178、アーユルヴェーダ音楽療法入門40(用語辞典:ウ-2-)

ウダーハラーナとウパニャーヤ:
ヴェーダ検証論に於ける「中因と再確認」。「物事の因果」「病気の原因と表出」「生命体の恒常性」などは、全て「宇宙原理」に矛盾しない(相似性/シンクロ/リンク)。それを確認し、人間社会と個々の人間の「身体と精神・思考・心」の状態の「宇宙摂理との整合性・バランス」を確認(し不整合を正し本来のあるべき健康な状態に是正する)ヴェーダ検証論では、次の手順で検証を行う。

まず「A:現象の認証(Pratijnya)」を行う。次に「B:原因(Hetu)の仮定」を行う。これはアーユル・ヴェーダの「ウパシャヤ(検証治療)」を導く。次に、仮定された「原因」と「相性の良い・必然性がある・一貫性がある「C:表出(具現/結果/中因:ウダーハラーナ)」を確認する。その際、「B:と関係性が得られないC’の結果」も同時に検証する(現代人にはこれが完全に欠落している)。これが「ウパニャーヤ」である。それによって、初めて「D:結論(Nigamana)」が導かれる。したがって、「ウパニャーヤ」によって、当初仮定・想定された「C」とは、異なる性質の「C’」「C’’」などが得られた場合、「A」に立ち戻って、新たに「B’」を想定せねば、「正しいD」には至れないのである。

例えば「発熱・下痢・嘔吐・頭痛」などの「A」を確認した後「炎症:B」が疑われ、それが確認されたからと言って、「C」は「外因(細菌、ウィルス、外からの衝撃)」ばかりではなく「アレルギー、自己免疫機能不調」も在り得る。また「第五段階:アレルギーや自己免疫機能不調」は、「第四段階:基礎体力低下」が発した「SOS」であるとしたら、そこには「第三段階:恒常性機能・自然治癒力の根本的な不調」があり、その要因には「第二段階:精神性(被害者意識や自意識過剰)」があり、それを導き増徴させた元凶には「第一段階:思考力・脳機能のアンバランスな稼動」を考えねばならない。数百年、「局所対処療法(上記第五段階の対応ばかりだった)」に偏っていた西洋医学も、近年では、上記:第三段階迄は遡って検証する方向性にあるが、第二・第一段階までは考えようとしない。
これは「火の無いところに煙は立たない」のような短絡的で安直な思い込み・決め付けの精神性と価値観・真偽判断を「正当」と思い込んでいる観念依存が元凶である。

ウカル:
古典声楽のスキャット唱法で、「ウ」の発音だけで即興を繰り広げる技法。

ウパマーナ:
ヴェーダ認識論に於ける「類推・比較論」。ニヤーヤ学派では、「アヌマーナ:推論」と対峙すると説かれる。ウパマーナの検証・認識には、必ず「比較対象」が必要。つまり、物事の是非、真贋、審議、高位か下位か?有益か無益か?などには「物差し」と比較・類推が伴い、ここに「観念論」が膨大に介入する危険がある。

「樹木論」で説けば、「枝葉領域」に於ける「二者択一」という近現代の人間社会を支配している偏った思想・価値観・観念に一致し事実具現されている。この結果「十を聞いて、都合の良い、ピンと来た、耳に優しい一二を拾う」という感覚・価値観・審美眼が定着し、これに依存する人間が急増した。

これに対し「根っこ・幹・太枝」に重きを置きつつ枝葉の多様性と価値を認める「論理的な価値観」は、「一を聞いて十を知る」という宇宙観が在る。これが「アヌマーナ」の世界であり、ウパマーナが「これとこれのどちらを選ぶか?」という「二者択一論」であり、本質的に「社会的排除」を導くのに対し、「アヌマーナ」は、「これとこれがあるならば、他にもあれがあるに違いない」という「推論」の世界であり、その価値観と視野は「森羅万象」を俯瞰(感じる)し、「社会的包摂」につながる。

ニャーヤ学派では、「アヌマーナ」の基本構築の後に「アヌマーナ」の現実論・合理性の価値が説かれるが、現代社会は、「アヌマーナ」を欠いた「ウパマーナの感情論」に偏っている。その結果、「アヌマーナ」では、脳機能が全体的にバランスを保って機能・活性化するのに対し、「ウパマーナ」では、偏って部分だけが活性化し、「身体と精神のアンバランス」にも繋がり、様々な不調(病気)の元凶になっている。

ウパ・ヴェーダ:
ブラフマン教の聖典であり、科学の源泉であり、叡智(タントラ)の埋蔵庫である「ヴェーダ」に則して後世に補われた「副読本」「解説書」。「派生」の性質の強いものもあれば、後世恣意的に加筆されたものも少なくなく、真贋見極めの論理力が強く求められる。

