バガヴァッド・ギーター第2章第54節

अर्जुन उवाच ।
arjuna uvāca |
アルジュナ ウヴァーチャ
アルジュナは言った

arjunas【男性・単数・主格】アルジュナは
uvāca【三人称・単数・パラスマイパダ・完了 √vac】[彼は]言った、話した

स्थितप्रज्ञस्य का भाषा
sthitaprajñasya kā bhāṣā
スティタプラジュニャスヤ カー バーシャー
智慧の定まった者の特徴は、どのようなものか

sthitaprajñasya【男性・単数・属格、所有複合語、sthita-prajña】確固とした智慧のある、叡知の堅固な、智慧が安定した、叡知の定まった
kā【女性・単数・主格、疑問代名詞 kim】何、誰、なぜ、どんな、どのように
bhāṣā【女性・単数・主格】言葉、談話、言語;日常語、口語、方言;記述、定義;告訴、告発、起訴

समाधिस्थस्य केशव ।
samādhisthasya keśava |
サマーディスタッスヤ ケーシャヴァ
三昧に住する者の、クリシュナよ

samādhisthasya【男性・単数・属格、所有複合語、samādhi-stha】瞑想に専念している、三昧に住する
keśava【男性・単数・呼格】ケーシャヴァよ。クリシュナの別名。名前は「美しい(長い)髪をもつ者」の意。

स्थितधीः किं प्रभाषेत
sthitadhīḥ kiṁ prabhāṣeta
スティタディーヒ キン プラバーセータ
叡知の確立した者は、どのように語り

sthitadhīs【女性・単数・主格、所有複合語、sthita-dhī】心の堅固な、叡知の確立した、思慮の安定した
kim【中性・単数・主格、疑問代名詞】何が、誰が、なぜ、どんな、どのように
prabhāṣeta【三人称・単数・アートマネーパダ・願望法 pra-√bhāṣ】[彼は〜だろう、彼は〜するべき]宣言する、告げる、言明する;暴露する;言う、話す;説明する;名付ける;(対格)と対話する

किम् आसीत व्रजेत किम् ॥
kim āsīta vrajeta kim ||
キム アーシータ ヴラジェータ キム
どのように坐し、どのように歩むだろうか

kim【中性・単数・主格、疑問代名詞】何が、誰が、なぜ、どんな、どのように
āsīta【三人称・単数・アートマネーパダ・願望法 √ās】[彼は〜だろう、彼は〜するべき]坐す;住する、止まる;住居を構う;屯営する;休む、留まる、横たわる
vrajeta【三人称・単数・アートマネーパダ・願望法 √vraj】[彼は〜だろう、彼は〜するべき]行く、歩む、進む、旅行する、動く;達する

अर्जुन उवाच ।
स्थितप्रज्ञस्य का भाषा समाधिस्थस्य केशव ।
स्थितधीः किं प्रभाषेत किमासीत व्रजेत किम् ॥ ५४ ॥

arjuna uvāca |
sthitaprajñasya kā bhāṣā samādhisthasya keśava |
sthitadhīḥ kiṁ prabhāṣeta kimāsīta vrajeta kim || 54 ||
アルジュナは尋ねました。
「クリシュナよ、智慧が定まり、三昧に留まる人の特徴はどのようなものでしょうか。
叡知が確立した人は、どのように語り、どのように坐し、どのように歩むのでしょうか。」

バガヴァッド・ギーター第2章第53節

श्रुतिविप्रतिपन्ना ते
śrutivipratipannā te
シュルティヴィプラティパンナー テー
聞くことに惑わされたあなたの(知性が)

śruti【女性】聞くこと、傾聴;音響、騒音;伝統的な宗教的教義、聖典(ヴェーダ)
vipratipannā【女性・単数・主格、過去受動分詞 vi-prati√pad】惑わされた、当惑した、困惑した;誤り、間違い、相違
→śrutivipratipannā【女性・単数・主格、限定複合語】聞くことに惑わされた、聖典から乖離した、ヴェーダの教義を軽視した
te【単数・属格、二人称代名詞 tvad】あなたの

यदा स्थास्यति निश्चला ।
yadā sthāsyati niścalā |
ヤダー スタースヤティ ニシュチャラー
不動のものとして確立する時

yadā【接続詞】〜である時、〜する時
sthāsyati【三人称・単数・パラスマイパダ・未来 √sthā】[それは〜だろう]立つ;静止する;確立する、樹立する、創立する;固定する、決定する
niścalā【女性・単数・主格】不動の;安定した;不変の;不易の

