インドには、シャクティ・ピータと呼ばれる女神の聖地が各地に点在しています。
シャクティ・ピータは、シヴァ神の最初の妃であるサティーの身体の一部一部がある場所として崇められる聖地です。
その数は異なって伝えられることがありますが、広く51の聖地があることが伝えられます。
実父に夫であるシヴァ神を侮辱されたサティーは、自らの身体を炎に包み、父親の血を受け継ぐ肉体を去りました。
シヴァ神は悲しみのあまり、サティーの身体を抱え破壊の踊りを踊ります。
ヴィシュヌ神はその踊りを止めようと、武器であるスダルシャナ・チャクラでサティーの身体をバラバラにしたと伝えられます。
シャクティ・ピータは、そうして散り散りになったサティーの身体の一部一部が落ちた場所として知られます。
そんなシャクティ・ピータの中に、アローピー女神が祀られる聖地があります。
ここの寺院に、女神の像はありません。
そこには、女神が座るはずの空の神輿だけが祀られています。
このアローピー女神が祀られる聖地は、サティーの身体の一部一部が落ちる中で、最後に指が落ちた場所と信じられます。
ここを最後に、サティーの身体がこの地を去ったために、消滅の象徴として崇められ、ここに女神の姿は祀られていないのだといわれます。
その空の神輿には、姿や形を超えて、シヴァ神と一体になる究極の至福を見るようです。
シヴァ神への愛によって、自らの身体を去ることも厭わなかったサティーは、万物を構成する5大元素の象徴を持つ5本の指を最後に、この地から姿を消しました。
私たちが日々を生きる力は、シヴァ神に結ばれようとする女神の願いのあらわれです。
サティーの指は、シヴァ神との愛を繋ぐ結び目であったかもしれません。
その愛の証を最後に残したサティーは、こうして生きる日々が、シヴァ神と一体になる愛を育むための大切な瞬間であることを教えてくれているようです。
季節の変わり目を迎える時、インドでは女神を讃えるナヴァラートリが祝福されます。
この時に女神の力に繋がりながら、肉体を持って生まれた意味を見つめ、その成就に向けた力を内なる世界に呼び覚ましたいと感じます。
(文章:ひるま)
参照:Prayaga Madhaveswari Temple | Shaktipeetha Temple in Prayag
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