供養の関係については、さまざまな神話が伝わります。
天と地の間を飛ぶ鳥は、神のメッセンジャーであると捉えられ、特に真っ黒なカラスは、死の神ヤマの使いであるなどと伝えられてきました。
ヨーガには、そんなカラスにちなんだポーズがあります。

カーカーサナと呼ばれ実践されるカラスのポーズは、全体重を腕に乗せてバランスを取る、まるでカラスが飛ぶような姿を見せるポーズです。
バランス感覚だけでなく、筋力や体幹を必要とするこのポーズにおいては、呼吸が少しでも乱れれば、地面に顔から落ちることも少なくありません。

恐怖心を抱くと挑戦することが難しくなるこのポーズでは、深く呼吸をし、自分自身を信じることが不可欠です。
それは、自分自身に課した限界を取り払い、大きな自由へと飛び立たせてくれるものでもあります。

そんなカラスのポーズの実践においては、バランスを取ることで、眉間のあたりにあるとされるアージュニャー・チャクラが活性化されるといわれます。
また、膝を曲げて前屈をすることで、仙骨のあたりにあるとされるスヴァーディシュターナ・チャクラが活性化されるともいわれます。

スヴァーディシュターナ・チャクラは、自らが宿る場所という意味を持ち、自分自身の全てが眠っていると伝えられます。
このチャクラと向き合うことは、過去の行いによって形づくられた自分自身と向き合うことにも他ありません。
そんな中でバランスを取るには、何よりも深い集中力を要します。
それは、過去にも未来にも行くことができない、現在という瞬間に留まる術を教えてくれるものです。
カラスのポーズは、過去でもなく、未来でもなく、現在という瞬間に存在する自分自身に気づく究極の修練でもあります。

先祖供養においてカラスが重要視されるのも、時間と向き合い、その束縛の中から自分自身を解放することを意味しているのかもしれません。
この時が、皆様にとっても実りある時となりますよう、心よりお祈り申し上げます。

(文章:ひるま)