समाधावचलाबुद्धिस्
samādhāvacalābuddhis
サマーダーヴァチャラーブッディス
三昧において動じない知性が

samādhau【男性・単数・処格、samādhi】(処格)に注意することにおいて、〜に熱中していることにおいて;(最高我への)深い瞑想において、深い専心において;三昧において
acalā【女性・単数・主格】不動の、動じない、動かない;山、岩
buddhis【女性・単数・主格】知能、理解力、理性、知性、精神;識別、判断;沈着、機知;知覚;会得;意見、見解;信仰、確信;想定

तदा योगम् अवाप्स्यसि ॥
tadā yogam avāpsyasi ||
タダー ヨーガム アヴァープスヤシ
そのとき、あなたはヨーガに達するだろう

tadā【副詞】そのとき、それから
yogam【男性・単数・対格】ヨーガに;実修に;精神の集中に、瞑想に
※ヨーガ:この場合も、平等の境地をさす。(上村勝彦注)
avāpsyasi【二人称・単数・パラスマイパダ・未来 ava√āp】[あなたは〜だろう]獲得する、得る、入手する;(非難、不和、苦痛等を)被る、苦しむ

श्रुतिविप्रतिपन्ना ते यदा स्थास्यति निश्चला ।
समाधावचलाबुद्धिस् तदा योगमवाप्स्यसि ॥ ५३ ॥

śrutivipratipannā te yadā sthāsyati niścalā |
samādhāvacalābuddhis tadā yogamavāpsyasi || 53 ||
聞くことに惑わされていたあなたの知性が、不動のものとして確立し、
三昧において動じない時、あなたはヨーガに達するだろう。

バガヴァッド・ギーター第2章第52節

यदा ते मोहकलिलं
yadā te mohakalilaṁ
ヤダー テー モーハカリラン
あなたの(知性が)、迷妄の誘惑を(克服する)とき

yadā【接続詞】〜である時、〜する時
te【単数・属格、二人称代名詞 tvad】あなたの
moha【男性】意識の喪失、当惑;迷妄、惑溺;愚行、誤謬
kalilam【男性・単数・対格】大きな堆積を、交錯を、混乱を、無秩序を
→mohakalilam【男性・単数・対格】迷妄の交錯を、迷妄の誘惑を、迷いの叢林を

बुद्धिर् व्यतितरिष्यति ।
buddhir vyatitariṣyati |
ブッディル ヴィヤティタリッシャティ
知性が、克服する

buddhis【女性・単数・主格】知能、理解力、理性、知性、精神;識別、判断;沈着、機知;知覚;会得;意見、見解;信仰、確信;想定
vyatitariṣyati【三人称・単数・パラスマイパダ・未来 vi-ati√tṝ】[それは〜だろう]越えて横切る、克服する

तदा गन्तासि निर्वेदं
tadā gantāsi nirvedaṁ
タダー ガンターシ ニルヴェーダン
そのとき、あなたは無関心になるだろう

tadā【副詞】そのとき、それから
gantāsi【二人称・単数・パラスマイパダ・複合未来 √gam】[あなたは〜だろう]行く、動く、歩む;去る、来る;止む、死す;〜に近づく、〜に達する、〜を得る
nirvedam【男性・単数・対格】〜に関しての嫌悪に;現世からの超脱に、無関心に;絶望に、臆病に

श्रोतव्यस्य श्रुतस्य च ॥
śrotavyasya śrutasya ca ||
シュロータヴィヤッスヤ シュルタッスヤ チャ
これから聞くだろうことと、すでに聞いたことの

śrotavyasya【男性・単数・属格、未来受動分詞(動詞的形容詞、義務分詞) √śru】聞くだろうこと、今後聞くこと、聞かれるべきこと
śrutasya【男性・単数・属格、過去受動分詞 √śru】聞いたこと、すでに聞いたこと
ca【接続詞】そして、また、〜と

