バガヴァッド・ギーター第2章第23節

नैनं छिन्दन्ति शस्त्राणि
nainaṁ chindanti śastrāṇi
ナイナン チンダンティ シャストラーニ
刀剣もそれを切らず

na【否定辞】〜でない
enam【男性・単数・対格、指示代名詞 enad】彼を、それを
cindanti【三人称・複数・パラスマイパダ・現在 √chid】[それらは]切る、切り落とす、切り倒す;断つ;刺し通す;破壊する
śastrāṇi【中性・複数・主格】武器は、刀剣は

नैनं दहति पावकः ।
nainaṁ dahati pāvakaḥ |
ナイナン ダハティ パーヴァカハ
火もそれを焼かない

na【否定辞】〜でない
enam【男性・単数・対格、指示代名詞 enad】彼を、それを
dahati【三人称・複数・パラスマイパダ・現在 √dah】[それらは]焼く;焦がす;破壊する;苦しませる、悩ます、悲しませる
pāvakas【男性・単数・主格】火は;アグニ神は

न चैनं क्लेदयन्त्यापो
na cainaṁ kledayantyāpo
ナ チャイナン クレーダヤンティヤーポー
また水もそれを濡らさず

na【否定辞】〜でない
ca【接続詞】そして、また、〜と
enam【男性・単数・対格、指示代名詞 enad】彼を、それを
kledayanti【三人称・複数・パラスマイパダ・現在・使役活用 √klid】[それらは]濡らす、湿らす;不潔にする、汚す
āpas【女性・複数・主格、ap】水は

न शोषयति मारुतः ॥
na śoṣayati mārutaḥ ||
ナ ショーシャヤティ マールタハ
風も乾かさない

na【否定辞】〜でない
śoṣayati【三人称・単数・パラスマイパダ・現在・使役活用 √śuṣ】[それは]しおれさせる、干上がらす、乾かす
mārutaḥ【男性・単数・主格】風は、空気は;風の神は;生気は;呼吸は

नैनं छिन्दन्ति शस्त्राणि नैनं दहति पावकः ।
न चैनं क्लेदयन्त्यापो न शोषयति मारुतः ॥ २३ ॥

nainaṁ chindanti śastrāṇi nainaṁ dahati pāvakaḥ |
na cainaṁ kledayantyāpo na śoṣayati mārutaḥ || 23 ||
刀剣もそれを切らず、火もそれを焼かない。
また水もそれを濡らさず、風も乾かさない。

バガヴァッド・ギーター第2章第22節

वासांसि जीर्णानि यथा विहाय
vāsāṁsi jīrṇāni yathā vihāya
ヴァーサーンシ ジールナーニ ヤター ヴィハーヤ
古い衣服を捨てて

vāsāṁsi【中性・複数・対格】衣服を、服を、衣類を
jīrṇāni【中性・複数・対格】古い、使い古した、擦り切れた
yathā【接続詞】〜のように、あたかも〜のように(tathāとともに)
vihāya【絶対分詞 vi√hā】捨てて、投げ捨てて、処分して

नवानि गृह्णाति नरो ऽपराणि ।
navāni gṛhṇāti naro ‘parāṇi |
ナヴァーニ グリフナーティ ナロー パラーニ
他の新しいものを人が着るように

navāni【中性・複数・対格】新しい、新鮮な、最近の、若い
gṛhṇāti【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 √grah】[彼は]手に入れる、取る;(衣服を)着る
naras【男性・単数・主格】人が、男性が
aparāṇi【中性・複数・対格】他の、その他の、もう一方の、別の

तथा शरीराणि विहाय जीर्णान्य्
tathā śarīrāṇi vihāya jīrṇāny
タター シャリーラーニ ヴィハーヤ ジールナーニ
同様に、古い身体を捨てて

tathā【副詞】そのように、同様に;そして、また
śarīrāṇi【中性・複数・対格】身体を、肉体を
vihāya【絶対分詞 vi√hā】捨てて、投げ捨てて、処分して
jīrṇāni【中性・複数・対格】古い、使い古した、擦り切れた

