この世界の中央には、7つの島に囲まれたメール山という聖なる山がそびえていると、インドの神話において伝えられます。
その山の頂上には、神々の王であるインドラ神の宮殿があり、その他の神々もこの山に住むとされてきました。
そして、その山の中腹を太陽や月が廻っていると伝えられます。
私たちの肉体を小宇宙とした時、その山にあたるとされるのが脊柱です。
7つの主要なチャクラは、その脊柱を沿うように存在するといわれます。
また、脊柱には根源のエネルギーとされるクンダリニーが上昇するための気道があるとされ、古くからヨーガの実践において重要視されてきました。
そんな脊柱と向き合うヨーガの実践に、メールダンダと呼ばれるアーサナ(ポーズ)があります。
メールダンダは脊柱を意味します。
このポーズは、手で掴んだ足先を大きく広げて上方に伸ばし、バランスをとりながら脊柱を真っ直ぐに伸ばすことを意識するポーズです。
その姿には、メール山にまつわる、ある神話を見ることができます。
大昔、風の神であるヴァーユがメール山に向かって強風を吹きつけ続けたことがありました。
その時、ヴィシュヌ神の乗り物である聖鳥のガルダが、大きな翼を広げてメール山を守り続けます。
しかし、その状況があまりに長く続いたため、疲れたガルダは少しの間その翼を閉じました。
その間に山頂が吹き飛ばされ海に落ちると、現在のスリランカになったと伝えられます。
メールダンダのポーズは、大きく翼を広げるガルダのような姿に見えます。
その中央には、メール山である脊柱がまっすぐに伸びています。
柔軟性を必要とするこのポーズは、身体が固まっていると、背筋を伸ばすことがとりわけ難しく感じるポーズです。
それは、人生において困難な状況に直面している時、または感情が塞ぎがちな時に重なるようにも感じます。
現在の終わりの見えないコロナ禍には、疲労を感じ気持ちが沈むことも少なくありません。
しかし、そんな時こそ、大きな翼を広げるガルダのように、意識的に身体を開いて、背筋を伸ばすことが大切です。
その姿勢を通じては、身体を巡る自由なエネルギーの流れが守られ、日々を健やかに生きるための力が与えられるはずです。
(文章:ひるま)
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