バガヴァッド・ギーター第9章第4節

インド古典中もっとも有名なバガヴァッド・ギーターの原典講読です。
インドの霊的文化の支柱となる本書を、サンスクリット語の学習をしながらお楽しみください。

मया ततम् इदं सर्वं
mayā tatam idaṁ sarvaṁ
マヤー タタム イダン サルヴァン
このすべては、私によって満たされた

mayā【単数・具格、一人称代名詞 mad】[〜によって、〜をもって]私
tatam【中性・単数・主格 tata√tanの過去受動分詞)】広げられた、伸ばされた、拡張された;(具格)に覆われた;充満された、遍満された
idam【中性・単数・主格、指示代名詞 idam】[〜は、〜が]これ
sarvam【中性・単数・主格 sarva】すべての、一切の、各々の;全体の

जगद् अव्यक्तमूर्तिना ।
jagad avyaktamūrtinā |
ジャガド アヴィヤクタムールティナー
世界は、非顕現の姿をもつ(私によって)

jagat【中性・単数・主格 jagat】[〜は、〜が]すべての動くもの;動物;人;世界、この世;大地;(両数)天上と下界;(複数)諸世界
avyakta【a-vi√añjの過去受動分詞】非顕現の、現れない、認めがたい;不明瞭な、目に見えない、感知できない
mūrtinā【女性・単数・具格 mūrti】[〜によって、〜をもって]固体、物質的形態、体;顕現、権化、具体化;人体、形態、骨格、姿、外観;肖像、立像;美 ―゜【形容詞】〜の形態をとった
→avyaktamūrtinā【女性・単数・具格、所有複合語】非顕現の姿をした

मत्स्थानि सर्वभूतानि
matsthāni sarvabhūtāni
マットスターニ サルヴァブーターニ
万物は私に存在している

mat【一人称・単数、人称代名詞 mad】私
sthāni【中性・複数・主格 stha】立っている、存在している、ある;に専念した、に従事した、〜を実践する
→matsthāni【中性・複数・主格】私に存在している
sarvabhūtāni【中性・複数・主格 sarvabhūta】[〜らは、〜らが]一切の存在物、万物、一切衆生 【形容詞】至る処に存在する

न चाहं तेष्व् अवस्थितः ॥
na cāhaṁ teṣv avasthitaḥ ||
ナ チャーハン テーシュヴ アヴァスティタハ
しかし、それらの中に、私は存在しない

na【否定辞】〜でない
ca【接続詞】そして、また、〜と
aham【単数・主格、一人称代名詞 mad】[〜は、〜が]私
teṣu【中性・複数・処格、指示代名詞 tad】[〜らにおいて、〜らのなかで]それ、あれ、彼
avasthitas【男性・単数・主格 avasthitaava√sthāの過去受動分詞)】〜に存する・置かれた・配置された・含まれた;〜に従事している・で忙しい・に献身した;確固とした;固く決心した;着実な、信頼するに足る

मया ततमिदं सर्वं जगदव्यक्तमूर्तिना ।
मत्स्थानि सर्वभूतानि न चाहं तेष्ववस्थितः ॥४॥

mayā tatamidaṁ sarvaṁ jagadavyaktamūrtinā |
matsthāni sarvabhūtāni na cāhaṁ teṣvavasthitaḥ ||4||
この全世界は、非顕現の姿をもつ私によって満たされている。
万物は私の中に存在しているが、それらの中に私は存在しない。

バガヴァッド・ギーター第9章第3節

インド古典中もっとも有名なバガヴァッド・ギーターの原典講読です。
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अश्रद्दधानाः पुरुषा
aśraddadhānāḥ puruṣā
アシュラッダダーナーハ プルシャー
信じない人々は

aśraddadhāna【男性・複数・主格 aśraddadhāna】信じない、疑い深い、懐疑的な
puruṣās【男性・複数・主格 puruṣa】[〜らは、〜らが]人;人間;霊魂;個人の本体、普遍的霊魂、最高精神

धर्मस्यास्य परंतप ।
dharmasyāsya paraṁtapa |
ダルマスヤースヤ パランタパ
この正法(ダルマ)にとって、アルジュナよ

dharmasya【男性・単数・属格 dharma】[〜の、〜にとって]秩序、慣例、習慣、風習、法則、既定;規則;義務;得、美徳、善行;宗教;教説;正義;公正;法律;性質、性格、本質、属性
asya【男性・単数・属格 指示代名詞 idam】[〜の、〜にとって]これ、この、彼
paraṁtapa【男性・単数・呼格 paraṁtapa】[〜よ]敵を悩ます者。アルジュナのこと。

