バガヴァッド・ギーター第2章第17節

अविनाशि तु तद् विद्धि
avināśi tu tad viddhi
アヴィナーシ トゥ タッド ヴィッディ
不滅のそれを知れ

avināśi【中性・単数・対格、a-vi√naś】不滅の、不壊の、滅びないことの;腐敗しないことの;毀損しないことの
tu【接続詞】しかし、一方(虚辞としても使用)
tat【中性・単数・対格、指示代名詞 tad】それを、あれを
viddhi【二人称・単数・パラスマイパダ・命令法 √vid】[あなたは]知れ、理解せよ、気付け、学べ

येन सर्वम् इदं ततम् ।
yena sarvam idaṁ tatam |
イェーナ サルヴァム イダン タタム
この全世界に遍満するもの

yena【中性・単数・具格、関係代名詞 yad】それによって(by which)。sarvam idam以下を受ける関係代名詞。
sarvam【中性・単数・対格】すべての、一切の、各々の;全体の
idam【中性・単数・対格、指示代名詞 idam】これを、これに
→sarvam idam:このすべてに、全世界に、全宇宙に
tatam【中性・単数・対格、過去受動分詞 √tan】広げられた、伸ばされた、拡張された;(具格)に覆われた;充満された、遍満された

विनाशम् अव्ययस्यास्य
vināśam avyayasyāsya
ヴィナーシャム アヴィヤヤッスヤースヤ
この不滅のものの破壊を

vināśam【男性・単数・対格、vi√naś】消失を、中止を、喪失を;分解を、破壊を、滅亡を
avyayasya【中性・単数・属格】不滅の、不変の;慳貪の
asya【中性・単数・属格、指示代名詞 idam】これの、この

न कश्चित् कर्तुम् अर्हति ॥
na kaścit kartum arhati ||
ナ カシュチット カルトゥム アルハティ
行うことは誰もできない

na【否定辞】〜でない
kaścit【男性・単数・主格、不定代名詞、kim + cit】誰か、誰かある人
kartum【不定詞 √kṛ】為すこと、行うこと、作ること
arhati【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 √arh】[彼は]〜できる、資格がある、権利がある;価値がある、匹敵する

अविनाशि तु तद्विद्धि येन सर्वमिदं ततम् ।
विनाशमव्ययस्यास्य न कश्चित्कर्तुमर्हति ॥ १७ ॥

avināśi tu tadviddhi yena sarvamidaṁ tatam |
vināśamavyayasyāsya na kaścitkartumarhati || 17 ||
この全世界に遍満するものは、不滅であると知りなさい。
この不滅のものを破壊することは、誰にもできない。

バガヴァッド・ギーター第2章第16節

नासतो विद्यते भावो
nāsato vidyate bhāvo
ナーサトー ヴィッディヤテー バーヴォー
非有には存在はない(身体には永続はない)

na【否定辞】〜でない
asatas【中性・単数・属格、現在分詞 a√as】非実在にとって、非有にとって、無有にとって;虚偽にとって、不実にとって
※非有:変化し有限なる肉体のこと(辻直四郎注)。
vidyate【三人称・単数・現在・受動活用 √vid】それはある、それは存在する、それは見られる
bhāvas【男性・単数・主格】存在は、在ることは;永続は、存続は;生成することは、生起することは

नाभावो विद्यते सतः ।
nābhāvo vidyate sataḥ |
ナーバーヴォー ヴィッディヤテー サタハ
実有には非存在はない(個我には断滅はない)

na【否定辞】〜でない
abhāvas【男性・単数・主格】非存在は;壊滅は、断滅は
vidyate【三人称・単数・現在・受動活用 √vid】それはある、それは存在する、それは見られる
satas【中性・単数・属格、現在分詞 √as】存在しているものにとって、実在にとって、実有にとって;現実の世界にとって
※実有:不変にして無限なる自我、すなわち個人の本体プルシャ(辻直四郎注)。

उभयोर् अपि दृष्टो ऽन्तस्
ubhayor api dṛṣṭo ‘ntas
ウバヨール アピ ドリシュトー ンタス
両者の境界は見られた

ubhayos【女性・両数・属格】両方の、双方の
api【不変化辞】さらに、また、とても(強意を示す)
→ubhayor api:双方いずれもの中に
dṛṣṭas【中性・単数・主格、過去受動分詞 √dṛś】見られた;観察された、認められた、看破された;経験された
antas【男性・単数・主格】境界は、端は、終端は、限界は;終局は、結末は

