リンガ・ムドラー

「目は口ほどにものをいう」と伝えられるように、非言語コミュニケーションが持つ力の重要性は多岐にわたって伝えられます。
その力を意識的に用いる方法の一つに、ムドラーがあります。
肉体を持つ私たちは、自分自身の動作や姿勢を通じて、より豊かな日々を自ら築き上げることが可能です。

ムドラーは、自分自身の内なる世界だけでなく、その周囲を取り巻くエネルギーをも向上させる術として、古くから受け継がれてきました。
目まぐるしく変化をする現代社会の中で、物質的に、そして精神的に成長するために、ムドラーは大きな役割を持ちます。
その一つに、リンガ・ムドラーがあります。

リンガ・ムドラーは、両手でシヴァ神の象徴であるシヴァリンガムのような形を作るムドラーです。
右手と左手を組み合わせ、右手の親指を上方へ持ち上げます。
このシヴァリンガムのような手の形を、お腹のあたりで組むのがリンガ・ムドラーです。

男性エネルギーを象徴する右手と、女性エネルギーを象徴する左手を組み合わせる時、自分自身の内で相反するものが一つになり、調和が生み出される感覚を抱きます。
それは、シヴァ(精神:男性原理)とシャクティ(物質:女性原理)の結合を象徴するシヴァリンガムのエネルギーそのものです。

また、親指は宇宙の根本原理であるブラフマン(梵)をあらわし、五大元素のうちでは火の要素を持ちます。
この親指を上方へ持ち上げることで、精神は最高の存在へと導かれながら、肉体では火の要素が向上し、適切なエネルギーがもたらされます。

何よりも、シヴァリンガムは、生きとし生けるものの安寧を願い、時を超えて瞑想を続けるシヴァ神の象徴です。
その聖なる形には、全身のプラーナとその流れを増大させ、生命力を漲らせる強い力があると信じられます。
そんなシヴァ神の象徴を形作ることで、心身には深い平安が生み出され、健やかなエネルギーが満ちていくはずです。

世界を破壊する恐ろしい性質を持つ神であると同時に、万物に限りない恵みを与える慈愛深いシヴァ神。
日々の一瞬でも、そんなシヴァ神の形につながることで、より豊かな日々を歩むことができるに違いありません。

(文章:ひるま)