यदा ते मोहकलिलं बुद्धिर्व्यतितरिष्यति ।
तदा गन्तासि निर्वेदं श्रोतव्यस्य श्रुतस्य च ॥ ५२ ॥

yadā te mohakalilaṁ buddhirvyatitariṣyati |
tadā gantāsi nirvedaṁ śrotavyasya śrutasya ca || 52 ||
あなたの知性が、迷妄の誘惑を克服するとき、
これから聞くだろうことと、すでに聞いたことを気にかけなくなるだろう。

バガヴァッド・ギーター第2章第51節

कर्मजं बुद्धियुक्ता हि
karmajaṁ buddhiyuktā hi
カルマジャン ブッディユクター ヒ
なぜならば、知性を備えた人々は、行為から生ずる

karmajam【中性・単数・対格、karma√ja】行為より生ずる、行為に原因する
buddhiyuktās【男性・複数・主格、過去受動分詞 √yuj、限定複合語】知能に恵まれた人々は、理解力のある人々は、知性を備えた人々は、心統一した人々は、心を修練した人々は、心の修練を修めた人々は
hi【不変化辞】なぜならば、〜のために;真に、確かに、実に

फलं त्यक्त्वा मनीषिणः ।
phalaṁ tyaktvā manīṣiṇaḥ |
パラン ティヤクトヴァー マニーシナハ
結果を捨てて、賢い(人々は)

phalam【中性・単数・対格】果実を;結果を;報いを、報酬を、利益を、果報を
tyaktvā【絶対分詞 √tyaj】捨てて、離して、手放して、放棄して
manīṣiṇas【男性・複数・主格、manīṣin】思慮のある、賢い、霊感ある;祈祷する、敬虔な

जन्मबन्धविनिर्मुक्ताः
janmabandhavinirmuktāḥ
ジャンマバンダヴィニルムクターハ
生の束縛から解放され

janma【中性】誕生、産出;出現;再生
bandha【男性】束縛;捕獲;禁固、投獄、監禁;阻止、抑止
vinirmuktās【男性・複数・主格、vinirmukta、過去受動分詞 vi-nir√muc】〜から自由になった、〜から免れた;放たれた、発射された
→janmabandhavinirmuktās【男性・複数・主格】生の束縛から自由になった、輪廻の束縛から解放された

पदं गच्छन्त्य् अनामयम् ॥
padaṁ gacchanty anāmayam ||
パダン ガッチャンティ アナーマヤム
彼らはわずらいのない境地に達する

padam【中性・単数・対格、pada】足跡に;目標に;足場に、場所に、住所に、住家に;立場に、位置に、部署に;品位に、地位に;対象に
gacchanti【三人称・複数・パラスマイパダ・現在 √gam】[彼らは]行く、動く、歩む;去る、来る;止む、死す;〜に近づく、〜に達する、〜を得る
anāmayam【中性・単数・対格、anāmaya】致命的でない;健康な、よい;有益な

कर्मजं बुद्धियुक्ता हि फलं त्यक्त्वा मनीषिणः ।
जन्मबन्धविनिर्मुक्ताः पदं गच्छन्त्यनामयम् ॥ ५१ ॥

karmajaṁ buddhiyuktā hi phalaṁ tyaktvā manīṣiṇaḥ |
janmabandhavinirmuktāḥ padaṁ gacchantyanāmayam || 51 ||
知性を備えた賢者たちは、行為から生ずる結果を捨てて、
生の束縛から解放され、わずらいのない境地に達する。

バガヴァッド・ギーター第2章第50節

बुद्धियुक्तो जहातीह
buddhiyukto jahātīha
ブッディユクトー ジャハーティーハ
知性を備えた人は、この世で捨てる

buddhiyuktas【男性・単数・主格、過去受動分詞 √yuj、限定複合語】知能に恵まれた人は、理解力のある人は、知性を備えた人は、心統一した人は、心を修練した人は、心の修練を修めた人は
jahāti【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 √hā】[彼は]捨てる、放棄する、諦める、断念する、見捨てる
iha【副詞】ここで[へ・に];この世で、地上で

उभे सुकृतदुष्कृते ।
ubhe sukṛtaduṣkṛte |
ウベー スクリタドゥシュクリテー
善行と悪行の両方を

ubhe【中性・両数・対格、ubha】両方を、両者を
sukṛta【中性】善行、功徳ある行為、正義、徳行、道徳的功徳
duṣkṛte【中性・両数・対格、duṣkṛta】悪行、悪く為された;悪い、邪悪な
→sukṛtaduṣkṛte【中性・両数・対格】善行と悪行を、善業と悪業を