त्वनयोर् तत्त्वदर्षिभिः ॥
tvanayor tattvadarṣibhiḥ ||
トヴァナヨール タットヴァダルシビヒ
しかし、この両者の真理を知る人々によって

tu【接続詞】しかし、一方
anayos【男性・両数・属格、指示代名詞 idam】これら二つの、この両者の
tattva【中性】(それなること)、真の本質、真実の本性、真理、実在
darṣibhis【男性・複数・具格 √dṛś】見る人々によって、知る人々によって
→tattvadarṣibhis【男性・複数・具格、限定複合語】真理を見る人々によって、真理を知る人々によって

नासतो विद्यते भावो नाभावो विद्यते सतः ।
उभयोरपि दृष्टोऽन्तस्त्वनयोर्तत्त्वदर्षिभिः ॥ १६ ॥

nāsato vidyate bhāvo nābhāvo vidyate sataḥ |
ubhayorapi dṛṣṭo’ntastvanayortattvadarṣibhiḥ || 16 ||
非有(身体)には永続はなく、実有(個我)には断滅はない。
しかし、この両者の境界は、真理を知る人々によって見られる。

バガヴァッド・ギーター第2章第15節

यं हि न व्यथयन्त्येते
yaṁ hi na vyathayantyete
ヤン ヒ ナ ヴィヤタヤンティエーテー
これらに悩まされない

yam【男性・単数・対格、関係代名詞 yad】以下のsasを受ける関係代名詞
hi【不変化辞】なぜならば、〜のために;真に、確かに、実に
na【否定辞】〜でない
vyathayanti【三人称・複数・パラスマイパダ・現在・使役活用 √vyath】[それらが]揺れさせる、迷わせる;不安にする、苦しめる、悩ます、怒らせる、苦痛を与える
ete【男性・複数・主格、指示代名詞 etad】これらが(物質との接触が)

पुरुषं पुरुषर्षभ ।
puruṣaṁ puruṣarṣabha |
プルシャン プルシャルシャバ
人、アルジュナよ

puruṣam【男性・単数・対格】人;人間;霊魂;個人の本体、普遍的霊魂、最高精神
puruṣarṣabha【男性・単数・呼格】牡牛のような人よ、人中の雄牛よ、優れた人よ、王よ。一般にアルジュナを指すが、状況を報告するサンジャヤから、ドリタラーシュトラ王への呼びかけともとれる。

समदुःखसुखं धीरं
samaduḥkhasukhaṁ dhīraṁ
サマドゥフカスカン ディーラン
苦楽を等しく見る賢者

sama【副詞】等しく、同様に、同じように
duḥkha【中性】不安、心配、苦痛、悲しみ、悲哀、困難、苦しみ
sukham【中性・単数・対格】安楽、歓喜、幸福、享楽、繁栄、成功
→samaduḥkhasukham【男性・単数・対格、所有複合語】苦楽を等しく見る、幸・不幸を平等視する
dhīram【男性・単数・対格】賢明な、思慮のある、賢い、博学の、利口な

सो ऽमृतत्वाय कल्पते ॥
so ‘mṛtatvāya kalpate ||
ソー ムリタットヴァーヤ カルパテー
彼は不死に値する

sas【男性・単数・主格、指示代名詞 tad】これは、あれは、彼は
amṛtatvāya【中性・単数・為格】不死に;不滅者の世界に、天界に;最終的な解脱に
kalpate【三人称・単数・アートマネーパダ・現在 √kḷp】彼は値する、彼は適する、彼は相応する;彼は加わる;彼はなる

यं हि न व्यथयन्त्येते पुरुषं पुरुषर्षभ ।
समदुःखसुखं धीरं सोऽमृतत्वाय कल्पते ॥ १५ ॥

yaṁ hi na vyathayantyete puruṣaṁ puruṣarṣabha |
samaduḥkhasukhaṁ dhīraṁ so’mṛtatvāya kalpate || 15 ||
これらの接触に悩まされない人、苦楽を等しく見る賢者、
アルジュナよ、彼は不死となるにふさわしい。

