180、アーユルヴェーダ音楽療法入門42(用語辞典:エオ/カ行・カ-1-)

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ア行・エ
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エーカ・アートマ・バーヴァム:
「霊的一元論」。あらゆる宗教の奥義が同源に至るという思想。

エカンダ・ヴィーナ
南インドの弦楽器「Vina(Saraswati-Vina/Karnatic-Vina)」でJack-Woodの巨木から切り出し、胴と棹が一体(一刀彫)した楽器。南インドのアーユル・ヴェーダでは、ヴィーナの各部は、人体の各部と相似性(シンクロ)があると説く。

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ア行・オ
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オージャス:
活気・活性力・活力素。物質・身体原材料のダートゥを作るために、食品成分のダートゥを消化・吸収・代謝させる力。アグニ・ピッタの力との共同。または、アグニ・ピッタによって燃焼された後に働く力。また、免疫力のことも言う。現代西洋医学・科学が説く「自律神経・神経伝達物質・酵素・代謝回路・リンパ」や、ここ数年の医学で急速に新発見が増えている「細胞間の連絡経路」などを、紀元前「オージャス」として認知していたことに驚かされる。

オーム:
ブラフマン教時代からの「聖音」。ヒンドゥー教では「A-U-Mの三音」と説かれ、三大神にちなむとされる。ヴェーダ詠唱(Mantra)の基音でもあり、「単音唱法」、「二音唱法」、「三音唱法」を通じて、「基音」である。つまり、ヒンドゥー教徒音楽家にとっては、「Sa=ドレミのド」は「Oum」なのである。
科学音楽(Shastriya-Sangit)の見地から言えば、「A-I-U-E-O-M(N)」の各音は、体の共鳴する部位が全く異なる。当然「Chakra」との関係性も変わってくる。特別な目的で「I-E」をも用いるが、基本が「A-U-M」であることは、極めて理に叶っている。言い換えれば、科学音楽のみならず、古典声楽からバジャン、キールターンに至るまで、「発音と共鳴する部位」が体感出来るほどの「古代科学音楽式ボイス・トレーニング」をせずに歌ったところで、表層的と言うより偽者に過ぎないと言える。(今日インド人声楽家でもマイク頼りの有様だが。これは「声量」の問題ではない)

オーシュディー:
ヴェーダ生物学(植物学)に於ける「花果を着ける一年草(~潅木)」のこと。「花果を着ける樹木」「花果を着ける潅木」「花果を着ける一年草(~潅木)」「根菜」「花果を着けない多年草」の順にSattvaを説く。
菜食主義のバラモン僧侶で「根菜以下」を食さない人は少なくない。
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カ行・カ (-1-)
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カビール
Kabir(1440-1518)。ミーラー・バーイー(15c.)、スール・ダース(16c.)、トゥルスィー・ダース(17c.)と共に「バジャン(バクティー:献身)讃歌」四大詩人に数えられる。四大詩人の中では異色で、ヒンドゥー神秘主義・献身思想のみならず、イスラム系神秘主義も取り込んだ。いずれの詩人も、歌詞は記されて残るが、楽曲は口頭伝承のため、厳密には変形も疑われる。そのような中でもカビールの楽曲は、古典音楽的な曲が少なくない。更にカビールは、献身歌の創作のみならず、思想・哲学の面でも強大な影響力を与え、一説にはシク教・教祖ナーナクにも影響を与えたと言われる。カビールの埋葬に関して、ヒンドゥー教徒の弟子とイスラム教徒の弟子が火葬・土葬で争い遺体を奪い合ったと言われるが、同じ話をグル・ナーナクに関して語るシク教徒は少なくない。前述の「エーカ・アートマ・バーヴァム」を探求した希少な存在(ヴィヴェカナンダも多分にそうだが)と言える。

カーラ(Kala):
時間。ヴェーダ科学に於ける「6宇宙物質(Dravya)」のひとつ。「生命(魂/霊魂)、物質、空間、運動原則、非運動原則」とともに説かれる。「生命は宇宙から来る」と説いていたこともさることながら、アインシュタインの数千年前に「時間」を物質として捉えていたことには驚嘆する。また「動くこと」と「動かないこと」が同価値で説かれ、「動かないことの動き」という感覚が、如何にもヴェーダらしい。「無(空)が在る」「ゼロが在る」とも通じる。

カーラ(Kala):
黒。サンスクリットからヒンディーまで広く一般的な「黒」を意味する語。従って、クリシュナの徒名のひとつである「Shyam」は、厳密には黒ではない。後述のカーリ女神は、確かにもっぱら黒く表現されるがクリシュナは、青く表現される。とは言っても「Shyam」は「青」ではなく、辞書的には、やはり「黒」とされる。(カーリ女神も青で描かれることも少なくない)深い訳がありそうだ。