ウパ・プラーナ:
ヴェーダがブラフマン教の叡智から生じたのに対し、プラーナは、ヒンドゥー教義の正当性を説く意図が濃厚である。その副読本・解説書であるプラーナの中には、是正・改善の意図が見られるものも少なくないが、逆の恣意的な書き換え・加筆も少なくない。また、ブラフマン教とヴェーダには、教条主義的傾向が少なくないが、プラーナとウパ・プラーナには、大衆迎合性が少なくない。

ウパニシャド:
ヴェーダを更に深く検証した「奥義書」とされる。
「ウパニシャド」と「ウパ・ヴェーダ」の本来の根本的な違いは、後者が、読み手本位で書かれているのに対し、前者は、読み手の理解をむしろ破壊するような性質がある。日本で戦前から言われている「奥義書=禅問答のようである」という解釈は、その性質から生じている。

この性質は「ウパニシャド」の字義に明確に現れている。一般に「ウパ(近くに)ニシャド(座る)」と解され、弟子が師匠と向かい合う禅問答の姿を意味していると説かれる(故に)が、これは表層的な解釈である。(むろんこれもあるが、これだけではない)

「Nishad」は、インド(科学音楽~)古典音楽の「ドレミ」の「シ」の名称でもある。字義には「座る」の他に「止まる・留まる」の意味もある。科学音楽の後にガンダールヴァ音楽(布教のための聴衆向けのパフォーマンス)が隆盛した時代(紀元前後)に、「ヴェーダ回帰主義者」が、「ドレミ(Srgam)は、ヴェーダ詠唱法(単音から二音、そして三音に発展した)にある」と説いた。一般にそれこそが「ドレミ」の発明であり、声のKeyが異なる僧侶が高い声で「ソラシ」で詠唱し、中間音「ファ:Madhiyam=印欧語族のmedium」を入れて「ドレミ」が完成したと説く。しかし事実の「三音詠唱」は、「シドレ」であった。
「ヴェーダ回帰主義者の旋法ヴェーダ起源説」は、このことで脆くも崩れ去る。

試しに「ドレミファソラシー」と「シ」で息の続く限り「シ」を伸ばし、息が切れた後、十数秒間を空けて「ド」を歌ってみて欲しい。同様に「ミレドシー」と「ドより低いシ」に至り、伸ばし、間を空けてから「ド」に至ってみて欲しい。「ヴェーダ唱法のアヌダッタ」と「シ=Nishad=留まる」という意味の奥深さが理解されることであろう。

「師の教えを請う」という「受動的発想・価値観・精神性」は、言わば「安直に楽に答に辿りつきたい」という姑息な精神性でもある。確かに(一般に説かれているように)、「ウパ(近くに)ニシャド(座る)」は、「(答を求めて)ウパ(師の近くに)ニシャド(寄り添い座り、答を得る)」という行為である。しかし、ウパニシャドは、それを否定・拒絶した。師は「答をくれない」のである。
敢えて幼稚な比喩をするが、「ウパニシャッド(という言葉)のより深い解釈」は、「Nishad=立ち止まって考えることに+Upa=副え」ということであり、弟子(読み手)に対し、前述した「ウパニャーヤ:再確認/再考」を指導・要求しているのである。

殆どの現代人は、現代(と言っても、長くは数百年前から、近くは1980年代からのことだが)社会風潮の「情報至上主義」を追認している。それは、かつて中国共産党指導者のひとりが「鼠を良く獲る猫が良い猫だ」と言った感覚・精神性・価値観と同じである。「これを知っておけば大丈夫=分かったことに出来る=分かった気になれる」という「情報」が、「良い情報・正しい情報」であるとしか考えず、他を求めず、むしろ他は否定される。

言い換えれば「考えさせる=思考領域を活性させる=Upa-Nishad」に主眼を置いた「情報・教育」は殆ど存在しない。当然のごとく、「現代的価値のある情報(安直に正解を得たと思わせるだけの)」は、思考力を低下させ、心身全体の本来の姿を破壊させ、様々な心身の不調を招くだけでなく、そのような人間の集合体である社会をも脆弱化→形骸化→崩壊させる。

「ウパニシャド」は、「奥義書」と訳されるとともに「ヴェーダーンタ=究極のヴェーダ」とも言われるが、上記の意味を論理的にご理解下さったならば、「ヴェーダの先(奥)=後に読む」ではなく、むしろ「入門書」であるべきことがご理解いただけるであろう。また、バガヴァド・ギータに於けるクリシュナの語り(説法)も、かなりウパニシャドである。いずれにしてもこれらは、現代人・現代社会に最も欠落している感覚を教えてくれる。今、最も学ぶべきもののひとつではないだろうか。