तस्माद् योगाय युज्यस्व
tasmād yogāya yujyasva
タスマード ヨーガーヤ ユッジャスヴァ
したがって、あなたはヨーガに専念せよ

tasmāt【男性・中性・単数・従格、指示代名詞 tad】それ故に、そのために、したがって、だから、その結果
yogāya【男性・単数・為格】ヨーガに;実修に;精神の集中に、瞑想に
yujyasva【二人称・単数・アートマネーパダ・命令法 √yuj】[あなたは]集中せよ、専心せよ、熱中せよ;結合せよ、接合せよ、連合せよ;関係せよ;獲得せよ

योगः कर्मसु कौशलम् ॥
yogaḥ karmasu kauśalam ||
ヨーガハ カルマス カウシャラム
ヨーガは、行為における巧妙さである

yogas【男性・単数・主格】ヨーガは;実修は;精神の集中は、瞑想は
karmasu【中性・複数・処格、karman】行為における、作業における;運命における、業における
kauśalam【中性・単数・主格・対格、kauśala】幸福、幸運、繁栄;(処格)における熟練、賢明、経験
※karmasu kauśalam:ヨーガの第二の定義。単なる行為における巧妙さでも、行における巧妙さでもない。文脈からして、行為者が知性を確立し、行為の結果を顧みず行為に専心すれば、平等の境地に達し得ることを、「巧妙さ」という語で表現したものである。第一の定義(ヨーガは平等の境地である(2.48))と矛盾するものではない。(上村勝彦注)

बुद्धियुक्तो जहातीह उभे सुकृतदुष्कृते ।
तस्माद्योगाय युज्यस्व योगः कर्मसु कौशलम् ॥ ५० ॥

buddhiyukto jahātīha ubhe sukṛtaduṣkṛte |
tasmādyogāya yujyasva yogaḥ karmasu kauśalam || 50 ||
知性を備えた人は、この世で、善行と悪行の両方を捨てる。
したがって、あなたはヨーガを修めなさい。ヨーガは、行為における巧妙さである。

バガヴァッド・ギーター第2章第49節

दूरेण ह्यवरं कर्म
dūreṇa hyavaraṁ karma
ドゥーレーナ ヒヤヴァラン カルマ
実に、行為は遙かに劣る

d√reṇa【中性・単数・具格、d√ra】遙かに離れて;遠く隔たって;遙かに
hi【不変化辞】なぜならば、〜のために;真に、確かに、実に
avaram【中性・単数・主格】より低い、下位の、重要でない;低い、卑しい;次の、後の、より若い;より近い;西の
karma【中性・単数・主格】行為、作業;作用、職業;儀式;結果;運命(前世に行った行為の結果)、業

बुद्धियोगाद् धनंजय ।
buddhiyogād dhanaṁjaya |
ブッディヨーガード ダナンジャヤ
知性のヨーガより、アルジュナよ

buddhiyog√t【男性・単数・従格、限定複合語】知性のヨーガより、心の修練より、心の実修より
※行為と誠信の実修に必要な心的態度を指し、結果を期待しない行為をいう。すなわち、前述の成功・不成功に対して心を平等に保つ心統一を意味する。(宇野惇注)
dhanaṁjaya【男性・単数・呼格】ダナンジャヤよ。アルジュナの別名。名前は「富の征服者」の意。

बुद्धौ शरणम् अन्विच्छ
buddhau śaraṇam anviccha
ブッダウ シャラナム アンヴィッチャ
知性に庇護を求めよ

buddhau【女性・単数・処格、buddhi】知性において、精神において、心において、理性において
√araṇam【中性・単数・対格】庇護物、小屋、住み家;保護、避難;〜の許に避難すること、〜を求めて避難すること、庇護を求めて
anviccha【二人称・単数・パラスマイパダ・命令 anu√iṣ】[あなたは]探せ、捜索せよ、見抜け;試みよ;求めよ

कृपणाः फलहेतवः ॥
kṛpaṇāḥ phalahetavaḥ ||
クリパナーハ パラヘータヴァハ
結果を動機とする者は哀れである

kṛpaṇ√s【男性・複数・主格】哀しい;哀れな、憐れむべき;欲深い
phala【中性】果実;(果実の)核;結果;報い、報酬、利益、果報;報復、罰、損失、不利益;利得、享受;代償
hetavas【男性・複数・主格、hetu】〜の原因・動機・理由
→phalahetavas【男性・複数・主格、所有複合語】結果を動機とする者たちは、果報を動機とする者たちは