バガヴァッド・ギーター第2章第14節

मात्रास्पर्शास् तु कौन्तेय
mātrāsparśās tu kaunteya
マートラースパルシャース トゥ カウンテーヤ
しかし、アルジュナよ、物質との接触は

mātrā【女性】要素;物質、物質的世界;財産、貨幣;家具;装飾品
sparśās【男性・複数・主格、√spṛśから派生した名詞】接触は、感触は
→mātrāsparśās【男性・複数・主格、同格限定複合語】物質との接触は
※「物質」mātrāとは、五元素(地・水・火・風・虚空)の本質的性質である香・味・色・音・触覚を指す(宇野惇注)。
tu【接続詞】しかし、一方
kaunteya【男性・単数・呼格】クンティーの息子よ。アルジュナの別名。

शीतोष्णसुखदुःखदाः ।
śītoṣṇasukhaduḥkhadāḥ |
シートーシュナスカドゥフカダーハ
寒暑、苦楽をもたらすもの

śīta【中性】寒い、冷たい、涼しい
uṣṇa【中性】暑い、熱い、あたたかい
sukha【中性】安楽、歓喜、幸福、享楽、繁栄、成功
duḥkha【中性】不安、心配、苦痛、悲しみ、悲哀、困難、苦しみ
dās【男性・複数・主格】もたらすもの、引き起こすもの、与えるもの
→śītoṣṇasukhaduḥkhadās【男性・複数・主格】寒暑、苦楽をもたらすもの

आगमापायिनो ऽनित्यास्
āgamāpāyino ‘nityās
アーガマーパーイノー ニッティヤース
来ては去り、儚いもの

āgama【形容詞、ā√gam】近づく
apāyinas【男性・複数・主格、apa√i】去る、出発する
→āgamāpāyinas【男性・複数・主格】往来する;通りがかりの、暫時の
anityās【男性・単数・主格】無常の、永続しない;一時的な、はかない、束の間の;不安定の、流動的な

तांस् तितिक्षस्व भारत ॥
tāṁs titikṣasva bhārata ||
ターンス ティティクシャスヴァ バーラタ
それらに耐えよ、アルジュナよ

tān【男性・複数・対格、指示代名詞 tad】それらに、それらを
titikṣasva【二人称・単数・アートマネーパダ・命令法、意欲活用 √tij】耐えよ、堪えよ、忍耐せよ
bhārata【男性・単数・呼格】バラタの子孫よ。ここではアルジュナのことを指す。

मात्रास्पर्शास्तु कौन्तेय शीतोष्णसुखदुःखदाः ।
आगमापायिनोऽनित्यास्तांस्तितिक्षस्व भारत ॥ १४ ॥

mātrāsparśāstu kaunteya śītoṣṇasukhaduḥkhadāḥ |
āgamāpāyino’nityāstāṁstitikṣasva bhārata || 14 ||
しかし、アルジュナよ、物質との接触は、寒暑や苦楽をもたらし、
来ては去り、儚いものである。それらに耐えなさい、アルジュナよ。

バガヴァッド・ギーター第2章第13節

देहिनो ऽस्मिन् यथा देहे
dehino ‘smin yathā dehe
デーヒノー スミン ヤター デーヘー
個我にとって、この身体において

dehinas【男性・単数・属格】生物にとって;人間にとって;(肉体をそなえた)精神にとって、魂にとって;個我にとって、自我にとって。
※「デーヒン」(身体をもつもの)。宇宙の本質としての普遍的なアートマン(普遍我)=ブラフマン(梵)に対して、個体の中に宿った、個体の本質としてのアートマンのこと。このアートマンは、人の死後、身体から抜け出して存続し、次の身体に宿る(服部正明注)。
asmin【男性・単数・処格、指示代名詞 idam】ここにおいて
yathā【接続詞】〜のように、あたかも〜のように(tathāとともに)
dehe【男性・中性・単数・処格】身体において、肉体において

कौमारं यौवनं जरा ।
kaumāraṁ yauvanaṁ jarā |
カウマーラン ヤウヴァナン ジャラー
少年期、青年期、老年期があるように

kaumāram【中性・単数・主格】子供[幼少・幼年]時代、幼少期、児童期
yauvanam【中性・単数・主格】青年時代、青年期
jarā【女性・単数・主格】老齢、老い;老年期

