女神たちを讃える春のナヴァラートリを迎えると、気温はぐんぐん上昇し、太陽の光が溢れる夏が到来します。
不調が生じやすい季節の変わり目に9日間にわたって祝福されるこのナヴァラートリは、心身を浄化する重要な期間でもあります。
そして、その終わりに祝福されるのが、正義の象徴であるラーマ神の降誕祭です。
チャイトラ月(3月から4月)の新月から9日目がその日にあたり、2020年は4月2日に祝福されます。
ラーマ神は、正義、寛容、忍耐、犠牲など、私たちが日々の中で見失いがちな美徳の象徴です。
そんなラーマ神は、太陽神の末裔であるダシャラタ王の息子として、魔王のラーヴァナを倒すために生まれました。
このラーマ神の誕生には、清く正しい道を歩むための教えを見ることができます。
ラーマ神の父親であるダシャラタ王の名前には、10の馬車を持つ者という意味があります。
かつて、ダシャラタ王は悪魔と闘うインドラ神を助け、勝利に導いたことがありました。
1度に10の馬車を操ることができる能力を持っていたダシャラタ王は、インドラ神の敵を倒すために、すべてを網羅する10の方向に馬車を走らせたといわれます。
インドラ神は、個々に内在するインドリヤ(感官)の主人であるとされます。
そして、ダシャラタ王が操る10の馬車は、ジュニャーナ・インドリヤとカルマ・インドリヤに例えられてきました。
ジュニャーナ・インドリヤは、目・耳・鼻・舌・皮膚(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)の5つの知覚器官であり、カルマ・インドリヤは、口・手・足・生殖器官・排泄器官(発声・操作・移動・生殖・排泄)の5つの行為器官にあたります。
インドリヤはインドラ神の力のあらわれとして個々に内在するも、その働きが統制されなければ、私たちを悩ます敵となります。
これら10の感官が内なる世界で統制される時に生まれるのが、正義の象徴であるラーマ神です。
太陽神の末裔であるダシャラタ王の息子として生まれたラーマ神は、太陽の象徴としても崇められてきたように、10の感官を操ることができれば、私たちの内にはラーマ神という光が生まれます。
その光は、清く正しい道を歩む力となるものです。
女神たちを讃えるナヴァラートリの9日間は、主に断食を通じて女神たちと向き合います。
そうして心身の統制を行い浄化を努めた後、私たちは自分自身の内でラーマ神の誕生を祝福します。
巡る季節の中で祝福されるこうした祝祭とともに生きる時、私たちは常に光の中で生きることができるに違いありません。
(文章:ひるま)
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