ウルドゥヴァ・ローカ:
基本三世界(ローカ)の「天界」「地上界」「地獄界」の「地上界(人間・生物界)」のこと。

ウスタード:
イスラム教徒の師匠に対する敬称。アラビヤ語の「先生」だが、インド・パキスタンで最も用いられ、アフガニスタンで7割~8割。アラビヤ、トルコでは滅多に着けられない。つまりそれらの国々ではかなり著名でないと着かないが、インドでは、ムスリム音楽家ほぼ全員に着ける。ちなみにヒンドゥー教徒の場合はパンディットだが、音楽家でなくても医者、教師、弁護士にも着けられ得る。音楽家の場合、ウスタード同様、ほぼ全員につけられる。更にちなみに、スワミーとバグワンは、出家僧侶で、ヨガ・瞑想がある段階以上に到達し、更に悟りの境地に至った聖者を意味し、スワミーは南インドで多く用いられ、バグワンは北インドで多く用いられる。しかし、昇級・昇段資格や試験が在る訳でもなく、自称し、他称する弟子が多ければ成り立ってしまう。これらの敬称は、家庭内、修行所内(弟子同士)では、以下の名前を言わずに敬称だけで会話される(家族的な結束心の顕示)が、外に出てもそれを貫くのは60年代後半の欧米ヒッピーとその後の日本人だけ。「スワミー、バグワンと言えば世界に○○のことだ」の(弟子自身の)自尊をひけらかしているに過ぎないと、現地インド人はそれを観て内心嘲笑している(当然、師の品格も下がる)。外ではむしろフルネームが敬意の現れで、部外者にも好感を持たれる。

ウッタル:
サンスクリット由来の日常的なヒンデゥー語で「北」の意味だが、ヴェーダ関連(科学音楽→古典音楽を含む)の様々な用語に現れる。例えば、インド占星術(ジョティーシュ)の中の古い解析法で用いられる「ナクシャトラ(27-29宿)」は、12星座に適応する際に、必然的に時間・天空座標・12宮とズレるためにまたぐことになる。その中の三種の星宿に「ウッタル○○」と「プールバ○○」の名がある。この三種は同じ名称にウッタルとプールバの冠詞(形容詞)が着くということだが、「北」「東」を意味していない。
それは、「ウッタル(北)」と「プールバ(東)」が、「上」と「下」という観念に通じているからである。

例えば、インド旋法:Ragaは、「ドレミ(ファ)」と「(ファ)ソラシド」の上下の部分(テトラコルド/ペンタコルド:Anga:部分)に分割され、それぞれの性質の合体で旋法全体の性質を説く。その際「ドレミファ(下のテトラコルド)」を「プーラブ・アンガ」、「ソラシド(上のテトラコルド)」を「ウッタル・アンガ」と呼び、「ニーチェー(下の)・アンガ」「ウパル(上の)・アンガ」とは言わない。

これは「ヴァーストゥ(インド方位/風水)」にも共通する観念であり(ヴェーダ及びタントラの叡智は、実に総合的だ)、二つの性質の異なる運気の流れ「北→南」「西→東」の観念が反映され、物理的・現象的な「上下」ではない、形而上の「上下」が、ジョティーシュにも科学音楽にも現れているのである。

故に、ジョティーシュの性格判断でもアーユルヴェーダ音楽療法でも、ブーラブ・ウッタルは、「東・北」ではなく、「形而上の上下」で語っている。「プーラブ(受け皿・受け手系)=享受性・寛容性が豊かだが、貪欲、丸呑み込み、整理整頓が苦手、溜め込む」「ウッタル(発信側・発散側)=豊か・心が広い・博愛的だが、詰めが甘い・細部や結果に無頓着」などの傾向があると説かれたり、「プーラブ(旋法の基音に副う)=落ち着いているが発展性が無い、追認主義に陥りやすい」「ウッタル(旋法の属音に副う)=快活で外交的だが、落ち着きが無い」などの傾向があると説かれる。当然「プーラブ」は、「カパ気質」に偏りがちであり、「ウッタル」は、「ピッタ気質」か「カパ気質」の両極端に至り易い。それは「流れの滞り」が元凶であり、「Vata力」が欠如している場合である。

ウターオー:
叙情歌・キルターン・バジャン・一部の民謡などで、太鼓が歌い手に歌い出しを教える太鼓フレイズを入れること。古典声楽には無い。

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(文章:若林 忠宏

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