तथा देहान्तरप्राप्तिर्
tathā dehāntaraprāptir
タター デーハーンタラプラープティル
同様に、他の身体を獲得する

tathā【副詞】そのように、同様に;そして、また
deha【男性・中性】身体、肉体
antara【形容詞】他の;近くの;内部の
prāptis【女性・単数・主格、pra√āpから派生】達成、獲得、利得;遭遇;発生
→dehāntaraprāptis【女性・単数・主格、限定複合語】他の身体を獲得すること、他の肉体に至ること

धीरस् तत्र न मुह्यति ॥
dhīras tatra na muhyati ||
ディーラス タットラ ナ ムッヒャティ
そのことについて、賢者は惑わされない

dhīras【男性・単数・主格】賢明な、思慮のある、賢い、博学の、利口な
tatra【副詞】そこに;そこへ;ここに;それのために、その場合に、その時に
na【否定辞】〜でない
muhyati【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 √muh】彼は迷う、彼は困惑する、彼は混乱する;彼は誤る、彼は欺かれる、彼は惑わされる

देहिनोऽस्मिन् यथा देहे कौमारं यौवनं जरा ।
तथा देहान्तरप्राप्तिर्धीरस्तत्र न मुह्यति ॥ १३ ॥

dehino’smin yathā dehe kaumāraṁ yauvanaṁ jarā |
tathā dehāntaraprāptirdhīrastatra na muhyati || 13 ||
個我は、この身体において、少年期、青年期、老年期を経るように、来世には他の身体を獲得する。
そのことについて、賢者は惑わされない。

バガヴァッド・ギーター第2章第12節

न त्वेवाहं जातु नासं
na tvevāhaṁ jātu nāsaṁ
ナ トヴェーヴァーハン ジャートゥ ナーサン
私は未だかつて存在しなかったことはない

na【否定辞】〜でない
tu【接続詞】しかし、一方(虚辞としても使用)
eva【副詞】実に、真に(強意を表す。しばしば虚辞として使用)
aham【単数・主格、一人称代名詞 mad】私は
jātu【副詞】全然、確かに;少なくとも、概して、おそらく;今まで、かつて
→na … jātu:決して〜せず、少なくとも〜せず
na【否定辞】〜でない
āsam【一人称・単数・パラスマイパダ・過去 √as】私はあった、私は存在した

न त्वं नेमे जनाधिपाः ।
na tvaṁ neme janādhipāḥ |
ナ トヴァン ネーメー ジャナーディパーハ
あなたも、これらの王たちも

na【否定辞】〜でない
tvam【単数・主格、二人称代名詞 tvad】あなたは
na【否定辞】〜でない
ime【男性・複数・主格、指示代名詞 idam】これらは
janādhipās【男性・複数・主格】王たちは、支配者たちは
→na … na …:〜も、〜もない

न चैव न भविष्यामः
na caiva na bhaviṣyāmaḥ
ナ チャイヴァ ナ バヴィッシャーマハ
そして、私たちは存在しなくなることはない

na【否定辞】〜でない
ca【接続詞】そして、また、〜と
eva【副詞】実に、真に(強意を表す。しばしば虚辞として使用)
na【否定辞】〜でない
bhaviṣyāmas【一人称・複数・パラスマイパダ・未来 √bhū】私たちはあるだろう、私たちは存在するだろう

सर्वे वयम् अतः परम् ॥
sarve vayam ataḥ param ||
サルヴェー ヴァヤム アタハ パラム
私たちすべては、これから先

sarve【男性・複数・主格】すべては、一切は
vayam【複数・主格、一人称代名詞 asmad】私たちは
atas【副詞】これより、ここより
param【副詞】それから、さらに、その後
→atas param:これから先、これから後

न त्वेवाहं जातु नासं न त्वं नेमे जनाधिपाः ।
न चैव न भविष्यामः सर्वे वयमतः परम् ॥ १२ ॥

na tvevāhaṁ jātu nāsaṁ na tvaṁ neme janādhipāḥ |
na caiva na bhaviṣyāmaḥ sarve vayamataḥ param || 12 ||
私は未だかつて存在しなかったことはない。あなたも、ここにいる王たちもそうだ。
そして、私たちはすべて、これから先、存在しなくなることもない。

