インドでは7月のグル・プールニマー(師を讃える満月祭)前より、聖なる4カ月間であるチャトゥル・マースが続いています。
この間はヴィシュヌ神が眠りにつく時とされ、そして、霊性を高める神聖な時であると言われます。
この4カ月間には、クリシュナ降誕祭、ガネーシャ降誕祭、ナヴァラートリー祭、ダシャラー祭、そしてディーワーリー祭と、神々を讃える神聖な時が続き、その象徴を見つめながら、自分自身と向き合う瞬間が多くあります。
そしてこのチャトゥル・マースの終わりが、2021年は11月15日のエーカーダシーにあたり、ヴィシュヌ神が目覚める時です。
11月15日から19日の満月にかけては、ヴィシュヌ神とトゥラシー女神の結婚を祝福するトゥラシー・ヴィヴァーハの祝福が執り行われます。
トゥラシー・ヴァヴァーハについてはさまざまな説がありますが、一説に以下のように伝えられています。
悪神ジャランダーラは、ヴィシュヌ神を心から崇拝する女神ヴリンダーと結婚をしました。
ヴリンダーが純潔である限り不滅であるという力を得た悪神ジャランダーラは尊大となり、この世を恐怖に陥れます。
ヴィシュヌ神はこの世を救うため、悪神ジャランダーラになりすまし、ヴリンダーを誘惑します。
ヴリンダーが純潔を失ったため、ジャランダーラは戦いによって命を落とし、ヴリンダーはひどく悲しみました。
ヴリンダーはヴィシュヌ神を咎め、ヴィシュヌ神の姿をシャーラグラーマ(アンモナイトの化石とも言われる神聖な黒石)と変え、自ら命を断ちます。
しかし、ヴィシュヌ神はヴリンダーの魂を純潔の象徴である聖木トゥラシーとし、各家庭で崇拝される姿を彼女に与えます。
そしてヴィシュヌ神はヴリンダーと結婚をする約束をしました。
トゥラシー・ヴィヴァーハは、ヴィシュヌ神とトゥラシーのこの神聖な関係を称えるものであり、ヴィシュヌ神そのものであるとされるシャーラグラーマと、トゥラシーへの礼拝が広く執り行われます。
トゥラシーはラクシュミー女神の化身としても崇拝され、時にヴィシュヌ神、もしくはクリシュナ神の妻としても描かれる存在です。
聖木としてのトゥラシーはすっきりとして非常に芳しい香りを放ち、浄化の作用があるとして、インドの家庭の庭先には必ず植えられています。
純潔を象徴するトゥラシーは、様々な儀式においても、その葉を捧げることが欠かせません。
ヴィシュヌ派の人々にとって、トゥラシーの数珠もまた非常に重要な意味を持つものです。
また、ヴィシュヌ神が眠りにつくチャトゥル・マースの4ヶ月間においては、結婚の儀式は勧められず、インドではこの間、結婚式が執り行われることはありません。
しかしこのトゥラシー・ヴィヴァーハを境に結婚シーズンが始まり、各地で盛大な結婚の祝祭が続く時となります。
日々の一瞬一瞬に深い意味が存在するインドの暦、その内にある神々の象徴にそって生きる日々は、全体世界との深い繋がりと共に、大きな平安を授けてくれるものです。
皆さまの一日一日もまた、幸せに満ちた大切なものとなりますよう心よりお祈り申し上げております。
(文章:ひるま)
参照:Tulsi Vivah
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