अन्यानि संयाति नवानि देही ॥
anyāni saṁyāti navāni dehī ||
アンニャーニ サンヤーティ ナヴァーニ デーヒー
他の新しいものに、個我は入る

anyāni【中性・複数・対格】他の、その他の、異なる;〜以外の
saṁyāti【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 sam√yā】[彼は]行く、旅する;会う、一緒になる、相伴う、和合する
navāni【中性・複数・対格】新しい、新鮮な、最近の、若い
dehī【男性・単数・主格】人間は;(肉体をそなえた)精神は、魂は;個我は、自我は

वासांसि जीर्णानि यथा विहाय नवानि गृह्णाति नरोऽपराणि ।
तथा शरीराणि विहाय जीर्णान्यन्यानि संयाति नवानि देही ॥ २२ ॥

vāsāṁsi jīrṇāni yathā vihāya navāni gṛhṇāti naro’parāṇi |
tathā śarīrāṇi vihāya jīrṇānyanyāni saṁyāti navāni dehī || 22 ||
人が古い衣服を捨てて、他の新しい衣服を着るように、
個我は古い身体を捨てて、他の新しい身体に入る。

※この詩節は、トリシュトゥブの韻律になります。

バガヴァッド・ギーター第2章第21節

वेदाविनाशिनं नित्यं
vedāvināśinaṁ nityaṁ
ヴェーダーヴィナーシナン ニッティヤン
不滅、常住のものと知る者

veda【三人称・単数・パラスマイパダ・完了 √vid】(ここでは現在形の意味で用いて)[彼は]知る
avināśinam【男性・単数・対格、a-vi√naśからの派生語avināśin】不滅の、不壊の、滅びないことの
nityam【男性・単数・対格】常住の、恒久の、永久の、不易の、不壊の

य एनम् अजम् अव्ययम् ।
ya enam ajam avyayam |
ヤ エーナム アジャム アヴィヤヤム
それを不生、不変のものと

yas【男性・単数・主格、関係代名詞 yad】〜であるもの
enam【男性・単数・対格、指示代名詞 enad】彼を、それを
ajam【男性・単数・対格】不生の、永遠の、初より存在する
avyayam【男性・単数・対格】不滅の、不変の;慳貪の

कथं स पुरुषः पार्थ
kathaṁ sa puruṣaḥ pārtha
カタン サ プルシャハ パールタ
その人は、いかにして、アルジュナよ

katham【副詞】どうして、いかにして
sas【男性・単数・主格、指示代名詞 tad】これは、あれは、彼は
puruṣas【男性・単数・主格】人は;人間は;霊魂は;個人の本体は、普遍的霊魂は、最高精神は
pārtha【男性・単数・呼格】プリターの息子よ。アルジュナのこと。

कं घातयति हन्ति कम् ॥
kaṁ ghātayati hanti kam ||
カン ガータヤティ ハンティ カム
誰に殺させ、誰を殺すか

kam【男性・単数・対格、疑問代名詞 kim】誰に、何に
ghātayati【三人称・単数・パラスマイパダ・現在、使役活用 √han】[彼は、それは]殺させる、殺害させる
hanti【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 √han】[彼は、それは]殺す、殺害する
kam【男性・単数・対格、疑問代名詞 kim】誰を、何を

वेदाविनाशिनं नित्यं य एनमजमव्ययम् ।
कथं स पुरुषः पार्थ कं घातयति हन्ति कम् ॥ २१ ॥

vedāvināśinaṁ nityaṁ ya enamajamavyayam |
kathaṁ sa puruṣaḥ pārtha kaṁ ghātayati hanti kam || 21 ||
それを不滅、常住、不生、不変であると知る人が、
誰に殺させ、誰を殺すということがあるだろうか、アルジュナよ。