バガヴァッド・ギーター第2章第11節

श्रीभगवान् उवाच ।
śrībhagavān uvāca |
シュリーバガヴァーン ウヴァーチャ
クリシュナは語った

śrībhagavān【男性・単数・主格】栄光ある方、神聖な神、威厳ある尊者。ここではクリシュナのことを指す。
uvāca【三人称・単数・パラスマイパダ・完了 √vac】彼は言った、彼は語った

अशोच्यान् अन्वशोचस् त्वं
aśocyān anvaśocas tvaṁ
アショーチャーン アンヴァショーチャス トヴァン
あなたは嘆くべきでない人々について嘆いた

aśocyān【男性・複数・対格、未来受動分詞(動詞的形容詞、義務分詞) a√śuc】嘆くべきでない人々を、悲しむべきでない人々を
anvaśocas【二人称・単数・パラスマイパダ・過去 anu√śuc】あなたは嘆いた、あなたは悲しんだ
tvam【単数・主格、二人称代名詞 tvad】あなたは

प्रज्ञावादांश्च भाषसे ।
prajñāvādāṁśca bhāṣase |
プラジュニャーヴァーダーンシュチャ バーシャセー
しかも、あなたは一見聡明な言葉を語る

prajñā【女性】識別、判断、知能、了解;智慧、知
vādān【男性・複数・対格】談話を、発言を、陳述を;〜に関する言葉を
→prajñāvādān【男性・複数・対格、限定複合語】智慧の言葉を;一見聡明な言葉を、智慧のあるような言葉を、分別あるかのような言葉を
ca【接続詞】そして、また、〜と
bhāṣase【二人称・単数・アートマネーパダ・現在 √bhāṣ】あなたは語る、あなたは話す

गतासून् अगतासूंश्च
gatāsūn agatāsūṁśca
ガタースーン アガタースーンシュチャ
死者たちや生者たちを

gatāsūn【男性・複数・対格】死者たちを、死人たちを
agatāsūn【男性・複数・対格】生者たちを
ca【接続詞】そして、また、〜と

नानुशोचन्ति पण्डिताः ॥
nānuśocanti paṇḍitāḥ ||
ナーヌショーチャンティ パンディターハ
賢者たちは嘆かない

na【否定辞】〜でない
anuśocanti【三人称・複数・パラスマイパダ・現在 anu√śuc】彼らは嘆く、彼らは悲しむ
paṇḍitās【男性・複数・主格】学者たちは、学問のある人たちは、賢い人たちは、師たちは

श्रीभगवान् उवाच ।
अशोच्यानन्वशोचस्त्वं प्रज्ञावादांश्च भाषसे ।
गतासूनगतासूंश्च नानुशोचन्ति पण्डिताः ॥ ११ ॥

śrībhagavān uvāca |
aśocyānanvaśocastvaṁ prajñāvādāṁśca bhāṣase |
gatāsūnagatāsūṁśca nānuśocanti paṇḍitāḥ || 11 ||
クリシュナは語りました。
あなたは嘆くべきでない人々について嘆く。しかも、一見聡明な言葉を語る。
賢者は、死者や生者について嘆くことはない。

バガヴァッド・ギーター第2章第10節

तम् उवाच हृषीकेशः
tam uvāca hṛṣīkeśaḥ
タム ウヴァーチャ フリシーケーシャハ
クリシュナは彼に言った

tam【男性・単数・対格、指示代名詞 tad】彼に
uvāca【三人称・単数・パラスマイパダ・完了 √vac】彼は言った、彼は語った
hṛṣīkeśas【男性・単数・主格】フリシーケーシャは。クリシュナの別名。名前は「感官の主」〔hṛṣīka(感官) + iśa(主)〕、あるいは「髪を逆立てている者」〔hṛṣī(逆立てている) + keśa(髪)〕の意。

