聖なる4か月といわれ、大きな祝祭で溢れるチャトゥルマーサが続いているインド。このチャトゥルマーサの間、ヴィシュヌ神は眠りにつくと信じられています。そんなヴィシュヌ神が寝返りを打つ日として知られるのが、パリヴァルティニー(パールシュヴァ)・エーカーダシー(2020年は8月29日)です。寝返りを打ったヴィシュヌ神は、5番目の化身である矮人ヴァーマナへと化身したといわれます。
この5番目の化身ヴァーマナは、ケーララ州でこれから迎えようとしている年に一度の盛大な祝祭、オーナムに深い繋がりがあります。オーナムは、王国を追われたマハーバリ王が年に一度だけ愛する国民たちの下へ戻る日、またそのマハーバリ王が解脱を得た日として祝福されるものです。このマハーバリ王を倒したのが、ヴァーマナでした。
マハーバリ王は神々と敵対するアスラの生まれでしたが、非常に信心深く献身的で、国民から愛される偉大な王として知られます。地と空と天の3界は、そんなマハーバリ王に統治され、神々は力を失っていました。ヴィシュヌ神は世界を神々の手に戻そうと、ヴァーマナに化身しマハーバリ王に歩み寄ります。そして、3歩分の土地が欲しいと述べると、マハーバリ王は快く、その土地を与える約束をしました。すると、矮人であったヴァーマナが巨人となり、2歩で世界を跨いでしまいます。
信心深いマハーバリ王は、約束通りヴァーマナに3歩分の土地を与えようと、最後に唯一残った領地である自らの頭を差し出します。そうしてヴァーマナはマハーバリ王の頭を踏みしめ、世界を神々に取り戻させました。マハーバリ王がアスラでありながらも国民に深く愛されたのは、潔く自らの頭を差し出したように、信心深く献身的な姿勢があったからだといわれます。それでも王国を追われたのは、マハーバリ王がアスラであったということと、王としてのエゴがあったからでした。
ヴァーマナが要求し、マハーバリ王が差し出した3歩分の土地は、地と空と天にあたります。それはまた、物質と精神と魂、現在と過去と未来などともいわれます。これらは、私たちが潔く神々へと差し出すべくものに他ありません。そうする時、私たちは神々に統治され、エゴは静まり、真の豊かさや平和をその内に築くことができるのだと感じます。
マハーバリ王が国民の下へ戻る日は、2020年は8月31日のオーナム・フェスティバルです。マハーバリ王が解脱をした日でもあるこの日、皆様にとっても実りある時となりますよう心よりお祈りしております。
(文章:ひるま)
参照:https://en.wikipedia.org/wiki/Vamana
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