ナンディが見つめるもの

私たちの内外の世界に潜む、悪の性質を断ち切る偉大な神として崇められてきたシヴァ神。
そうして世界を破壊し、新たな秩序を生み出すシヴァ神は、一切万物にとってこの上ない吉兆の徴です。
そんなシヴァ神を讃えるもっとも神聖な夜が、マハー・シヴァラートリーです。

マハー・シヴァラートリーにおいて、人々は夜通しシヴァ神と向き合い、その偉大な存在を讃えます。
人々が心を向けるそんなシヴァ神の側には、どっしりとした強さを見せる牡牛のナンディが常に寄り添います。
このシヴァ神とナンディの関係を見ると、私たちが幸せな人生を歩む方法が見えてきます。

時に荒れ狂う厳しい自然に囲まれるインドの地では、古代より人々がその恵みを大切に享受しながら生活を営んできました。
中でも、ナンディがサンスクリット語で「幸せなもの」という意味を示すように、牛は人々にさまざまな恵みを運ぶ幸せの象徴です。
土着の神々を吸収しながら、インドの各地で崇められるようになったシヴァ神にとって、そんな牛の存在は、世界の安寧を願い瞑想を続けるためにも必要であったのかもしれません。

そうして神聖視される牛の4本の足は、苦行、清浄、慈悲、真実という4つのダルマをあらわすと伝えられることがあります。
これらの4つの徳を備えたナンディは、寺院において、必ずシヴァ神の方を向いて祀られます。
そのシヴァ神とナンディの間には、決して立ち入ってはいけないといわれほど、2つの存在は強く結びついています。

常にシヴァ神を見ているナンディの姿は、人生の目的が神の実現であるということを私たちに伝えているかのようです。
荒れ狂う人生という歩みの中で、欲望に阻まれ、徳を欠き、その目的を見失うことが少なくない私たちは、ナンディのように、常にシヴァ神の方を向いて歩み続けなければなりません。

その歩みの中では、徳が育まれ、内なる世界の悪が破壊されると共に、多くの幸せが運ばれてくるはずです。
そして個々の魂が最高の魂に強く結びつく時、シヴァ神の願う世界の安寧を実現することが可能となるに違いありません。

シヴァ神を讃えるもっとも神聖な夜において、ナンディが見つめるように、あらためてシヴァ神と向き合い、自らの歩みを確かめたいと感じます。
皆様にもシヴァ神の限りない恩寵がありますように、心よりお祈り申し上げます。

(文章:ひるま)