प्रहसन्न् इव भारत ।
prahasann iva bhārata |
プラハサン イヴァ バーラタ
微笑むかのように、バラタの子孫よ

prahasant【男性・単数・主格、現在分詞 pra√has】笑って、微笑して
iva【副詞】〜のように、〜と同様に、言わば
bhārata【男性・単数・呼格】バラタの子孫よ。ここでは状況を報告するサンジャヤから、ドリタラーシュトラ王への呼びかけとなる。

सेनयोर् उभयोर् मध्ये
senayor ubhayor madhye
セーナヨール ウバヨール マッディエー
両軍の中間において

senayos【女性・両数・属格】二つの軍隊の、二つの軍勢の
ubhayos【女性・両数・属格】両方の、双方の
madhye【中性・単数・処格】中央において、中心において、中間において

विषीदन्तम् इदं वचः ॥
viṣīdantam idaṁ vacaḥ ||
ヴィシーダンタム イダン ヴァチャハ
沈み込んでいる、この言葉を

viṣīdantam【男性・単数・対格、現在分詞 vi√sad】絶望している、落胆している、失望している、沈み込んでいる、疲れ切っている
idam【中性・単数・対格、指示代名詞 idam】これを
vacas【中性・単数・対格】言葉を、話を;忠告を、助言を

तमुवाच हृषीकेशः प्रहसन्निव भारत ।
सेनयोरुभयोर्मध्ये विषीदन्तमिदं वचः ॥ १० ॥

tamuvāca hṛṣīkeśaḥ prahasanniva bhārata |
senayorubhayormadhye viṣīdantamidaṁ vacaḥ || 10 ||
大王よ、クリシュナは微笑むかのように、
両軍の間で沈み込む彼に、次の言葉を語りました。

バガヴァッド・ギーター第2章第9節

संजय उवाच ।
saṁjaya uvāca |
サンジャヤ ウヴァーチャ
サンジャヤは言った

saṁjayas【男性・単数・主格】サンジャヤは。ドリタラーシュトラ王に仕える吟唱詩人。
uvāca【三人称・単数・パラスマイパダ・完了 √vac】彼は言った、彼は語った

एवम् उक्त्वा हृषीकेशं
evam uktvā hṛṣīkeśaṁ
エーヴァム ウクトヴァー フリシーケーシャン
クリシュナにこのように言って

evam【副詞】このように、こんなふうに、そんなふうに
uktvā【絶対分詞 √vac】言って、話して
hṛṣīkeśam【男性・単数・対格】フリシーケーシャに。クリシュナの別名。名前は「感官の主」〔hṛṣīka(感官) + iśa(主)〕、あるいは「髪を逆立てている者」〔hṛṣī(逆立てている) + keśa(髪)〕の意。

गुडाकेशः परंतप ।
guḍākeśaḥ paraṁtapa |
グダーケーシャハ パランタパ
敵を悩ます者アルジュナは、

guḍākeśas【男性・単数・主格】グダーケーシャは。アルジュナの別名。名前は「濃い毛髪の者」〔guḍā(濃い) + keśa(髪)〕の意。
(「睡眠の主」guḍāka(睡眠) + iśa(主)ととられる場合があるが、guḍākeśaを説明するための当て字とされ、アルジュナが睡眠の主である記述は古典で見あたらないといわれる)
paraṁtapa【男性・単数・呼格】敵を悩ます者よ。アルジュナのこと。paraṁtapasとして主格が採用される場合がある。また別の解釈では、サンジャヤからドリタラーシュトラ王への呼びかけとみる場合がある。

न योत्स्य इति गोविन्दम्
na yotsya iti govindam
ナ ヨーツシャ イティ ゴーヴィンダム
「私は戦わない」と、クリシュナに

na【否定辞】〜でない
yotsye【一人称・単数・アートマネーパダ・未来 √yudh】私は戦うだろう、私は対戦するだろう
iti【副詞】〜と、〜ということ、以上(しばしば引用句の後に置かれる)
govindam【男性・単数・対格】ゴーヴィンダに。クリシュナの別名。名前は「牛飼いの主」の意。

उक्त्वा तूष्णीं बभूव ह ॥
uktvā tūṣṇīṁ babhūva ha ||
ウクトヴァー トゥーシュニーン バブーヴァ ハ
言って、彼は沈黙した

uktvā【絶対分詞 √vac】言って、話して
tūṣṇīm【副詞】黙して、沈黙して
babhūva【三人称・単数・パラスマイパダ・完了 √bhū】彼は〜となった、彼は〜した
ha【不変化辞】もちろん、確かに(先行する語を強調する付加語);詩の終わりに用いられる意味を持たない虚辞