バガヴァッド・ギーター第2章第20節

न जायते म्रियते वा कदाचिन्
na jāyate mriyate vā kadācin
ナ ジャーヤテー ムリヤテー ヴァー カダーチン
それはかつて生じたことなく、またいつか死ぬこともない

na【否定辞】〜でない
jāyate【三人称・単数・アートマネーパダ・現在 √jan】[彼は、それは]生じる、生まれる、起きる
mriyate【三人称・単数・アートマネーパダ・現在 √mṛ】[彼は、それは]死ぬ、死亡する
vā【接続詞】あるいは、また
kadācit【副詞】いつか、ある時、かつて、時々

नायं भूत्वा भविता वा न भूयः ।
nāyaṁ bhūtvā bhavitā vā na bhūyaḥ |
ナーヤン ブートヴァー バヴィター ヴァー ナ ブーヤハ
さらにこれが存在して、後に無くなることもない

na【否定辞】〜でない
ayam【男性・単数・主格、指示代名詞 idam】これは、これが
bhūtvā【絶対分詞 √bhū】あって、存在して
bhavitā【三人称・単数・複合未来 √bhū】[彼は、それは]あるだろう、なるだろう、存在するだろう
vā【接続詞】あるいは、また
na【否定辞】〜でない
bhūyas【中性・単数・主格】さらに、その他に、なお一層;再び、新たに

अजो नित्यः शाश्वतो ऽयं पुराणो
ajo nityaḥ śāśvato ‘yaṁ purāṇo
アジョー ニッティヤハ シャーシュヴァトー ヤン プラーノー
不生、常住、永遠、太古のこれは

ajas【男性・単数・主格、a√janからの派生語aja】不生の、永遠の、初より存在する
nityas【男性・単数・主格】常住の、恒久の、永久の、不易の、不壊の
śāśvatas【男性・単数・主格】永遠の、不変の、不断の、恒久の
ayam【男性・単数・主格、指示代名詞 idam】これは、これが
purāṇas【男性・単数・主格】古代に属する、初期の、昔の、太古の、古い

न हन्यते हन्यमाने शरीरे ॥
na hanyate hanyamāne śarīre ||
ナ ハンニャテー ハンニャマーネー シャリーレー
身体が殺されても、それは殺されない

na【否定辞】〜でない
hanyate【三人称・単数・現在・受動活用 √han】[彼は、それは]殺される、殺害される
hanyamāne【男性・単数・処格・受動態・現在分詞、√han】殺されている、殺害されている
śarīre【男性・単数・処格】身体において

न जायते म्रियते वा कदाचिन् नायं भूत्वा भविता वा न भूयः ।
अजो नित्यः शाश्वतोऽयं पुराणो न हन्यते हन्यमाने शरीरे ॥ २० ॥

na jāyate mriyate vā kadācin nāyaṁ bhūtvā bhavitā vā na bhūyaḥ |
ajo nityaḥ śāśvato’yaṁ purāṇo na hanyate hanyamāne śarīre || 20 ||
それはかつて生じたことなく、またいつか死ぬこともない。
さらにこれが存在して、後に無くなることもない。
不生、常住、永遠、太古のこれは、身体が殺されても、殺されない。

※この詩節は、トリシュトゥブ(11音節×4行)の韻律になります。
この詩節は、解釈が難しい詩節のひとつで、特に二行目の絶対分詞bhūtvāを巡って、さまざまな解釈が行われています。
この点については、今西順吉著「『バガヴァッド・ギーター』(II,20)注解」(国際仏教学大学院大学研究紀要第11号、pp.267-310、2007)で詳細な考察がなされています。
国立情報学研究所のサイトで無料でご覧いただけます)

バガヴァッド・ギーター第2章第19節

य एनं वेत्ति हन्तारं
ya enaṁ vetti hantāraṁ
ヤ エーナン ヴェーッティ ハンターラン
それ(個我)を殺害者だと思う者

yas【男性・単数・主格、関係代名詞 yad】〜であるもの。enam vetti hantāramを受ける関係代名詞。
enam【男性・単数・対格、指示代名詞 enad】彼を、それを
vetti【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 √vid】[彼は]知る、理解する、思う
hantāram【男性・単数・対格、√hanからの派生語hantṛ】殺害者を、殺人者を、破壊者を