दूरेण ह्यवरं कर्म बुद्धियोगाद्धनंजय ।
बुद्धौ शरणमन्विच्छ कृपणाः फलहेतवः ॥ ४९ ॥

dūreṇa hyavaraṁ karma buddhiyogāddhanaṁjaya |
buddhau śaraṇamanviccha kṛpaṇāḥ phalahetavaḥ || 49 ||
アルジュナよ、実に、単なる行為は、知性のヨーガよりも遙かに劣る。
知性を拠り所としなさい。結果を動機とする者は哀れである。

バガヴァッド・ギーター第2章第48節

योगस्थः कुरु कर्माणि
yogasthaḥ kuru karmāṇi
ヨーガスタハ クル カルマーニ
ヨーガに立脚し、行為をなせ

yoga【男性】ヨーガ;実修;精神の集中、瞑想
sthas【男性・単数・主格】立っている、存在している、ある;に専念した、に従事した、〜を実践する
→yogastha【男性・単数・主格】ヨーガに立脚した、ヨーガに熱中した、ヨーガに依止した
kuru【二人称・単数・パラスマイパダ・命令 √kṛ】[あなたは]作れ、為せ、行え
karmāṇi【中性・複数・対格】行為を、作業を

सङ्गं त्यक्त्वा धनंजय ।
saṅgaṁ tyaktvā dhanaṁjaya |
サンガン ティヤクトヴァー ダナンジャヤ
執着を捨てて、アルジュナよ

saṅgam【男性・単数・対格】粘着を、妨害を;〜に執着することを、〜に接触することを
tyaktvā【絶対分詞 √tyaj】捨てて、離して、手放して、放棄して
dhanaṁjaya【男性・単数・呼格】ダナンジャヤよ。アルジュナの別名。名前は「富の征服者」の意。

सिद्ध्यसिद्ध्योः समो भूत्वा
siddhyasiddhyoḥ samo bhūtvā
シッディヤシッディヨーホ サモー ブートヴァー
成功と失敗を等しく見て

siddhi【女性】完成、遂行、履行、完全なる達成、成功
asiddhyos【女性・両数・処格、asiddhi】不成就において;失敗において、不成功において;不確定において
→siddhyasiddhyos【女性・両数・処格】成功と不成功において、成功と失敗において
samas【男性・単数・主格】〜に関して類似の・似た・等しい・同等の・同じ・同一の;不変の;中等の
bhūtvā【絶対分詞 √bhū】あって、存在して、なって、生じて

समत्वं योग उच्यते ॥
samatvaṁ yoga ucyate ||
サマットヴァン ヨーガ ウッチャテー
ヨーガは平等の境地であると言われる

samatvam【中性・単数・主格、samatva】と等しいこと;平静;平等;〜に対する一様な行為;正常
※平等の境地(samatva)―ここにヨーガの第一の定義が説かれる。「平等の境地」は、決定(けつじょう)を性とする知性により到達される、一切を同一のものと見る超越的な状態である。それは解脱の境地であり、輪廻から脱し、絶対者ブラフマンと合一した状態である。(上村勝彦注)
yogas【男性・単数・主格】ヨーガ;実修;精神の集中、瞑想
ucyate【三人称・単数・現在・受動活用 √vac】[それは]言われる、話される

योगस्थः कुरु कर्माणि सङ्गं त्यक्त्वा धनंजय ।
सिद्ध्यसिद्ध्योः समो भूत्वा समत्वं योग उच्यते ॥ ४८ ॥

yogasthaḥ kuru karmāṇi saṅgaṁ tyaktvā dhanaṁjaya |
siddhyasiddhyoḥ samo bhūtvā samatvaṁ yoga ucyate || 48 ||
アルジュナよ、ヨーガに立脚し、執着を捨て、成功と失敗を等しく見て、行為をしなさい。
ヨーガは平等の境地であると言われる。