अप्राप्य मां निवर्तन्ते
aprāpya māṁ nivartante
アプラープヤ マーン ニヴァルタンテー
私に到達されず、彼らは回帰する

aprāpya【a-pra√āpの未来受動分詞】得られない、到達されない
mām【単数・対格、一人称代名詞 mad】[〜を、〜に]私
nivartante【三人称・複数・アートマネーパダ・現在 ni√vṛt】[彼らは〜、それらは〜]〜に帰る;回転する;蘇生する、再び生まれる;戻る、(水が)逆流する;(闘いに)背を向ける、逃げる;転向する、(眼を)そらされる、(心が)他に向く;(従格)から自由になる;戦闘を避ける;〜を拒絶する;〜を無視する;〜をやめる、中止する、断つ;沈黙する;やむ、終わる、消える;(訴訟が)中止される;効力を失う;(処格)に転じる・に向けられる

मृत्युसंसारवर्त्मनि ॥
mṛtyusaṁsāravartmani ||
ムリティユサンサーラヴァルトマニ
死と輪廻の道において

mṛtyu【男性】死
saṁsāra【男性】輪廻、(生の)不断の連続、生存の循環、(あらゆる苦を伴った)現世の生存
vartmani【中性・単数・処格 vartman】[〜において、〜のなかで]轍、軌道;径、道、路、進路;まぶた
→mṛtyu-saṁsāra-vartmani【中性・単数・処格、限定複合語】[〜において、〜のなかで]死と輪廻の道

अश्रद्दधानाः पुरुषा धर्मस्यास्य परंतप ।
अप्राप्य मां निवर्तन्ते मृत्युसंसारवर्त्मनि ॥३॥

aśraddadhānāḥ puruṣā dharmasyāsya paraṁtapa |
aprāpya māṁ nivartante mṛtyusaṁsāravartmani ||3||
アルジュナよ、この正法(ダルマ)を信じない人々は、
私に到達せず、死と輪廻の道において回帰する。

バガヴァッド・ギーター第9章第2節

インド古典中もっとも有名なバガヴァッド・ギーターの原典講読です。
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राजविद्या राजगुह्यं
rājavidyā rājaguhyaṁ
ラージャヴィディヤー ラージャグヒヤン
王の智慧、王の秘密である

rājavidyā【女性・単数・主格 rājavidyā】[〜は、〜が]王の才知、政治的手腕
rājaguhyam【中性・単数・主格 rājaguhya】[〜は、〜が]王の秘密

पवित्रम् इदम् उत्तमम् ।
pavitram idam uttamam |
パヴィットラム イダム ウッタマム
これは最高の浄化具である

pavitram【中性・単数・主格 pavitra】[〜は、〜が]浄化の手段、篩(ふるい)、ソーマを漉す用具;供物を浄化するために用いるクシャ草の二枚の葉;浄めの(際に用いる)聖句
idam【中性・単数・主格、指示代名詞 idam】[〜は、〜が]これ
uttamam【中性・単数・主格 uttama】[最上級]最上の、至高の;最も優秀なる、最善の

प्रत्यक्षावगमं धर्म्यं
pratyakṣāvagamaṁ dharmyaṁ
プラティヤクシャーヴァガマン ダルミヤン
明白に理解でき、法に適い

pratyakṣa【形容詞】眼前にある、一目瞭然な、見える、知覚できる;明瞭な、明白な、顕著な;疑われない、現実の、真実の;即刻の、直接の;(属格)に関する明瞭な知識をもつ
avagamam【中性・単数・主格 avagama】了解、認知、確定
→pratyakṣāvagamam【中性・単数・主格、所有複合語 pratyakṣāvagama】明白に理解できる、明らかに分かる
dharmyam【中性・単数・対格 dharmya】合法の、適法の;普通の、慣習となっている;正当の、正直な;高潔な、有徳の、正義の

सुसुखं कर्तुम् अव्ययम् ॥
susukhaṁ kartum avyayam ||
ススカン カルトゥム アヴィヤヤム
実行しやすく、不変のものである

susukham【中性・単数・主格 susukha】非常に快適な、非常に愉快な
kartum【√kṛの不定詞】[〜するため、〜すべく、〜すること]為す、作る、遂行する、用いる
avyayam【中性・単数・主格 avyaya】不滅の、不変の;慳貪の