यश्चैनं मन्यते हतम् ।
yaścainaṁ manyate hatam |
ヤシュチャイナン マンニャテー ハタム
またそれ(個我)を殺されたと信じる者

yas【男性・単数・主格、関係代名詞 yad】〜であるもの。enam manyate hatamを受ける関係代名詞。
ca【接続詞】そして、また、〜と
enam【男性・単数・対格、指示代名詞 enad】彼を、それを
manyate【三人称・単数・アートマネーパダ・現在 √man】[彼は]考える、信じる、想像する
hatam【男性・単数・対格、過去受動分詞 √han】殺された、殺害された

उभौ तौ न विजानीतो
ubhau tau na vijānīto
ウバウ タウ ナ ヴィジャーニートー
その両者は[個我の真相を]理解しない

ubhau【男性・両数・主格、ubha】両方は、両者は
tau【男性・両数・主格、指示代名詞 tad】それら両者は、彼ら二人は
na【否定辞】〜でない
vijānītas【三人称・両数・アートマネーパダ・現在 vi√jñā】[彼ら二人は]知る、理解する、知覚する

नायं हन्ति न हन्यते ॥
nāyaṁ hanti na hanyate ||
ナーヤン ハンティ ナ ハンニャテー
それ(個我)は殺さず、殺されない

na【否定辞】〜でない
ayam【男性・単数・主格、指示代名詞 idam】これは
hanti【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 √han】[彼は、それは]殺す、殺害する
na【否定辞】〜でない
hanyate【三人称・単数・現在・受動活用 √han】[彼は、それは]殺される、殺害される

य एनं वेत्ति हन्तारं यश्चैनं मन्यते हतम् ।
उभौ तौ न विजानीतो नायं हन्ति न हन्यते ॥ १९ ॥

ya enaṁ vetti hantāraṁ yaścainaṁ manyate hatam |
ubhau tau na vijānīto nāyaṁ hanti na hanyate || 19 ||
それを殺害者だと思う者、またそれを殺されたと信じる者、
その両者は、いずれも理解していない。それは殺すことなく、殺されることもない。

バガヴァッド・ギーター第2章第18節

अन्तवन्त इमे देहा
antavanta ime dehā
アンタヴァンタ イメー デーハー
これらの身体は有限のもの

antavantas【男性・複数・主格、antavat】際限を有する、有限の、最終の、無常の、消滅すべき
ime【男性・複数・主格、指示代名詞 idam】これらは
dehās【男性・複数・主格】身体は、肉体は

नित्यस्योक्ताः शरीरिणः ।
nityasyoktāḥ śarīriṇaḥ |
ニッティヤスヨークターハ シャリーリナハ
と言われる、常住の個我の

nityasya【男性・単数・属格】常の、恒久の、永久の、不易の、不壊の
uktās【男性・複数・主格、過去受動分詞 √vac】言われた、述べられた、言明された
śarīriṇas【男性・単数・属格】被造物の、人間の;精神の、魂の、個我の

अनाशिनो ऽप्रमेयस्य
anāśino ‘prameyasya
アナーシノー プラメーヤッスヤ
不滅の、計り知れない

anāśinas【男性・単数・属格、a√naśからの派生語anāśin】不滅の、滅びることのない
aprameyasya【男性・単数・属格、a-pra√māからの派生語aprameya】計り知れない、無限の、不可解な

तस्माद् युध्यस्व भारत ॥
tasmād yudhyasva bhārata ||
タスマード ユッディヤスヴァ バーラタ
それゆえ戦いなさい、アルジュナよ

tasmāt【男性・中性・単数・従格、指示代名詞 tad】それ故に
yudhyasva【二人称・単数・アートマネーパダ・命令法 √yudh】[あなたは]戦え、対戦せよ
bhārata【男性・単数・呼格】バラタの子孫よ。ここではアルジュナのことを指す。