バガヴァッド・ギーター第2章第47節

कर्मण्येवाधिकारस्ते
karmaṇyevādhikāraste
カルマニエーヴァーディカーラステー
あなたの権利は実に行為に向け

karmaṇi【中性・単数・処格、karman】行為において、作業において
eva【副詞】実に、真に(強意を表す。しばしば虚辞として使用)
adhikāras【男性・単数・主格】支配、統治、統御、権威;官職、地位、威厳;統治権;特権;(処格)に対する欲求;(処格)に対する努力
te【単数・属格、二人称代名詞 tvad】あなたの

मा फलेषु कदाचन ।
mā phaleṣu kadācana |
マー パレーシュ カダーチャナ
決して結果に向けてはならない

mā【禁止の副詞・接続詞】〜するな、〜することのないように
phaleṣu【中性・複数・処格、phala】果実において;結果において;報いにおいて
kadācana【副詞、疑問副詞kadā + 不変化辞cana】ある時、かつて、ある日、いつか
→mā 〜 kadācana:決して〜するな

मा कर्मफलहेतुर् भूर्
mā karmaphalahetur bhūr
マー カルマパラヘートゥル ブール
行為の結果を動機としてはいけない

mā【禁止の副詞・接続詞】〜するな、〜することのないように
karmaphala【中性】行為の果実、行為の結果
hetus【男性・単数・主格】〜の原因・動機・理由
→karmaphalahetus【男性・単数・主格、限定複合語】行為の結果を動機とすること、行為の結果の原因
bhūs【二人称・単数・パラスマイパダ・アオリスト √bhū】[あなたは]〜になった、〜した

मा ते सङ्गो ऽस्त्व् अकर्मणि ॥
mā te saṅgo ‘stv akarmaṇi ||
マー テー サンゴー ストゥヴ アカルマニ
無為において、あなたの執着があってはならない

mā【禁止の副詞・接続詞】〜するな、〜することのないように
te【単数・属格、二人称代名詞 tvad】あなたの
saṅgas【男性・単数・主格】粘着、妨害;〜に執着または接触すること
astu【三人称・単数・パラスマイパダ・命令 √as】[それは]あれ、存在しろ
akarmaṇi【中性・単数・処格】無為において、無行為において、非動作において

कर्मण्येवाधिकारस्ते मा फलेषु कदाचन ।
मा कर्मफलहेतुर्भूर्मा ते सङ्गोऽस्त्वकर्मणि ॥ ४७ ॥

karmaṇyevādhikāraste mā phaleṣu kadācana |
mā karmaphalaheturbhūrmā te saṅgo’stvakarmaṇi || 47 ||
あなたの関心を行為のみに向けなさい。決して結果に向けてはならない。
行為の結果を動機としてはいけない。また行為しないことに執着してもいけない。

※人間は定められた行為を行わなければならない。ただし、結果(果報)を顧みず、ひたすら無償の行為を行うべきである。これが『ギーター』の主題である。(上村勝彦注)

バガヴァッド・ギーター第2章第46節

यावान् अर्थ उदपाने
yāvān artha udapāne
ヤーヴァーン アルタ ウダパーネー
井戸において、同じ程度の利益が

yāvān【男性・単数・主格、yāvat】[tāvatとともに]どれほどに大きな・多量な・多数の・遠い・長い・多様な;〜と同数のもの
arthas【男性・単数・主格】目的;原因、動機;利益、使用、利用、有用;褒美、利得;財産、富、金;物、事、事物
udapāne【男性・単数・処格、udapāna】井戸において、鉱泉において、源泉において、泉において

सर्वतः संप्लुतोदके ।
sarvataḥ saṁplutodake |
サルヴァタハ サンプルトーダケー
水が溢れ出た至るところで

sarvatas【副詞】すべての面から、各方向に、至るところに;(対格)のまわりに;全く、完全に、徹底的に
saṁpluta【過去受動分詞 sam√plu】浸水した、冠水した、出水した;覆われた
udake【中性・単数・処格、udaka】水において
→saṁplutodake【中性・単数・処格、同格限定複合語】水が溢れ出た、水浸しになった

तावान् सर्वेषु वेदेषु
tāvān sarveṣu vedeṣu
ターヴァーン サルヴェーシュ ヴェーデーシュ
すべてのヴェーダにおいて、同じ程度の(利益が)

tāvān【男性・単数・主格、tāvat】[yāvatと相関]それほど多く、それほど遠く、それほど長く;〜と同数のもの
sarveṣu【男性・複数・処格】すべてにおいて、一切において
vedeṣu【男性・複数・処格】ヴェーダにおいて、知識において