राजविद्या राजगुह्यं पवित्रमिदमुत्तमम् ।
प्रत्यक्षावगमं धर्म्यं सुसुखं कर्तुमव्ययम् ॥२॥

rājavidyā rājaguhyaṁ pavitramidamuttamam |
pratyakṣāvagamaṁ dharmyaṁ susukhaṁ kartumavyayam ||2||
これは、王の智慧、王の秘密、最高の浄化具である。
明白に理解でき、法に適い、実行しやすく、不変である。

バガヴァッド・ギーター第9章第1節

インド古典中もっとも有名なバガヴァッド・ギーターの原典講読です。
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श्रीभगवान् उवाच ।
śrībhagavān uvāca |
シュリーバガヴァーン ウヴァーチャ
クリシュナは語った

śrībhagavān【男性・単数・主格 śrībhagavat】栄光ある方、神聖な神、威厳ある尊者。ここではクリシュナのことを指す。
uvāca【三人称・単数・パラスマイパダ・完了 √vac】[彼は〜した]言う、語る

इदं तु ते गुह्यतमं
idaṁ tu te guhyatamaṁ
イダン トゥ テー グヒヤタマン
あなたに、この最高の秘密を

idam【中性・単数・対格、指示代名詞 idam】[〜に、〜を]これ
tu【接続詞】しかし、一方(虚辞としても使用)
te【単数・為格、二人称代名詞 tvad(tubhyamの附帯形)】[〜に、〜のために]あなた
guhyatamam【中性・単数・対格 guhyaの最上級】[〜に、〜を][最高の]秘密;神秘;陰部

प्रवक्ष्याम्य् अनसूयवे ।
pravakṣyāmy anasūyave |
プラヴァクシャーミ アナスーヤヴェー
不満のない(あなたに)、私は説こう

pravakṣyāmi【一人称・単数・パラスマイパダ・未来 pra√vac】[私は〜だろう](為格・属格)に公言する・告げる・記述する・述べる;〜について語る、暴露する;提議する;賞賛する;(対格)を(対格)に語る・言う;(対格)を(対格)であると宣言する・呼ぶ
anasūyave 【男性・複数・為格 an√asūya】不平を言わない;悪口を言わない、妬まない;親切な

ज्ञानं विज्ञानसहितं
jñānaṁ vijñānasahitaṁ
ジュニャーナン ヴィジュニャーナサヒタン
理論知を、実践知を伴った

jñānam【中性・単数・対格 jñāna】[〜に、〜を]知ること;知識;真の知識、優れた知識;知恵;企図;仮定;意識;感覚器官
vijñāna【中性】識別;知識;熟達、上達、技術;教義;策略、詭計;神聖でない知識、世俗的な知識[jñānaの対義語];知力、判断力;意識の器官(=manas 意)
sahitam【中性・単数・対格 sahita】近くにいる;接合された、結合された;(複)結び合わされた、全部一緒の;(具格、―゜)によって伴われた、と結合された、をそなえている、と一緒にいる

यज् ज्ञात्वा मोक्ष्यसे ऽशुभात् ॥
yaj jñātvā mokṣyase ‘śubhāt ||
ヤジュ ジュニャートヴァー モークシャセー シュバート
それを知って、悪から解放されるものを

yat【中性・単数・対格、関係代名詞 yad】[〜に、〜を]〜であるもの、〜である人
jñātvā【絶対分詞 √jñā】[〜して、〜してから]知る;〜を察知する、〜の知識を有する、(具格)によって認識する;悟る;覚える、経験する、確かめる、調べる;是認する;〜と考える、〜と仮定する、〜と推測する;認める、証す、許す
mokṣyase【二人称・単数・未来・受動活用 √muc】[あなたは〜されるだろう]〜から離す・放つ・釈放する・解放する;〜から免れる、〜から逃げる;許す
aśubhāt【中性・単数・従格 aśubha】[〜から、〜より]悲哀、不運、不幸;加害;悪、悪業、罪

श्रीभगवानुवाच ।
इदं तु ते गुह्यतमं प्रवक्ष्याम्यनसूयवे ।
ज्ञानं विज्ञानसहितं यज्ज्ञात्वा मोक्ष्यसेऽशुभात् ॥१॥

śrībhagavānuvāca |
idaṁ tu te guhyatamaṁ pravakṣyāmyanasūyave |
jñānaṁ vijñānasahitaṁ yajjñātvā mokṣyase’śubhāt ||1||
クリシュナは語りました。
不満のないあなたに、私はこの最高の秘密を説こう。
それを知れば、悪から解放される理論知と実践知とを。