豊かな自然が溢れるインドでは、神々に捧げられる祈りに彩りを添えるように、美しい花の数々が捧げられます。真心が込められたものは、神々はどのようなものでも喜んで受け取るといわれますが、神々のお気に入りとされる花もあります。そのいくつかをご紹介いたします。
チョウセンアサガオ(ダットゥーラ)
ヒンドゥー教の聖典であるヴァーマナ・プラーナによると、乳海攪拌によって生まれた猛毒をシヴァ神が飲んだとき、ダットゥーラがシヴァ神の胸から現れたと伝えられます。それ以来、ダットゥーラはシヴァ神を象徴する花になりました。自尊心、競争心、嫉妬、増悪といった毒を取り除くために、シヴァ神に捧げられます。
ハイビスカス
真っ赤な色を持つハイビスカスの花は、カーリー女神に捧げられます。花の形がカーリー女神の舌のようで、その赤い色がカーリー女神の激しさを象徴しているとされます。カーリー信仰の篤いベンガル州では、108個のハイビスカスの花を用いて花飾りを作り、カーリー女神に捧げられることもあます。
ヨルソケイ(パーリジャータ)
パーリジャータの花は、乳海撹拌を通じて生まれた14の宝のひとつに数えられます。決して枯れない木ともいわれ、ヴィシュヌ神の住居がある天国にその根があるため、ヴィシュヌ神や妃であるラクシュミー女神のお気に入りの花とされます。一説に、インドラ神がこの木を見つけて天国に運び、その美しい花と香りで神々を喜ばせたと伝えられます。
ハス
幸運や繁栄の女神であるラクシュミー女神はハスの花に座すことから、ハスの花はラクシュミー女神の象徴とされます。ラクシュミー女神の礼拝の際にハスの花を捧げると、富や幸運がもたらされると伝えられます。ハスの実の数珠を所持することでも、ラクシュミー女神を喜ばせることができると信じられます。
マリーゴールド
マリーゴールドは、その優れた害虫の防除効果から、魔除けの意味で家々の周りに植えられることがあります。マリーゴールドの黄色や橙色の色は、太陽の象徴として神聖視されるものであり、浄化の炎を意味するものでもあります。このマリーゴールドは、ガネーシャ神のお気に入りの花とされます。ガネーシャ神の礼拝には赤い色の花が勧められますが、赤みの強いマリーゴールドの花は、ガネーシャ神を大いに喜ばせると信じられています。
ハナモツヤクノキ(パラーシュ)
白いサリーを身につけ白いハスの花に座す知識の女神であるサラスワティー女神は、パラーシュの花がお気に入りとされます。サラスワティー女神はあらゆる白い色の花を好むとされますが、パラーシュの花なしでサラスワティー女神の礼拝は完成しないといわれるほど、大切な花であると考えられています。
カミメボウキ(トゥラシー)
多くの薬効が伝えられるトゥラシーは、ヴィシュヌ神の妃であるラクシュミー女神の化身であると伝えられます。古くから崇められてきたもっとも神聖な植物のひとつで、クリシュナ神をはじめヴィシュヌ派の礼拝に欠かせません。すっきりとした芳しい香りを放ち浄化の作用があることから、純潔を象徴し、さまざまな儀式においてその葉が捧げられます。
クラウンフラワー
5つの花弁と王冠のような輪があることからクラウンフラワー(王冠の花)と呼ばれるこの花は、シヴァ神のお気に入りの花のひとつとされます。とても美しい花を咲かせるクラウンフラワーには毒性があり、破壊神であるシヴァ神の礼拝に勧められます。
キョウチクトウ
キョウチクトウは、カーリー女神、ガウリー女神など、ドゥルガー女神の化身に捧げられます。タントラにおいて特に重要視される花のひとつで、タントラの道を歩む者は、キョウチクトウの花の近くでマントラの詠唱を実践する必要があるともいわれます。
ジャスミン
ジャスミンの花は豊かな香りに加えて薬効があることで知られ、宗教的な意義もあります。このジャスミンは、ハヌマーン神のお気に入りの花と伝えられます。クムクムと一緒にジャスミン・オイルを捧げてハヌマーン神を礼拝することで、悪を追い払うことができると信じられます。
※広大なインドでは、地域によって気候が大きく異なり、神々の礼拝に勧められる花も地域によって異なります。その地域で見られる旬の花を可能な範囲で捧げることが良いでしょう。
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