अन्तवन्त इमे देहा नित्यस्योक्ताः शरीरिणः ।
अनाशिनोऽप्रमेयस्य तस्माद्युध्यस्व भारत ॥ १८ ॥

antavanta ime dehā nityasyoktāḥ śarīriṇaḥ |
anāśino’prameyasya tasmādyudhyasva bhārata || 18 ||
常住不滅であり、計り知れない個我の宿るこの身体は、有限であるといわれる。
それゆえ戦いなさい、アルジュナよ。

バガヴァッド・ギーター第2章第17節

अविनाशि तु तद् विद्धि
avināśi tu tad viddhi
アヴィナーシ トゥ タッド ヴィッディ
不滅のそれを知れ

avināśi【中性・単数・対格、a-vi√naś】不滅の、不壊の、滅びないことの;腐敗しないことの;毀損しないことの
tu【接続詞】しかし、一方(虚辞としても使用)
tat【中性・単数・対格、指示代名詞 tad】それを、あれを
viddhi【二人称・単数・パラスマイパダ・命令法 √vid】[あなたは]知れ、理解せよ、気付け、学べ

येन सर्वम् इदं ततम् ।
yena sarvam idaṁ tatam |
イェーナ サルヴァム イダン タタム
この全世界に遍満するもの

yena【中性・単数・具格、関係代名詞 yad】それによって(by which)。sarvam idam以下を受ける関係代名詞。
sarvam【中性・単数・対格】すべての、一切の、各々の;全体の
idam【中性・単数・対格、指示代名詞 idam】これを、これに
→sarvam idam:このすべてに、全世界に、全宇宙に
tatam【中性・単数・対格、過去受動分詞 √tan】広げられた、伸ばされた、拡張された;(具格)に覆われた;充満された、遍満された

विनाशम् अव्ययस्यास्य
vināśam avyayasyāsya
ヴィナーシャム アヴィヤヤッスヤースヤ
この不滅のものの破壊を

vināśam【男性・単数・対格、vi√naś】消失を、中止を、喪失を;分解を、破壊を、滅亡を
avyayasya【中性・単数・属格】不滅の、不変の;慳貪の
asya【中性・単数・属格、指示代名詞 idam】これの、この

न कश्चित् कर्तुम् अर्हति ॥
na kaścit kartum arhati ||
ナ カシュチット カルトゥム アルハティ
行うことは誰もできない

na【否定辞】〜でない
kaścit【男性・単数・主格、不定代名詞、kim + cit】誰か、誰かある人
kartum【不定詞 √kṛ】為すこと、行うこと、作ること
arhati【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 √arh】[彼は]〜できる、資格がある、権利がある;価値がある、匹敵する

अविनाशि तु तद्विद्धि येन सर्वमिदं ततम् ।
विनाशमव्ययस्यास्य न कश्चित्कर्तुमर्हति ॥ १७ ॥

avināśi tu tadviddhi yena sarvamidaṁ tatam |
vināśamavyayasyāsya na kaścitkartumarhati || 17 ||
この全世界に遍満するものは、不滅であると知りなさい。
この不滅のものを破壊することは、誰にもできない。

バガヴァッド・ギーター第2章第16節

नासतो विद्यते भावो
nāsato vidyate bhāvo
ナーサトー ヴィッディヤテー バーヴォー
非有には存在はない(身体には永続はない)

na【否定辞】〜でない
asatas【中性・単数・属格、現在分詞 a√as】非実在にとって、非有にとって、無有にとって;虚偽にとって、不実にとって
※非有:変化し有限なる肉体のこと(辻直四郎注)。
vidyate【三人称・単数・現在・受動活用 √vid】それはある、それは存在する、それは見られる
bhāvas【男性・単数・主格】存在は、在ることは;永続は、存続は;生成することは、生起することは