संजय उवाच ।
एवमुक्त्वा हृषीकेशं गुडाकेशः परंतप ।
न योत्स्य इति गोविन्दमुक्त्वा तूष्णीं बभूव ह ॥ ९ ॥

saṁjaya uvāca |
evamuktvā hṛṣīkeśaṁ guḍākeśaḥ paraṁtapa |
na yotsya iti govindamuktvā tūṣṇīṁ babhūva ha || 9 ||
サンジャヤは言いました。
アルジュナはクリシュナにこのように言うと、
クリシュナに「私は戦わない」と告げて、沈黙しました。

※この節から、シュローカの韻律に戻ります。第2章5節〜8節のトリシュトゥブの韻律は、アルジュナの苦悩を強調し、クリシュナの教説へと導く場面展開の役割を担っています。

バガヴァッド・ギーター第2章第8節

न हि प्रपश्यामि ममापनुद्याद्
na hi prapaśyāmi mamāpanudyād
ナ ヒ プラパッシャーミ ママーパヌッディヤード
なぜならば私は分からない、追い払われるべき私の

na【否定辞】〜でない
hi【不変化辞】なぜならば、〜のために;真に、確かに、実に
prapaśyāmi【一人称・単数・パラスマイパダ・現在 pra√paś】私は知る;私は予知する;私は判断する;私は見る
mama【単数・属格、一人称代名詞 mad】私の
apanudyāt【三人称・単数・パラスマイパダ・祈願法 apa√nud】それは追い払われるべき、それは追放されるように、それは取り除かれるだろう

यच्छोकम् उच्छोषणम् इन्द्रियाणाम् ।
yacchokam ucchoṣaṇam indriyāṇām |
ヤッチョーカム ウッチョーシャナム インドリヤーナーム
感官を涸らす悲しみを

yat【中性・単数・対格、関係代名詞 yad】apanudyātを受ける関係代名詞。
śokam【男性・単数・対格】苦悩を、悲しみを、悲哀を、苦痛を
ucchoṣaṇam【男性・単数・対格】乾かす、乾燥させる、涸らす
indriyāṇām【男性・複数・属格】感官の;感覚の;活力の、精力の

अवाप्य भूमावसपत्नं ऋद्धं
avāpya bhūmāvasapatnaṁ ṛddhaṁ
アヴァーピヤ ブーマーヴァサパットナン リッダン
地上において、比類ない繁栄を獲得して

avāpya【絶対分詞 ava√āp】獲得して、得て、入手して
bhūmau【女性・単数・処格】大地において、地上において
asapatnam【中性・単数・対格】比類のない、並びない、競争者のない
ṛddham【中性・単数・対格】繁栄を、安寧を、幸運を;富を

राज्यं सुराणाम् अपि चाधिपत्यम् ॥
rājyaṁ surāṇām api cādhipatyam ||
ラージャン スラーナーム アピ チャーディパティヤム
王国を、さらに神々の支配権をも

rājyam【中性・単数・対格】王国を、王権を、王位を
surāṇām【男性・複数・属格】神々の
api【接続詞】〜もまた、さえも、さらに
ca【接続詞】そして、また、〜と
→api ca:さらにまた、同様に、〜も〜も
ādhipatyam【中性・単数・対格】主権を、支配権を、王権を

न हि प्रपश्यामि ममापनुद्याद् यच्छोकमुच्छोषणमिन्द्रियाणाम् ।
अवाप्य भूमावसपत्नंऋद्धं राज्यं सुराणामपि चाधिपत्यम् ॥ ८ ॥

na hi prapaśyāmi mamāpanudyād yacchokamucchoṣaṇamindriyāṇām |
avāpya bhūmāvasapatnaṁṛddhaṁ rājyaṁ surāṇāmapi cādhipatyam || 8 ||
なぜなら、地上において、比類なき繁栄の王国を得ても、また神々の支配権を手にしても、
感官を涸らす私の悲しみを追い払う方法が、私には分からないのです。