シャンカ・ムドラー

太陽が昇り、そして沈む時、インドの地には、祈りとともにシャンカ(貝)の音が響き渡ります。
古来より、祈りの儀式において必要不可欠なものであったシャンカの音は、世界の安寧や心身の健康を生み出すものとして、大切に受け継がれてきました。

かつて、クリシュナ神と他の戦士たちがシャンカを吹き、マハーバーラタの大戦が始まったといわれます。
そして、シャンカを吹いた戦士たちは皆、戦いに打ち勝ちました。
シャンカの生み出す音は、ネガティブな波動を払い、場を清める力があると信じられます。
何よりも、シャンカを吹くことで生じる深い呼吸によって、心身の健康がもたらされると伝えられてきました。
そんなシャンカの形のエネルギーを活用する、シャンカ・ムドラーと呼ばれるムドラーがあります。

シャンカ・ムドラーでは、両手で貝のような形を作ります。
まず、右手の親指のつけ根に、左手の親指の先端を置きます。
そして、左手の親指を右手の人差し指、中指、薬指、小指の4本で包み込みます。
次に、右手の親指と、左手の中指(または人差し指)の先端を合わせます。
左手の残りの指は、右手の指の背で休ませます。
まるで貝のようなこの手の形を、お腹から胸のあたりで組むのがシャンカ・ムドラーです。

親指は、五大元素のうちで火の要素を持ちます。
この親指を、他の要素を持つ指で包み込むことで、火の要素が改善・向上し、適切な消化や代謝がもたらされます。
また、右手の親指のつけ根は、甲状腺に対応します。
ここを火の象徴を持つ親指で触れることで、甲状腺の機能が向上すると信じられてきました。
甲状腺は、身体の発育を促進し、新陳代謝を盛んにするホルモンの働きを司る重要な器官です。

このムドラーを通じては、私たちの「生きる」という活動を支える重要なエネルギーと向き合います。
現代のように医療が発達していなかった古代においては、こうした霊的叡智を通じて、人々は幸福や健康を享受していました。
シャンカの音がネガティブな波動を吹き飛ばすように、このムドラーの実践によって身体には健康がもたらされ、一人ひとりの穏やかな心から、世界には安寧が授けられるに違いありません。

(文章:ひるま)