नाभावो विद्यते सतः ।
nābhāvo vidyate sataḥ |
ナーバーヴォー ヴィッディヤテー サタハ
実有には非存在はない(個我には断滅はない)

na【否定辞】〜でない
abhāvas【男性・単数・主格】非存在は;壊滅は、断滅は
vidyate【三人称・単数・現在・受動活用 √vid】それはある、それは存在する、それは見られる
satas【中性・単数・属格、現在分詞 √as】存在しているものにとって、実在にとって、実有にとって;現実の世界にとって
※実有:不変にして無限なる自我、すなわち個人の本体プルシャ(辻直四郎注)。

उभयोर् अपि दृष्टो ऽन्तस्
ubhayor api dṛṣṭo ‘ntas
ウバヨール アピ ドリシュトー ンタス
両者の境界は見られた

ubhayos【女性・両数・属格】両方の、双方の
api【不変化辞】さらに、また、とても(強意を示す)
→ubhayor api:双方いずれもの中に
dṛṣṭas【中性・単数・主格、過去受動分詞 √dṛś】見られた;観察された、認められた、看破された;経験された
antas【男性・単数・主格】境界は、端は、終端は、限界は;終局は、結末は

त्वनयोर् तत्त्वदर्षिभिः ॥
tvanayor tattvadarṣibhiḥ ||
トヴァナヨール タットヴァダルシビヒ
しかし、この両者の真理を知る人々によって

tu【接続詞】しかし、一方
anayos【男性・両数・属格、指示代名詞 idam】これら二つの、この両者の
tattva【中性】(それなること)、真の本質、真実の本性、真理、実在
darṣibhis【男性・複数・具格 √dṛś】見る人々によって、知る人々によって
→tattvadarṣibhis【男性・複数・具格、限定複合語】真理を見る人々によって、真理を知る人々によって

नासतो विद्यते भावो नाभावो विद्यते सतः ।
उभयोरपि दृष्टोऽन्तस्त्वनयोर्तत्त्वदर्षिभिः ॥ १६ ॥

nāsato vidyate bhāvo nābhāvo vidyate sataḥ |
ubhayorapi dṛṣṭo’ntastvanayortattvadarṣibhiḥ || 16 ||
非有(身体)には永続はなく、実有(個我)には断滅はない。
しかし、この両者の境界は、真理を知る人々によって見られる。

バガヴァッド・ギーター第2章第15節

यं हि न व्यथयन्त्येते
yaṁ hi na vyathayantyete
ヤン ヒ ナ ヴィヤタヤンティエーテー
これらに悩まされない

yam【男性・単数・対格、関係代名詞 yad】以下のsasを受ける関係代名詞
hi【不変化辞】なぜならば、〜のために;真に、確かに、実に
na【否定辞】〜でない
vyathayanti【三人称・複数・パラスマイパダ・現在・使役活用 √vyath】[それらが]揺れさせる、迷わせる;不安にする、苦しめる、悩ます、怒らせる、苦痛を与える
ete【男性・複数・主格、指示代名詞 etad】これらが(物質との接触が)

पुरुषं पुरुषर्षभ ।
puruṣaṁ puruṣarṣabha |
プルシャン プルシャルシャバ
人、アルジュナよ

puruṣam【男性・単数・対格】人;人間;霊魂;個人の本体、普遍的霊魂、最高精神
puruṣarṣabha【男性・単数・呼格】牡牛のような人よ、人中の雄牛よ、優れた人よ、王よ。一般にアルジュナを指すが、状況を報告するサンジャヤから、ドリタラーシュトラ王への呼びかけともとれる。

समदुःखसुखं धीरं
samaduḥkhasukhaṁ dhīraṁ
サマドゥフカスカン ディーラン
苦楽を等しく見る賢者

sama【副詞】等しく、同様に、同じように
duḥkha【中性】不安、心配、苦痛、悲しみ、悲哀、困難、苦しみ
sukham【中性・単数・対格】安楽、歓喜、幸福、享楽、繁栄、成功
→samaduḥkhasukham【男性・単数・対格、所有複合語】苦楽を等しく見る、幸・不幸を平等視する
dhīram【男性・単数・対格】賢明な、思慮のある、賢い、博学の、利口な

