パンカジャ・ムドラー

インドの国花として、人々に広く愛される蓮の花。
泥沼から汚れのない花を咲かせるその美しさは、純粋さや神聖さの象徴です。
そんな蓮の花を象徴する、パンカジャ・ムドラーと呼ばれるムドラーがあります。
「パンカジャ」は、泥沼に生じたものを意味し、パドマやカマラのように、蓮の花の呼称です。

パンカジャ・ムドラーでは、両手で蓮の花のような形を作ります。
まず、両手の平を合わせた後、両手の親指と小指を合わせたまま、残りの3本の指はそれぞれ大きく広げます。
まるで蓮の花が大きく開花するようなその手の形を、アナーハタ・チャクラがある胸のあたりで組むのがパンカジャ・ムドラーです。

親指は火、人差し指は風、中指は空、薬指は地、小指は水というように、5本の指には、それぞれ5元素の象徴があります。
パンカジャ・ムドラーで合わせる親指と小指は、それぞれ、火と水を象徴します。

古来より、儀式では炎が焚かれるように、火は環境を浄化し、悪霊を祓い、罪を浄める力があるとされてきました。
また、沐浴が重要視されるように、水は物理的な汚れを洗い流すだけでなく、穢れを清めるものとして神聖視されています。

その火と水を象徴する親指と小指をしっかりと合わせるこのムドラーでは、私たちの心身において、浄化のエネルギーが高まります。
そうして清められる心身は、苦難が満ち、時に泥沼のように見える人生においても、蓮の花のような美しさを保つための力を与えてくれるはずです。

このムドラーを組むアナーハタ・チャクラは、「心の座」ともいわれるように、愛情や感情が満ちる場所です。
しかし、私たちは時に、複雑な感情にのみ込まれ、ネガティブなエネルギーに包まれることも少なくありません。
このムドラーの実践を通じては、そんな複雑な感情から自分自身が解放されていく感覚を抱くことが幾度となくありました。
そうして生まれる清らかな平安は、より大きな世界を愛することを学ばせてくれるものです。

ムドラーは、自分自身の内なる世界からその周囲まで、取り巻くエネルギーを向上させる術でもあります。
日々の一瞬一瞬において、自分自身の動作や姿勢に意識的になることで、より美しい日々を自ら築き上げることができるに違いありません。

(文章:ひるま)