真我として一切生類の胸に住むクリシュナ神は、数千の太陽が同時に昇ったかのように、無辺際に光り輝くと伝えられます。
そんなクリシュナ神には、悪魔のバカースラとの間に、ある神話が伝わります。
聖典のバーガヴァタ・プラーナに見られる神話です。
バカースラは、クリシュナ神を倒そうと試みた悪王、カンサに仕えるサギの悪魔です。
水辺に住むサギは、白い身体を持つことから、ハクチョウと同様に見られることがある鳥の一種です。
しかし、霊性を育む世界において、この2羽の特徴は大きく異なります。
ハクチョウは、混ざり合った水と牛乳から牛乳だけを飲むことができるとされ、識別力の高さの象徴として崇められてきました。
それは、善と悪を見分けるだけでなく、本質を見ることができる力とされています。
そんなハクチョウと似た姿を持つサギは、片足で立ち、まるで瞑想をしているかのように佇むことがあります。
しかしこの時、サギは瞑想をしているかのように見せかけ、魚を得ることに思いを巡らしているのだといわれます。
そして、魚を目にした瞬間、サギはそれを勢いよく飲み込みます。
そんなサギの姿をしたバカースラとクリシュナ神の神話は、幼いクリシュナ神と牛飼いの子どもたちが水辺で遊んでいた時に始まります。
悪王のカンサに遣わされた悪魔は、そこへ巨大なサギのバカースラとなって姿を現しました。
子どもたちが好奇心からこの巨大なサギの周りに集まると、バカースラはクリシュナ神を目にした瞬間、クリシュナ神を一気に飲み込みます。
しかし、クリシュナ神が自分自身の身体を大きくしたため、バカースラは飲み込むことができません。
その時、バカースラは喉に焼けるような熱を感じ、クリシュナ神を口から吐き出しました。
そして、クリシュナ神はバカースラの下顎を足で押さえ、上顎を手で押し上げると、力強く引き裂きます。
そうして、バカースラは倒されたと伝えられます。
瞑想をするふりをして欲するものを狙うバカースラには、欺瞞や偽善、煩悩や渇望といった象徴があります。
しかし、そこにクリシュナ神が入る時、昇る太陽が闇を切り開くように、それらの悪質は倒されます。
バカースラが焼けるように感じた熱は、無辺際に光り輝くクリシュナ神の力であったといわれます。
それは、無知という闇を倒す、本質の光でした。
バカースラに象徴される悪質は、私たち自身、日々を生きる中で経験するものに他ありません。
そんな私たちは、胸に住むクリシュナ神を絶えず想い、常にその存在に気づいている必要があります。
その時、悪質を生み出す無知の暗闇は倒され、内なる世界は真の喜びで光り輝くに違いありません。
(文章:ひるま)
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