ब्राह्मणस्य विजानतः ॥
brāhmaṇasya vijānataḥ ||
ブラーフマナッスヤ ヴィジャーナタハ
真理を知るバラモンにとって

brāhmaṇasya【男性・単数・属格、brāhmaṇa】ヴェーダに通じた人にとって、神学者にとって、祭官にとって、バラモンにとって
vijānatas【男性・単数・属格、現在分詞 vi√jñā】知っている、理解している;賢い人にとって、聖人にとって

यावानर्थ उदपाने सर्वतः संप्लुतोदके ।
तावान्सर्वेषु वेदेषु ब्राह्मणस्य विजानतः ॥ ४६ ॥

yāvānartha udapāne sarvataḥ saṁplutodake |
tāvānsarveṣu vedeṣu brāhmaṇasya vijānataḥ || 46 ||
真理を知るバラモンにとって、すべてのヴェーダから得られる利益は、
至るところで水が溢れている場所において、井戸から得られる利益と同じ程度のものである。

バガヴァッド・ギーター第2章第45節

त्रैगुण्यविषया वेदा
traiguṇyaviṣayā vedā
トライグンニャヴィシャヤー ヴェーダー
ヴェーダは三要素からなるもの(現象界、物質界)を対象とする

traiguṇya【中性】三重、三性、三成分、三要素、三つの(根本的)性質
viṣayās【男性・複数・主格】活動領域;範囲、限界、区域、届く範囲;感覚の対象;感官の対象;目的、標的
→traiguṇyaviṣayās【男性・複数・主格、限定複合語】三成分を対象とする、三要素からなるものを領域とする
vedās【男性・複数・主格】知識、祭祀の知識;ヴェーダ、神聖な知識;知覚

निस्त्रैगुण्यो भवार्जुन ।
nistraiguṇyo bhavārjuna |
ニストライグンニョー バヴァールジュナ
三要素からなるものを超越せよ、アルジュナよ

nistraiguṇyas【男性・単数・主格】三成分を付与されない、三要素のない、三つの性質の外へ
bhava【二人称・単数・パラスマイパダ・命令 √bhū】[あなたは]〜であれ、存在しろ、成れ
arjuna【男性・単数・呼格】アルジュナよ

निर्द्वंद्वो नित्यसत्त्वस्थो
nirdvaṁdvo nityasattvastho
ニルドヴァンドヴォー ニッティヤサットヴァストー
相対を離れ、常に純質(サットヴァ)に留まり

nirdvaṁdvas【男性・単数・主格】(冷と熱等のように)反対の事に対して平等な、喜びも悲しみもない、相互関係において矛盾しない、独立不羈の;嫉妬または羨望の念のない、異議を生じない
nitya【副詞】恒久的に、不易に、常に;不変に
sattva【中性】有、存在、実在;本質、性質、性分、性格;強い性格、精神、決心、勇気;(純粋)善(プラクリティに内在する三つの構成要素の最初のもの);精神;生気、生命、実在物、実体、事物
sthas【男性・単数・主格】立っている、存在している、ある
→nityasattvasthas【男性・単数・主格】常に純質(サットヴァ)に留まる、常に強い精神を保つ、常に真理に依る

निर्योगक्षेम आत्मवान् ॥
niryogakṣema ātmavān ||
ニルヨーガクシェーマ アートマヴァーン
獲得や所有から離れ、自己を制御せよ

niryogakṣemas【男性・単数・主格】獲得や所有などについての心配や不安から自由になる
ātmavān【男性・単数・主格、ātmavat】生命ある;自制できる;親切なる、敏感なる;個人的の

त्रैगुण्यविषया वेदा निस्त्रैगुण्यो भवार्जुन ।
निर्द्वंद्वो नित्यसत्त्वस्थो निर्योगक्षेम आत्मवान् ॥ ४५ ॥

traiguṇyaviṣayā vedā nistraiguṇyo bhavārjuna |
nirdvaṁdvo nityasattvastho niryogakṣema ātmavān || 45 ||
ヴェーダは三要素からなる現象界を対象とする。三要素を超越しなさい、アルジュナよ。
相対を離れ、常に純質(サットヴァ)に留まり、財産の獲得や所有から離れ、自己を制御しなさい。