सो ऽमृतत्वाय कल्पते ॥
so ‘mṛtatvāya kalpate ||
ソー ムリタットヴァーヤ カルパテー
彼は不死に値する

sas【男性・単数・主格、指示代名詞 tad】これは、あれは、彼は
amṛtatvāya【中性・単数・為格】不死に;不滅者の世界に、天界に;最終的な解脱に
kalpate【三人称・単数・アートマネーパダ・現在 √kḷp】彼は値する、彼は適する、彼は相応する;彼は加わる;彼はなる

यं हि न व्यथयन्त्येते पुरुषं पुरुषर्षभ ।
समदुःखसुखं धीरं सोऽमृतत्वाय कल्पते ॥ १५ ॥

yaṁ hi na vyathayantyete puruṣaṁ puruṣarṣabha |
samaduḥkhasukhaṁ dhīraṁ so’mṛtatvāya kalpate || 15 ||
これらの接触に悩まされない人、苦楽を等しく見る賢者、
アルジュナよ、彼は不死となるにふさわしい。

バガヴァッド・ギーター第2章第14節

मात्रास्पर्शास् तु कौन्तेय
mātrāsparśās tu kaunteya
マートラースパルシャース トゥ カウンテーヤ
しかし、アルジュナよ、物質との接触は

mātrā【女性】要素;物質、物質的世界;財産、貨幣;家具;装飾品
sparśās【男性・複数・主格、√spṛśから派生した名詞】接触は、感触は
→mātrāsparśās【男性・複数・主格、同格限定複合語】物質との接触は
※「物質」mātrāとは、五元素(地・水・火・風・虚空)の本質的性質である香・味・色・音・触覚を指す(宇野惇注)。
tu【接続詞】しかし、一方
kaunteya【男性・単数・呼格】クンティーの息子よ。アルジュナの別名。

शीतोष्णसुखदुःखदाः ।
śītoṣṇasukhaduḥkhadāḥ |
シートーシュナスカドゥフカダーハ
寒暑、苦楽をもたらすもの

śīta【中性】寒い、冷たい、涼しい
uṣṇa【中性】暑い、熱い、あたたかい
sukha【中性】安楽、歓喜、幸福、享楽、繁栄、成功
duḥkha【中性】不安、心配、苦痛、悲しみ、悲哀、困難、苦しみ
dās【男性・複数・主格】もたらすもの、引き起こすもの、与えるもの
→śītoṣṇasukhaduḥkhadās【男性・複数・主格】寒暑、苦楽をもたらすもの

आगमापायिनो ऽनित्यास्
āgamāpāyino ‘nityās
アーガマーパーイノー ニッティヤース
来ては去り、儚いもの

āgama【形容詞、ā√gam】近づく
apāyinas【男性・複数・主格、apa√i】去る、出発する
→āgamāpāyinas【男性・複数・主格】往来する;通りがかりの、暫時の
anityās【男性・単数・主格】無常の、永続しない;一時的な、はかない、束の間の;不安定の、流動的な

तांस् तितिक्षस्व भारत ॥
tāṁs titikṣasva bhārata ||
ターンス ティティクシャスヴァ バーラタ
それらに耐えよ、アルジュナよ

tān【男性・複数・対格、指示代名詞 tad】それらに、それらを
titikṣasva【二人称・単数・アートマネーパダ・命令法、意欲活用 √tij】耐えよ、堪えよ、忍耐せよ
bhārata【男性・単数・呼格】バラタの子孫よ。ここではアルジュナのことを指す。

मात्रास्पर्शास्तु कौन्तेय शीतोष्णसुखदुःखदाः ।
आगमापायिनोऽनित्यास्तांस्तितिक्षस्व भारत ॥ १४ ॥

mātrāsparśāstu kaunteya śītoṣṇasukhaduḥkhadāḥ |
āgamāpāyino’nityāstāṁstitikṣasva bhārata || 14 ||
しかし、アルジュナよ、物質との接触は、寒暑や苦楽をもたらし、
来ては去り、儚いものである。それらに耐えなさい、アルジュナよ。