カーリー(Kali):
10女神(Mahavidya)の一柱。字義的には「Kala(時間)の女性名詞形」と言われるが、何故か「黒(や青)」で描かれることがほとんど。ブラフマン教の神か、ベンガル土着の女神の「時の神=人生・寿命を司る→或る意味死神的」が、プラーナや「デーヴィー・マーハートミャ(女神聖典)」に於ける「ドゥルガー女神が怒り狂って黒色化してカーリーに変じた」という神話の頃に混同したのではないかと思われる。

一方、インド~東南アジア~中国(アフリカも)の田園地帯の脅威は、サイクロンなどによる水害や旱魃の他に、害虫による被害が甚大だった。その犯人はイナゴ系よりもむしろ「黒色化したトノサマバッタ」であった。(私事で恐縮だが)2000年頃、小学生時代から数十年ぶりに昆虫飼育を再開し、甲虫類百数種の他、直翅目数十種を累代飼育していましたが、イナゴは、稲の根(丁度彼の目線・口元の高さ)近くに喰らいついて、少し食べれば稲葉が倒れ食べにくくなると他の稲に向かう。その結果、ほとんどが食べ残しで甚大な被害を与える。ところが、トノサマバッタ(本来の緑色)は、「奇術剣飲み」のように真上を向いて、前足を起用に使って一枚の葉を食べきるので、必要最小限しか被害を与えない。しかし、その殿様が、或る条件に於いて幼虫から成育すると「黒色化」し、更に翅が1.5倍伸び、飛翔力が数倍になり、凶暴化する「突然変異の異常発生」に至り、一国を滅ぼしてしまう(イナゴの十倍の破壊力)。三国志の中に、これを飼育し「突然変異」させ、雇い主の政敵の作物を壊滅させる「虫屋(飛蝗師)」の話が出てくる。以上、余談のようですが、広大なデルタ地帯のベンガルの田園のアニミズムに於いて、全く無縁の話ではないように思えてならない。

カリ・ユガ(Kali-Yuga):
ヒンドゥー・プラーナが説く「時代観念:ユガ」に於ける「繰り返される四時代の第四の時代」。
四時代は、総年数:432万年間で繰り返されるが、「カリ・ユガ」は最も短い43万2千年年間。
「カリ・ユガ」は、BC.3102年に始まったが、「カリ・ユガ」を一年に喩えた時、現在(2019年)は、たったの4日目に過ぎない。要するに「ピンと来ない感覚」でもある。(私は40年前このことをひとりのバラモンから聞いた時、三日ほど思考が停止してしまった。)その一方で、プラーナの時代に「カリ・ユガ」について記した内容、「人間の精神・思考・心の退廃」「社会の崩壊」などが見事に適合していると説く人も多い。「カリ・ユガ」の「カリ」は、悪魔:カリ(Kali)に由来すると言われるが、女神「カーリー(Kali)」は長母音なので、全く別。

カルパナ:
インド古典音楽に於ける「即興演奏」のこと。科学音楽の時代には、これが音楽の本懐だった。「布教劇場音楽(布教芝居の伴奏音楽)」の頃から「作曲された楽曲」が発展したが、早々に「純粋な科学音楽」とは、別な方向に至った。19世紀の南インドでは、イギリス植民政策の後ろ盾で、「作曲されたヒンドゥー讃歌:Kriti」が台頭し、「即興演奏」が激減した。ところが、最近、世界的な「排他的な民族主義とセットになった不気味な復古主義・偽伝統回帰」の風潮に乗ったかのような「即興演奏」が盛んになって来ているが、「旋法(Raga)を道具にしたような自己表現」の様相ばかりで、古録音と比べても雲泥の違いがある。

カリヤーン:
科学音楽~古典音楽の旋法(ラーガ)のひとつ。増四度が特徴。

カーマ:
「愛の神」。後述する「カーマ・スートラ」の極解によって「愛欲・性行為の神」の誤ったイメージが世界的に広まった。

カーマ・スートラ:
4~5c.にヴァーツヤーヤナによって著された「愛の経典」。一般に「愛欲・性行為の経典」のように解されるが、或る意味「家庭医学・夫婦指南書」といった健全な書であると見ることも出来る。確かに古代~中世の一時期、タントリズムの一派に、極端な「欲望肯定主義」も生まれたが、それがタントラの全てはないように、本書も一方面からだけで評価・解釈されることには疑問を禁じえない。むしろ、西洋出版物や、中世オリエント~シルクロードの「宮廷文献」にはない「一般読者向け」の書が何故インドに多かったのか?などの出版文化論に於いて検証されるべきとも考える。

カラ(Kara):
才能、芸術

カラワティー:
インド旋法(Raga)のひとつ。字義は「芸達者な女性」。もしくは「芸術の女神=Saraswati」、サラスワティーは、別に「Raga:Saraswati」がある。Raga:Kalawatiは、昔は「女性だけが歌う(弾く)」とされた。その当時は、師匠が男性の場合、出向して女性歌手に学ぶか、師匠が個人的に部屋で独りで歌うのを、隣の部屋で盗み聞き(無論、了解の上でだが)して学ばねばならなかった。同様に、「教え教わりすると、師弟の一方が早死にするRaga」もその方法で伝授された。

カルナ:
原因。ニャーヤ学派の論理学から見れば、極めて表層的で安直な、言わば「犯人探し」レベルの「原因」がほとんど。従って、「様々な原因の総称」的に理解すべき。
ちなみにニヤーヤ学派に於ける原因は「3Ashiddha/8Hetu/3Vritti/3Vayi」の計17もの「原因」の概念が在る。或る意味「非現実的」でもあるが、以下、筆者(私:若林)の「論理学セラピー(脳機能をデフォルトに戻し様々な異変・不調を治す)」入門編に登場するひとつの課題を紹介すると、ある程度はご理解頂けるのではないか、と期待する。

「新婚旅行のハワイのホテルの部屋に到着するとベッドの上に拳銃が在った」「玩具だろうと思って新郎が新婦に向けて構えてふざけていたら暴発して殺してしまった」「果たして犯人は?」「銃か?銃に実弾が入っていたことか?安全装置が解除されていたことか?銃器規制法の不備か?銃を置いた者か?それとも新郎か?」

(社会に守られていると錯覚=思いたい)現代社会のほとんどの人間が、「新郎には殺意が無い=犯人じゃない=善良な何も悪いことなどして来なかった普通の人間」と考え、新郎以外に「犯人探し/カルナ探し」を行う。しかしニヤーヤ論理に於ける「17の原因」からすれば、上記の6種の全てが紛れも無い原因(犯人)。それ以外にも「11種の原因(犯人)」が存在する。しかし、現実、昨今のテロ事件でも銃乱射事件でも、真っ先に問われるのが「銃規制問題」。上記の喩えで言うならば。「新郎新婦の危機管理意識」なども、最も身近な課題である筈。(個々が日々、トラブルを未然に防ぐ遂行可能な努力法としても)。

デトックス一辺倒の昨今のアーユル・ヴェーダを危惧する理由もこのテーマと同じ。ちなみに(私事で恐縮ですが)15年前、ステロイドをお医者を騙して倍貰って倍飲んでも効かなかった「重症の猫毛アレルギー(朝起きると掻き毟って血だらけ)」だったのに、或る日を境に、15年で3錠も飲んでいない(この10年は皆無)。他の治療法も一切無し。などと言いながら、早々に私も癌で死ぬかも知れませんが。アレルギーや自己免疫疾患、癌、アパシー、鬱病、そして様々なストレス性生活疾患は、「○+○+Karna=発症」という算数レベルの単純な問題に過ぎない。にも拘らず、猫毛だ花粉だ、添加物だ、受動喫煙だ。逆に癒しだ、ストレス解消だ、デトックスだ、と。Karnaのことしか考えない風潮。しかもそれは、必ず何処かで商売が成り立ち、結構な儲けになっている。私がステロイドを飲まずに済んでいる為に掛かった費用はゼロ。気づかせて下さったのは、実はお医者さんだから、皮肉な話です。
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若林は現在、福岡及び近郊の方の「通いレッスン」の他に、全国の民族音楽・民族楽器ファンの方々にSkypeでのレッスンを実施しています。体験の為に、インド楽器とVedic-Chant、アーユルヴェーダ音楽療法の「無料体験講座」も行っています。詳しくは「若林忠宏・民族音楽教室」のFacebook-Page「Zindagi-e-Mosiqui(毎月の実施日時も掲載しています)」か、若林のTime-Lineにメッセージでお尋ね下さい。 九州に音楽仲間さんが居らっしゃる方は是非、ご周知下さると幸いです。

また、本連載コラムのテーマでも重要な、「現代人に大きく欠落している論理性」につきましては、論理力育成Mail-Lessonをご教授しています。
心と体の健康(本来のバランス力を取り戻す)の為に欠かせない。脳機能を本来の姿・力に戻すための講座です。ヨガ、瞑想、アーユルヴェーダ音楽療法の全てにとっても、極めて重要な基本です。論理力を高めると、世界観さえ変わって(むしろ神秘・スピリチュアルなことが、新鮮に敏感に深く理解出来るようになります)来ます。
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chametabla@yahoo.co.jp 若林

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(文章:若林 忠宏

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